【機能性食品 Vol.340】

内閣府SIPの第2期「スマートバイオ」でマイクロバイオームやカイコも

第1期「次世代農林水産業」に続いて管理法人は農研機構
(2018.06.22 09:00)
河田孝雄
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 まずは、定例の保健機能食品のアップデイト情報です。

 機能性表示食品については、この1週間では、2018年6月15日(金)に1件(届出番号:D7)、6月19日(火)に2件 (届出番号:D8、D9)の合計3件について、消費者庁が機能性表示食品の届出情報を公表しました。タカラバイオや栗山米菓、東洋新薬の撤回があったので、有効な機能性表示食品の届け出は1330件弱程度になったかと思います。新しい機能性関与成分の届け出は、今回は特には無いようです。2018年度のDシリーズから届け出対象に加わった、難消化性オリゴ糖などの登場を楽しみにしております。

 今週の前半は、広島国際会議場で開かれた日本ゲノム編集学会の第3回大会を取材しました。技術革新のすごさには驚くばかりです。月曜日(6月18日)の大阪の最大震度6弱の地震により開催が危ぶまれましたが、大会組織委員会の方々の努力や協賛企業の協力などにより、意義深い集会になりました。370人が参加したとのことです。

(2018.6.21)
阪大の村中氏と理研の梅基氏ら、ジャガイモ新技術連絡協議会を設立へ
DNAを組み込まずにゲノム編集する“アグロ変異法”で毒物低減
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/06/20/04390/?n_cid=nbpbto_mled_fd

(2018.6.20)
日本ゲノム編集学会第3回大会で広島に350人超
広大のLoADやTREE、阪大のCLICKなど新技術の発表相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/06/20/04386/?n_cid=nbpbto_mled_fd

 さて、今回のメールでは、先週木曜日(6月14日)に公表された内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期の「スマートバイオ産業・農業基盤技術」の研究開発計画(案)の話題をお届けします。

 6月15日から7月8日まで、意見募集を行っていますので、詳細は内閣府ウェブサイトにてご覧いただくとして、要点を紹介します。

 まず注目すべきは、実施体制ですね。管理法人である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)への交付金を活用して、農研機構が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と連携した研究管理を実施する、という計画案です。

 農研機構の生研センターは、SIPの第1期(2014年度から2018年度まで)の「次世代農林水産業創造技術-アグリイノベーション創出-」でも、研究管理を担当しています。

 バイオ関連のSIP課題にて、2期続けて研究管理の重責を担います。

 これは皆さんも予想通りかと思います。

 というのも、SIPを推進している内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSIP)の常勤議員を2018年2月まで務め、SIPも担当していた久間和生氏が、2018年4月から農研機構の理事長に就任したからです。

 農研機構の新たな理事には、民間企業出身の方々が着任しました。三菱電機出身の久間理事長をはじめ、三菱ケミカル出身の折戸文夫氏が理事(産学官連携担当)に、住友化学出身の松田敦郎氏が理事(国際連携、知財・国際標準化、広報担当)に就任しました。

 CSIPにおいて久間氏の後で、SIPを担当している議員は、物質・材料研究機構理事長の橋本和仁氏です。

 ただし、橋本氏は非常勤議員でもあり、SIPをプログラム統括する政府参与として、東芝出身の須藤亮氏が2018年5月1日に着任した。須藤氏はSIPの他に、PRISMやImPACTのプログラム統括も務めている。

 なお、CSIPでは、三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏や、住友化学社長の十倉雅和氏が、非常勤議員を務めています。

 つまりは、三菱ケミカルと住友化学は、CSIPの議員と農研機構の理事の両方に関係する、ということです。

 第2期SIPのスマートバイオのプログラムディレクター(PD)にはキリンの小林憲明氏が選ばれました。

 このスマートバイオでは、IoT、AI、ロボティクス、エノム編集技術等の技術革新が進展し、多様で膨大なビッグデータ等を活用して、バイオ産業の新たな市場形成と農林水産業・食品産業の生産性向上等を図るこおtが可能になりつつある、という状況認識の中で始まります。

