【日経バイオテクONLINE Vol.2958】

中村教授が見据える、癌プレシジョン医療の可能性

(2018.07.04 08:00)
小崎丈太郎

 癌の治療成績は劇的に向上し、以前いわれた「死の病」ではなくなりました。しかし、癌と診断された人の半分は癌が原因で命を落とすという現実があります。幸いにして手術(治癒的切除)できる段階で見つかった癌患者でも、再発の問題がついて回ります。画像検査を頻繁に受けることは、日常生活を送る上で非常な困難がつきまといます。【訂正】発足式典の開催日が誤っていたので訂正しました。本文は訂正済みです。

 米Chicago大学の中村祐輔教授は、先日東京ビッグサイトで開催されたBIOtech2018の講演の中で、リキッドバイオプシーが5年以内に日常診療に導入されると展望しています。リキッドバイオプシーの良いところは、採血で済むために侵襲性が低く、簡便に検査できることです。しかも、最近の研究では画像で視認される6から9カ月も前に再発を検出できたという報告もあります。「定期的な画像検査を受けてきたが、発見時に進行していた」という悲劇的な事例を減らすことができます。早期の再発ならば、効果的な対応も可能です。

 中村教授は、攻めの免疫療法の必要性も力説しました。免疫チェックポイント阻害薬はあくまで免疫のストッパーを外す治療法です。奏効率が2から3割しかない背景には、患者の免疫力が弱体化していることが挙げられます。ストッパーを外しつつ、免疫そのものを増強する必要があります。ネオアンチゲン、オンコアンチゲンを標的にした治療の重要性を指摘しました。

 同教授は、最新の癌免疫治療を日本で大胆に導入するために、「がんプレシジョン医療プロジェクト」を発足させます。2018年7月13日に、ホテルニューオータニ(東京都・千代田区)で発足式典があります。
プロジェクトの目的は、「プレシジョン医療ネットワーク」の構築です。リキッドバイオプシー、全エキソン解析、分子標的治療、ネオアンチゲン、オンコアンチゲンワクチンに加え、癌特異的TCRのクローニングをもとにしたTCR導入T細胞療法など、「ゲノム情報などを利用した医療を発展させるために必要な全ての分野・領域を包括的に組織化する」ことにあります。

 実現するためには人工知能の活用が欠かせません。
 癌の制圧に向け、プレーヤーは出そろっています。あとはそれを効率的に、経済的に組み合わせることが課題です。それが各要素技術の革新にフィードバックされ、より洗練されたものへと進歩していくはずです。

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