【GreenInnovation Vol.351】

アグリバイオ最新情報【2018年2月】のハイライト

(2018.03.08 08:00)

アグリバイオ最新情報【2018年2月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、OECD-FAOの持効性のある農業供給チェーンを作成するための指針の実用化を目指したパイロットプロジェクトを開始した。これには、当然遺伝子組換え作物も含まれるので今後の進展が期待される。

 イタリアの研究者であるElisa Pellegrino、Stefano Bedini、Marco Nuti、Laura Ercoliの4氏は、1996年から2016年の21年間の収穫に関して、メタアナリシスの結果を、Scientific Reports誌に査読付き総説として発表した。解析では、新しい要因として穀物の品質、科レベルでの非標的生物(NTOS)、標的生物(TOS)と土壌バイオマスの分解を含め、遺伝子組換えトウモロコシの圃場でのより厳しい評価を含めている。研究者がレビューした6006の出版物のうち、メタアナリシスに適うものは76あった。メタアナリシスに適うものが76とは少ないようにも見えるが、この結果は極めて重要であり、遺伝子組換え作物の有用性を十二分に示すものである。

 米国の食糧安全法に強化改善に責任のある米農務省(USDA)と米食品医薬品局(FDA)が、バイオ安全性管理、新規農場安全性点検システムの施行について、両者で協働・協力することで合意した。我が国も形式ではなく、実際上の関係省庁の協働・協力を遺伝子組換え作物についても望むところである。

 カナダOkanagan Specialty Fruits (OSF)社が開発した、褐変しない「ARCTIC」リンゴとしては第3世代に当たる「ARCTIC FUJI」リンゴが、カナダの食品検査機関(CFIA)とカナダ保健省(HC)の認可を受けた。この名前から分かるように我が国の品種が素になっている。こんなところで追い越されてよいものだろうか?

 日本では魚沼産のコシヒカリが特Aからダウンして話題になっているが、地球温暖化で気温が上がると当然、作物の出来にも影響が出る。この点で温度変化に耐性を持つ作物が育種されつつあることは大きな期待をかけてもよいと思われる。英国の研究機関であるJohn Innes Center(JIC)が、温度上昇と「pod shatter」(早熟種子散布)との遺伝的関連性を確立したとのことで、まさに夢が現実になりそうな期待がもてる。

世界
FAOとOECDが農業分野への投資を促進

アフリカ
ナイジェリアはGM種子の商業化を目指す

南北アメリカ
メタアナリシスで遺伝子組換えトウモロコシの有用性が明らかに
USDAとFDAは食品安全を確保するために共同作業を実施
米Minnesota大の大学院生がGM作物開発のプロセスの規制緩和を要望
「ARCTIC FUJI」 リンゴがカナダでの商業栽培承認を取得

ヨーロッパ
ドイツの消費者は遺伝子組換え作物の健康リスクより環境リスクを懸念
温度変化に耐性の作物の育種が「達成可能な夢」へ
セプトリアコムギ班病に耐性がある遺伝子を発見
疫病耐性トマトを遺伝子工学で開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/030700020/

 米大統領Donald Trump氏が米国農場局連盟(The American Farm Bureau Federation 、AFBF)大会で「我々は、最先端のバイオテクノロジーを阻む規制を合理化し、農業者の革新的バイテク技術、革新的改革、繁栄、成長を自由に行えるようにする。」と述べた。この演説は、年次大会に集まった7,400人の農業者、牧畜業者に向けて行われた。彼の演説は、「過度の規制のコストを訴え、規制、労働、貿易などの農業者にとって特に重要な問題にふれた。」ことにある。我が国の安倍総理にも同様のことを望みたいものである。特に感情論ばかりが拡がっており、農業の近代化を阻む遺伝子組換え作物の論議を科学的にしっかりと見据え、憲法違反に近い条例は、やめるように進めてもらいたいものである。
 米食品医薬品局(FDA)は、「Huazhong農業大学が行った安全性および栄養価の評価に基づいて、Huahhong No.1由来のヒトの食糧および動物用飼料は、その成分組成、安全性、およびその他の関連要素は、市場にある米穀由来のものと全く異なることはなく、遺伝子組換えHuahhong No.1は、FDAによる市場に出す前の評価や承認を必要とするものではない。」としていることも素晴らしいことだ。Huahui-1 は、害虫抵抗性タンパク質Cry1Ab/Cry1A を発現するように遺伝子組換えしたもので鱗翅目害虫抵抗性がある。
アフリカ諸国がようやく遺伝子組換え作物の重要性を認識して商業栽培に向かうのは、歓迎すべきことだ。1)国際熱帯農業研究所(IITA)は、ETHチューリッヒ植物バイオテクノロジーラボと協力して、遺伝子組換えキャッサバの隔離圃場試験を開始した。2)ナイジェリアは、ほぼ15年間の研究の結果Btササゲを栽培する最初の国になる準備を整えた。3ケニヤの農業畜産研究機関(KALRO)の科学者たちは、Btトウモロコシの性能を評価し、害虫の侵入と干ばつに対する持続可能な解決策を提供するために、国内で圃場試験を行っている。ケニヤの農業者は、遺伝子組換えBtトウモロコシの商業的リリースを早急に行ってこの悲惨な状況を終わらせるように政府に要請している。 「害虫や干ばつに対抗できるのであれば、遺伝子組換えトウモロコシの導入をためらうことはない。」との意見もあるなかで、早急な商業栽培があってもしかるべきだろう。
 オーストラリア・ニュージーランド食品標準局(FSANZ)は、プロビタミンAイネ系統由来の食品の承認報告書を公表したが、これは、栽培を許可するものではないのは残念である。ゴールデンライスの栽培を広めるためにももう一歩の進展を期待したい。
 EUは、食物/飼料用に6種の遺伝子組換え作物を認可した。 ダイズ305423 x 40-3-2、
DAS-44406-6、ダイズFG72 x A5547-127、ダイズDAS-68416-4、ナタネMON88302×Ms8×Rf3、およびトウモロコシ1507(更新)である。相変わらず許可決定は栽培を対象としていない。いつまでこれを続けるのか全く私には、分からない。政治的問題だろうが、一体いつまでこんなことをやるのだろうか? 一方では、ゲノム編集作物は遺伝子組換え食品法から除外されるべきだと言っている。これが分かるのなら遺伝子組換えも十分の理解を示してほしいものだ。
 研究の段階にあるものだが、キャッサバのβ-カロチンを増やすことでプロビタミンA含量増加と商品寿命を延ばすことができるとのことである。これを主食するアフリカなどでは大きな福音である。また「CRISPR/Cas9技術を使用するイネの旱魃および塩耐性の改善」や「キウイフルーツに標的特異性突然変異を引き起こすようにCRISPR/Cas9を最適化できた。」ことは、今後のゲノム編集技術の利用を大幅に広げ、期待が持てるものといえる。技術の進歩に見合う「規制緩和否一般市民特に我が国の科学技術への理解を進めることが、我が国にとって重要なことである。」ことを関係者、特に関係する「科学者からの発信」と「政策の確立」を望むのは筆者だけではあるまい。

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