【日経バイオテクONLINE Vol.2790】

クライオ電子顕微鏡の技術革新のポイント

(2017.10.25 08:00)
橋本宗明

 皆様、おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。きっちりとご案内できていなかったのですが、10月初旬より、日経バイオテクONLINE法人版のデータベース部分の情報を拡充しました。「企業情報」というコーナーを設けて、バイオベンチャー企業に関する記事と企業情報とを合わせてお読みいただけるようにしました。BioJapan2017の会場でご紹介させていただいた方には重ねてのご案内となっているかもしれませんが、10月10日よりサービスを開始しています。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/info/sl/17/10/10/00058/
 日経バイオテクONLINE法人版限定のサービスとなっているので、ご契約いただいていない方は申し訳ありませんが、法人版は試読が可能なので、これを機会に試読してご覧いただければと思います。

 10月は例年いろいろとイベントが重なることもあってあっという間に過ぎてしまうとつくづく思っていますが、そう言えば10月初めのノーベル賞の発表の際には毎日Nobel Prize財団のサイトに釘付けになっていました。

 このサイトを見られた方は気付いたかもしれませんが、毎日発表される受賞対象の研究などにちなんだミニクイズが掲載されていて、今でも見ることができます。例えば、ノーベル生理学・医学賞のところを見ると、右側に「全ての生物が体内時計を持っていることを知っていますか?」という質問があり、Yesと答えた人が85%に上ることが分かります。物理学賞のところには、「百万年前にアルバート・アインシュタインによって重力波の存在が予測されていたことを知っていますか?」という質問があって、こちらのYesの回答者も80%を上回っています。新聞社などが読者アンケートを取ったらどういう回答率になるのか興味深いですが、相当科学分野の知識が豊富な人が回答しているものと思われます。

 では化学賞の受賞が決まったクライオ電子顕微鏡はどうでしょう。「クライオ電子顕微鏡が、生体分子の構造研究の能力に革命をもたらした技術であることを知っていたか?」の質問に対して、YesとNoはほぼ半々といったところで、重力波や体内時計に比べて一般的な知名度は低かったことを思い知らされました。日経バイオテクでは数年前からG蛋白質共役受容体(GPCR)などの創薬標的の構造解析に革新をもたらす技術として大いに注目し、2017年2月27日号では特集でも取り上げたりしてきましたが、なかなかこの革新性は伝わりにくいのかもしれません。ちなみに、文学賞のところには「あなたはカズオ・イシグロの作品を何か読んだことがあるか?」という質問があって、Yesは3割だったりするのですが……。

 クライオ電子顕微鏡の技術革新のポイントは色々あるようですが、私が大いに注目したのは蛋白質を1粒ずつバラバラにしてから多数の電子顕微鏡像を取得して、計算機の力で立体構造を再構築するという手法です。この話を聞いた時に思い出したのは、次世代シーケンサー(NGS)のことです。NGSはご存じのように、断片化したDNAの数多くの配列情報を基に計算機上でゲノム全体の配列を再構成します。今となっては常識かもしれませんが、先日ある研究者と話をしたときに、「いかにして長いゲノムを取ってくるかに腐心していた時代に、『ゲノムをバラバラにして配列を読む』と聞いた時には『こいつら正気か?と耳を疑った』」と語っていました。あるいは、計測技術に伝統的に強いと言われていた日本企業が、ライフサイエンス分野で欧米企業の後塵を拝してしまっているのは、計測技術と情報処理との融合みたいなところで、パラダイムに乗り遅れてしまったせいではないかとも思います。フロンティアや融合領域と呼ばれるところで生じる変化をいかに見逃さないかが、ポイントのように思います。

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