【日経バイオテクONLINE Vol.2828】

業界が抗体の連続生産に注目するワケ

(2017.12.20 08:00)
高橋厚妃

 おはようございます。日経バイオテクの高橋厚妃です。以前、抗体医薬の受託製造についての特集記事を担当した際、国内の開発・製造受託機関(CDMO)各社が、抗体医薬の連続生産の技術に注目していること、またその技術で小規模の設備を稼働させることが世界で優位に立てる可能性がある旨をまとめました。

抗体医薬の受託製造ビジネス
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/100500037/

 取材後から気になっていたのが、抗体医薬を製造販売している国内の製薬企業の連続生産の取り組み具合です。今月5日に、中外製薬の浮間工場に新設された抗体原薬の製造設備のメディア向けの見学会に参加した機会に、連続生産の取り組みについて聞いてみました。すると、「製造設備を小さくできるため、設備投資を抑えられ、結果的にコストを抑えられると考えている。中外製薬でも研究段階ではあるが取り組んでいる」とのことでした。

 連続生産のうち連続培養(灌流培養)は、以前から知られている技術ですが、一般的な培養方法と比較して難しく、培養液中で不安定な一部の蛋白質医薬を製造する時だけに利用されるものだったそうです。抗体など蛋白質医薬を製造する際に一般的に利用される方法は、流加培養です。流加培養で抗体を製造する場合は、空の培養槽にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞と培養液を入れ、細胞を増殖させ、CHO細胞が十分増殖し、抗体を産生したところで、培養槽の中身を全て抜き、下流工程に移行させます。

 一方で灌流培養は、培養槽に培養液を連続的に加えるのと同時に、CHO細胞は培養槽内に残したまま、産生された抗体を連続的に培養槽の外に取り出す方法です。そのため連続培養であれば、蛋白質医薬をすぐに培養槽から取り出せるので、培養液中で不安定なものでも効率よく回収できるというわけです。今までは、一部の蛋白質医薬の製造に利用してきた潅流培養を、製造コスト削減の目的で、あらゆる蛋白質医薬の製造に利用しようというのが、従来の灌流培養の利用とは異なる新しいトレンドです。

 韓国のCDMO企業は、大規模な培養槽で抗体を製造することで製造コストを下げようとしています。韓国企業などと比較して、国内企業の培養規模は小規模だとの声も聞かれますが、今後連続生産を利用すれば、小規模の施設で大量の培養を行うことも論理的には可能です。今後も、連続生産の取り組みについて注目していきたいと思います。

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