 研究開発計画(案)では、制度面等での目標として、次の6点を挙げています。そのうち3点を紹介します。

○農林水産物・食品の健康維持・増進効果の評価システム、科学的エビデンスの保健機能食品制度への反映(生鮮食品の特性に応じた機能性の評価、表示できるヘルスクレームの拡大について検討)

○食品の機能性分野における表示・成分分析法等の規格化・国際標準化の方針の策定、腸内マイクロバイオーム等の計測方法の標準化

○ゲノム編集をはじめとする最先端のバイオテクノロジーに対する国民理解の促進

 「研究開発の内容」では、最初の(A)として、「健康寿命の延伸を測る『食』を通じた新たな健康システムの確立のための研究開発」を挙げています。

 健康状態・軽度体調変化の指標化と「軽度体調変化判定システム」の開発、農林水産物・食品の健康維持・増進効果に関する科学的エビデンスの獲得、腸内マイクロバイオームデータの整備等を行い、エビデンス・データ等を活用して、農林水産物・食品の健康維持・増進効果を解析する「農林水産物・食品健康情報統合データベース」を開発する、と記載されています。

 このうち、腸内マイクロバイオームについては、産業界からのニーズが高いメタゲノム・メタボローム情報を含む日本人健常人マイクロバイオームデータを収集・整備し、食と関連付けたサンプリング・データ解析プロトコルの開発や、機能性食品のプロトタイプを用いたデータの有用性の検証を実施する、とのことです。

 遺伝子組換えカイコは、「生物機能を活用した革新的バイオ素材・高機能品等の生産システムの開発・実用化」の課題例として、示されています。

 日本独自の技術であり、優れた蛋白質・バイオ素材製造系である遺伝子組換えカイコなどのバイオリアクターを用いて、動物医薬品、検査薬、ヒト医薬品に使用可能な蛋白質、化粧品、高機能素材などの製造技術を実用レベルで確立する、と記載されています。

 この案の多くは、6月15日に閣議決定された「統合イノベーション戦略」の記載に類似しています。

 この戦略で、特に取組みを強化すべき主要分野として、「AI技術」に次いで2番目に位置付けられた「バイオテクノロジー」では、次のような記載があります。なお、5番目に「農業」が挙げられています。原文にてご覧ください。

 バイオテクノロジーで成果が十分得られていない要因として、5番目にゲノム編集、6番目に遺伝子組換え作物・食品、が挙げられています。

(オ)ゲノム編集技術を代表するCRISPR/Cas9のCRISPRのDNA配列はかつて我が国が発見したものであるが、こうした革新的な基盤技術につながる成果を持っていても、技術の確立まで至ったものが少なかったこと。

(カ)遺伝子組換え作物・食品の安全性に関する知識について専ら普及に努めたが、それだけでは国民にその必要性、価値が認識されず、国内での作付け等の社会実装が進まなかった。

 今後の方向性及び具体的に講ずる主要施策の最初に、「『データ駆動型』の技術開発・社会実装及びそれらを加速化する環境整備」が挙げられ、その最初に、SIP(第2期)等を核にすることが記載されています。

 その「基盤技術の開発」では、「我が国にも有望なシーズがあるゲノム編集技術、長鎖DNA合成技術等の開発・高度化」、「農林水産業の革新」ではスマート育種、ゲノミックセレクション、「革新的新素材・製品の創出」ではスマートセル、「食による健康増進」では微生物叢(マイクロバイオーム)などが記載されています。

 また、「得られた成果の早期社会実装のための制度面の対応等の推進」の「制度面での対応等」には、最初に「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の取扱い及び同技術の利用により得られた農産物や水産物等の食品衛生法上の取扱いについて、2018年度中を目途に明確化、国際調和に向けた取り組みの推進」と記載しています。

 制度面での対応は急務ですね。

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