【GreenInnovation Vol.342】

日本初の屋外栽培中、新植物育種技術(NPBT)の成果が育種学会で相次ぎ発表 ダイズのCRISPRシステム発表も日本では初めて

(2017.10.26 10:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しております。

 今回は、10月上旬に盛岡市で開かれた第132回日本育種学会において、日本で初めて2017年春から実施されている野外栽培が実施されている新しい植物育種技術(New Plant Breeding Technology;NPBT)による作物の途中経過などが発表されたことをお知らせします。外来遺伝子をゲノムに含むことなくゲノム内在の標的遺伝子にピンポイントで働き掛ける新しい育種技術です。

 育種学会で発表されたのは、弘前大学農学生命科学部の原田竹雄名誉教授と葛西厚史機関研究員らが開発した接ぎ木を介したエピゲノム編集ジャガイモと、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したCRISPRゲノム編集イネ、の2つです。2つ共に、茨城県つくば市にある農研機構の隔離圃場の中で現在、野外栽培が進行中です。

 弘前大は、「接ぎ木を利用したエピゲノム編集ジャガイモ、野外栽培試験の開始へ」と題した発表を行いました。接ぎ木で標的遺伝子をエピゲノム制御するジャガイモの秋作の野外試験を2017年9月25日に、茨城県つくば市の農研機構の圃場にて開始しました。

 最初の野外栽培(春作)は、2017年4月26日に開始して、7月20日に収穫しました。2系統のうち1系統は、芽出しの時期が早過ぎたことから地上部が早期に枯れ始めてしまい、根茎の収穫量は期待通りには得られなかった。もう1系統は、対照区と同程度の収穫量が得られたとのことです。

 農研機構は、「インド型イネにおけるCRISPR/Cas9を用いたOsCKX2(Gn1a)ノックアウト(KO)系統の籾数、枝梗数に対する効果」と題した発表を行いました。今回発表したのは、野外試験を開始する前に、隔離温室にてイネを栽培して特性を調査した結果の一部です。

 野外栽培中のCRISPRゲノム編集イネは、来週火曜日(10月31日)に収穫する予定です。

 詳しい内容は、次の記事にてご覧ください。

(2017.10.12)
新育種技術NPBTの野外試験元年の成果、育種学会で発表相次ぐ
弘前大ジャガイモは9月から秋作、農研機構CRISPRイネは10月末収穫
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/10/11/03333/

 育種学会では、ダイズのCRISPRゲノム編集プラットフォームを確立したという発表もありました。

(2017.10.02)
北大と農研機構、ダイズのCRISPRゲノム編集プラットフォーム確立
巨大化関連2遺伝子に変異導入、ヌルセグレガントも取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/30/03286/

 CRISPRゲノム編集ツール遺伝子の導入には、まずはアグロバクテリウムを用い、次いで遺伝子銃を用いた方法も行った。上の記事は学会前の記事ですが、学会発表を聴いたところ、ヌルセグレガントの取得に既に成功しているのは、アグロバクテリウム法によるものでした。また、ノックインなどには遺伝子銃の方が好ましいのでは、とのことでした。

 ダイズのCRISPRゲノム編集につきましては、まずは2015年に米Dupont社が電子銃による成果を発表しました。アグロバクテリウム法によるダイズCRISPRの論文は、2017年5月の中国グループの論文が最初のようです。

 メールの最後に、NPBTとも関係が深い産学連携シンポジウム「ゲノム編集技術の産業利用の道筋を探る」が、都内で11月24日(金)午後に開催されることをお知らせします。主催は、日本ゲノム編集学会と明治大学バイオリソース研究国際インスティテュートです。

 日本ゲノム編集学会のウェブサイトにて、プログラムをご覧ください。
http://jsgedit.jp/

 産業界の方を主な対象として、医療、農水産業への応用、特許の最新動向まで幅広いテーマの講演が予定されています。幅広い層からの意見も集約すべくパネルディスカッションも行われます。

 農作物の育種につきましては、農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所 稲研究領域 稲遺伝子技術研究分野の主任研究員である小松晃さんが「ゲノム編集技術の作物育種への応用と課題」と題する講演をなさいます。

 参加ご希望の方は11月10日までに以下のURLよりお申込みください、とのことです。
https://docs.google.com/forms/d/1zmxpRDXVeesjxR87Bax_2wkyNlrRSzpeRKkyVLrYJXE/edit

 シンポジウム後に、情報交換会(会費3000円)も予定されています。シンポジウムは150人先着の事前申し込み制です。早めの登録をおすすめします。

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