【機能性食品 Vol.352】

血圧高め対策の硝酸塩は口腔内常在の硝酸還元細菌が関与、ILSI Japanの東大寄付講座のシンポジウム

(2018.09.21 14:00)
河田孝雄

 まずは、定例の保健機能食品のアップデイト情報です。

 特定保健用食品(トクホ)は、今週木曜日(2018年9月20日)に2品目の表示を消費者庁が許可して、トクホ総数は1054品目(許可1053品目+承認1品目)になりました。東洋新薬とサントリー食品インターナショナルが1品目ずつ。関与成分は「難消化性デキストリン」の「再許可等特保」です。新規性は無いですね。

 機能性表示食品はこの1週間では、今週火曜日(9月18日)に4件(届出番号:D87からD90)、翌水曜日(9月19日)に7件(D91からD97)を消費者庁が公表しました。

 今回は機能性表示食品で、新たな機能性関与成分が登場しました。血圧高め対策の「硝酸塩」です。

 2018年7月20日付で、レッドファーム(山梨県北杜市、松田幹彦代表)が届け出た「極 赤汁」(届出番号:D88)の機能性関与成分です。「本品には、硝酸塩(硝酸イオンとして※)が含まれる。硝酸塩は、水に溶けると硝酸イオンとなり、硝酸イオンには、血圧(拡張期血圧)を下げる機能があることが報告されている。※イオンクロマトグラフ法による分析」という旨の機能性表示を届け出しました。

 ドイツなどの野菜などでは硝酸濃度が高くなりがちで、それを低減させるための対策が取られていると記憶しております。

 硝酸塩が高めの血圧を下げる作用機序について以下、届け出資料の記載を紹介します。

 レッドファームは硝酸塩の作用機序については、03年から2016年までの文献11件のリストを掲載し、次のように説明しています。

 食物や水に含まれる硝酸イオンを経口摂取すると、口腔内の舌の裏側(特に舌の根元)に常在する硝酸還元細菌(Veillonea、StapylococcusおよびStreptococus等)により、経口摂取した硝酸イオンの約25%が唾液中に移行し約10倍に濃縮される。

 その後、約20%は亜硝酸塩に還元された後、胃内に運ばれ、胃の酸性条件により亜硝酸に変換され、一酸化窒素(NO)を含む窒素酸化物を産生すると考えられる。

 一方、経口摂取された硝酸イオンのうち約75%は速やかに体液中に移行し、18時間以内に腎臓を経て、硝酸塩、尿素又はアンモニアの形態で尿中に排出される。

 硝酸イオンの血圧低下作用に関する作用機序としては、NO産生による血管拡張作用に関する機序が考えられる。内皮由来のNOは血管拡張作用があり、全身性血圧を調整し、アテローム産生を遅らせ、血小板の凝集を阻害すること等が報告されており、その結果として、血圧低下作用などの生物活性を有すると考えられる。

##作用機序の説明はここまでです。

 原材料はビーツなどです。同社は、1日当たり100g(硝酸イオンとして250mg)の摂取を目安とした加工食品を既に販売していて、販売実績は年36万食以上とのことです。届け出た安全性評価の書類に記載しています。

 さて、今回のメールでは、9月18日に東京大学弥生講堂(東京・文京)にて、ILSI Japan寄付講座「機能性食品ゲノミクス」主催シンポジウム「機能性食品科学の基盤から実用化に至る統合的成果と新たな息吹き」が開催されたことを紹介します。

 寄付参加企業は19社(2017年12月時点)。アサヒグループホールディングス、味の素、天野エンザイム、伊藤園、花王、カゴメ、カネカ、キッコーマン、サッポロホールディングス、サントリーグローバルイノベーションセンター、高砂香料工業、日清製粉グループ本社、ニッピ、日本水産、日本製粉、不二製油グループ本社、富士フイルム、Mizkan Holdings、森永乳業です。

 東京大学が公表している寄付講座一覧によると、この寄付講座は第3期で、期間は2013年12月から2018年11月まで、寄付金額は1億9900万円です。

 第1期が03年12月から08年11月までで2億8800万円、第2期が08年12月から2013年11月までで1億9770万円でした。東大の寄付講座・寄付研究部門が合計90ある中で、ILSI Japanの寄付講座は歴史が3番目に長いです。

 第3期の終了が迫っていますので、次期第4期をどうするのか、議論が進んでいるのでは、と思います。

 プログラムによるとシンポジウムでは最初に、寄付講座の成果全体について、東京大学名誉教授・特任教授の阿部啓子さんが講演をなさいました。

 第3期の展望では食の研究の国際的な新たな息吹きとして次の3点を挙げています。

(1)ゲノミクスからエピジェネティクスへの関心
(2)病者ではなく健常者を対象とした機能性食品研究
(3)動物データからヒト未病マーカーへの転換

 9月18日のシンポジウムは別件のためほとんど講演をうかがえませんでしたが、翌日の9月19日には、バイオインダストリー協会(JBA)の平成30年度機能性食品研究会講演会に参加しました。この研究会の会長は、東北大学教授・名誉教授の宮澤陽夫さんがおつとめです。

 講演会のテーマは「メタボローム」。神奈川工科大学応用バイオ科学科教授の飯島陽子さんと、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授の加藤久典さんが講演なさいました。

 医薬品では有効成分は化合物1つだが、食品には1万もの成分が含まれる。この解析をどうやって進めるかが、2021年に東京国際フォーラムで開催される第22回国際栄養学会議(ICN)でのトピックスになる、と宮澤さんは話しました。

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