【GreenInnovation Vol.346】

シルクスポンジ登場のTVドラマ最終回が視聴率20%超

(2017.12.28 08:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しております。早いもので2017年も今日を入れて残り4日。良き新年をお迎えください。

 今回はグリーンバイオ分野の2017年の話題を振り返ってみます。

 まずは、世界で初めて、今年秋から日本で始まった取組みを紹介します。一般の農家で、遺伝子組換えカイコの飼育が9月下旬から始まり、11月1日に繭が収穫されました。

 この農家における組換えカイコの飼育と繭の収穫の様子は、12月18日から12月22日まで農林水産省(東京・千代田)の消費者の部屋で開催された「特別展示、遺伝子組換えカイコによる蚕業革命」にて拝見しました。カイコをテーマとした消費者の部屋での展示は、ここ3年連続で年末の時期に実施されているとのことでした。

 飼育したのは、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した蛍光蛋白質を作り出すカイコ。繭に光を当てると蛍光を発するので、見た目でも分かりやすいでは、と思います。来年に創業330年を迎える西陣織の老舗である細尾(京都市上京区)が、群馬県の農家で飼育された組換えカイコの蛍光蛋白質シルクを買い取りました。世界に誇れる、付加価値の高い日本発のシルク素材として、注目されそうですね。

 消費者の部屋では、これまで以上に細い高品質の組換えシルクを用いて作製したワンピースも出品されていました。ワンピースは、半分が細いシルク、半分が通常のシルクで作製されていまして、触れてみると違いが良く分かりました。農研機構が組換えカイコを飼育した得た繭の糸を、滋賀県長浜市の浜縮緬(はまちりめん)工業協同組合が作製したとのことです。

 シルクは、TVの人気番組でも話題となりました。直近の日曜日(12月24日)夜に最終回が放映され、視聴率が20%超えだったTBS系のドラマ「陸王」は、足袋作り百年の老舗が会社の存続を賭けてランニングシューズの開発に挑むドラマでした。繭から作られた架空の特殊素材「シルクレイ」が、シューズのソール(クッション材)に使われていました。農研機構は世界に先駆けてシルクスポンジを開発しているとのこと、このTVドラマの作製に農研機構が協力しました。

 2017年のグリーントピックの2つめは、ゲノム編集技術などの新しいスマート育種技術により育成されたイネやジャガイモの野外試験が今年初めて実施されたことを、挙げます。

 2018年度にも、スマート育種技術で新たに育成されたイネなどの野外試験が予定されています。

 日本では16年余り前の01年4月に義務化された遺伝子組換え食品の表示制度の見直しが、消費者庁で進んでいまして、2018年3月中に内容が確定します。

 遺伝子組換えでゲノムに挿入された外来遺伝子を、どれだけきちんと検出できるか、新たに表示義務化の対象にするとされるコーンフレークなどでは、この検出技術がさらに進歩してからの導入になる方向で審議が進んでいます。

 上記のスマート育種による系統・品種の中には、外来遺伝子を含まないものもあります。

 そもそも自然界で起こり得るので、人為的な遺伝子組換えの範囲には入らないと、1980年代の遺伝子組換え技術の黎明期から分類されている「セルフクローニング」「ナチュラルオカレンス」の中には、人為的に入れたかどうかの判別は難しいかもしれませんが、挿入などした遺伝子を検出することはできる場合があります。

 また、アミノ酸や核酸など、遺伝子組換え微生物を用いて生産されたものは、「高度精製品」として、遺伝子組換えではないものとして流通してよいことになっています。食品添加物では05年から実施され、2017年には食品でも適用されました。人間に続いて、家畜の餌でも、2016年初めから、飼料添加物にこのルールが適用されています。高度精製品の場合は、生産に用いた微生物等のゲノムのDNAは実質的に含まないので、検出は難しいですね。

 2017年12月22日の食品安全委員会の遺伝子組換え食品等専門調査会(座長:中島春紫・明治大学教授)で、代謝改変した遺伝子組換え系統作物を掛け合わせした品種について、安全性評価に必要なデータの一部を省略できることが決まりました。フルスペックの安全性評価だと、一般に、1品種当たり100億円規模の費用がかかっていると、農林水産業分野の国際有力企業などは説明しています。

 ゲノム編集などのスマート育種技術や、次世代DNAシーケンサー(NGS)を用いた検出技術は飛躍的に発展していまして、表示をめぐる状況も激変しているように思います。Do It Yourselfのお手軽なバイオ技術も台頭・普及してきました。2018年の大きな課題となりそうです。

 エネルギーや資源も基本的に有限である中で、安全性評価や表示にどれだけのコスト(時間、費用、エネルギー、資源)をかけていくのが、人類にとって好ましいのか、国境を越えた議論が大切と思います。

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