【日経バイオテクONLINE Vol.2884】

BSL4の研究施設に期待できること

(2018.03.16 11:00)
橋本宗明

 皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 現在、長崎大学では、エボラ出血熱ウイルスなどの病原体を扱えるバイオセーフティレベル(BSL)4の研究施設を開設するべく準備を進めています。2021年度の完成を目指し、2018年度中にも着工する予定で準備が進められている長崎大に取材に行く機会があり、BSL4施設の準備に関わる数人の研究者に話を聞くことができました。(表現の一部に誤解されかねないカ所があるとの指摘があり、一部追記しました)

 BSL4施設は、エボラ出血熱やラッサ熱、天然痘の原因ウイルスなど、危険度の高い病原体(一類感染症)を安全に取り扱うことができるよう、高度に安全管理された施設で、現在、世界で59カ所設置されています。日本では2015年に、国立感染症研究所村山庁舎が国内で初めて感染症法に基づく特定一種病原体等所持指定施設としての指定を受けていますが、BSL4施設の運用に当たっては、国内で感染者が確認された際に感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化することとされ、日常的な研究には利用されていません。ワクチンや治療薬の研究開発を行ったりするためにも、国内にBSL4の実験施設を整備する必要性が指摘されてきました。そこで長崎大は、大学敷地内にBSL4施設の建設を計画し、準備を進めてきました。

 実際、例えば抗ウイルス薬を開発する際に、基礎的な研究はBSL4施設でなくてもある程度は出来るかもしれませんが、ウイルスの増殖を抑えられるかを確認しようとするとBSL4施設でなければできません。現状では、こうした研究は海外の施設を借りて行っているとのことですが、使える期間が限られるなど、様々な制約の下で研究が行われているのが現状です。また、一類感染症が実際に発生した際の診断や治療は感染研の村山庁舎で行えるとはいえ、日常的に扱っていないウイルスを適切に扱えるのかという問題もありそうです。

 では、BSL4施設ができた暁には、どのような研究ができるようになるのでしょうか。ある研究者は、現状のBSL3の実験施設で、ウイルスに感染した動物からウイルス抗原に対する抗体を取得する研究を行っており、「BSL4施設ができれば、一類感染症に感染した動物から抗体を取得して得られた情報を基に、抗体治療薬開発に生かしたい」と話していました。また、現状でもアイソトープセンターにBSL3施設があり、感染動物をPETやSPECTで撮影して研究しているとのことでしたが、BSL4施設内にもPETやSPECTを設置すれば、感染動物から取得した抗体に放射線核種を付けて、ウイルスが感染動物の体内にどのように広がっていくのか、どの臓器で特に増えるのかなど、生きた動物を用いてリアルタイムに観察できるようになりそうです(追記:BSL4施設にPET、SPECTを導入する計画は実際には無いようですが)。いずれにせよ、BSL4施設の稼動を契機に感染症研究は長足の進歩を遂げることでしょう。

 長崎大の周辺には今もBSL4施設に反対する横断幕などが掲げられており、周辺住民の理解が完全には得られていない状況が見て取れました。大学では、住民説明会などを何度も開催しているようですが、こうした活動を通じて安全性への懸念を払拭しながら、BSL4施設の意義を粘り強く説明していく必要がありそうです。

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