Wmの憂鬱、StemCells社の挫折、再生医療を夢見る時代の終焉【日経バイオテクONLINE Vol.2461】

(2016.06.14 08:00)1pt
宮田満

 再生医療の本格的な市場開花までの道のりは、当然ながら平坦ではありません。それは今や我が世の春を謳歌する抗体医薬でも大きな挫折があり、商品化の途上の軌道に乗った核酸医薬でも辛酸をなめている現状を見れば明らかです。革新的であればあるほど、それが医療システムの中に溶け込むまでには時間と経験、そして投資が必要です。2015年の薬事法改正と再生医療新法の施行を受けて、我が国に巻き起こっている再生医療ブームに関しても、冷静で粘り強い商品化の努力が必要であることは言うまでもありません。最近の記者発表やそれを受けたベンチャーの一過性の株価上昇に惑わされる必要もありません。まして先週、湘南メディカルクリニックが、まだ臨床研究でも結論が出ていない活性化リンパ球療法と抗PD1抗体などの併用療法を供給すると発表するなど、再生医療新法の趣旨である、再生医療の安全性確保を脅かすような蛮行までが始まっており、我が国の再生医療は玉石混交のカオスに陥っております。だが、35年以上バイオ産業を取材している経験から言えば、時の試練を超えて本物の技術革新はカオスから必ず脱し、世界に幸福をもたらすものです。そのためには、パイオニアの挫折から学ぶのが効率的だと思います。2016年5月31日、成人性幹細胞のパイオニアであった米StemCells社が脊椎損傷の再生医療のフェーズIIを中断し、事業売却に踏み切りました。株価は暴落しています。この失敗の事例は、iPS細胞を避けて、商品化が早いと成人性幹細胞へと殺到している我が国の製薬企業やベンチャー企業にとり、とても他山の石では済まされ得ない事例なのです。真面目にその原因を追求しなくてはなりません。

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