【日経バイオテクONLINE Vol.2776】

バイオベンチャーの振興をテーマに激論

(2017.10.04 08:00)

 おはようございます。日経バイオテクの橋本宗明です。ノーベル賞の発表が始まり、夕方になると連日Nobel Prize財団のサイトに釘付けになっています。特に2日月曜日は本庶佑氏や坂口志文氏ら候補者として日本人の名前がずらりと挙がる生理学・医学賞の発表があっただけに、当編集部はいつ誰が受賞しても駆けつけられるように各地にスタッフを配置して待機していました。残念ながら今年の生理学・医学賞は日本人の受賞とはなりませんでしたが、本日夕方発表の化学賞、明日夜発表の文学賞など、日本人の受賞が期待できるだけに、しばらくはノーベル賞の熱気にどっぷりと浸っていたい感じです。

 さて本日は、9月28日に開催した日経バイオテクプロフェッショナルセミナー「激論!次世代のバイオベンチャー振興」について、簡単に報告いたします。

 セミナーではまず、経産省商務情報政策局生物化学産業課の上村昌博課長、厚労省医政局経済課の三浦明課長に、それぞれ経産省、厚労省のバイオベンチャー振興施策について紹介いただいた後、テック&フィンストラテジーの小南欣一郎氏、Veritas In Silicoの中村慎吾氏、アステラス製薬の松本俊一郎氏を加えてパネルディスカッションを開催しました。

 上村課長、三浦課長はともに7月に着任されたばかりの方で、一方、小南氏は野村証券グループの野村リサーチアンドアドバイザリー、みずほ証券などを経てこの9月に上場、未上場ベンチャーなどに技術戦略と金融戦略のコンサルティングを行うテック&フィンストラテジーを設立された方です。中村氏は名古屋大学で博士号取得後、武田薬品工業で創薬研究に携わった後、欧米大手企業勤務、産業革新機構でベンチャー投資を経験して、2016年11月に核酸を標的とする低中分子創薬を目指すVeritas In Silicoを起業しました。アステラス製薬の松本氏は同社研究本部にオープンイノベーション統括部門として設けられたI&I研究所の所長に4月に着任されました。長く同社でオープンイノベーションに携わり、米国でアステラスのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の一員としてベンチャー投資を経験。現在もCVCのプレジデントを務めている人です。そんなちょっと新鮮なメンバーで、パネルディスカッションを試みました。

 まず、お題にしたのは日米のバイオベンチャーの経営環境の違いについて。ベンチャーを取り巻くエコシステム、いわゆるネットワークやコミュニティ、調達可能な資金の規模、人材の経験、スタートポイントなど、違いを挙げればきりが無いわけですが、ただ一方で、米国のいいところだけを見過ぎているといった指摘もありました。製薬は製薬でメガファーマを参考にしがちですが、到底同じことはできません。一方で、日本で中堅製薬と呼ばれているところと同じような規模の企業が米国ではベンチャーとしてイノベーションを担っているではないか、中堅製薬はもっとイノベーションを目指すべし、といった意見もありました。

 ベンチャーに対しては、日本では株式新規上場(IPO)ありきだが、米国ではIPOは2の次で、むしろM&AによるEXITの方が重視されている、ベンチャーの持つ技術シーズが製薬企業の求めるような形になっていない、投資家への説明能力が不足している、勉強不足であるなど、かなり厳しい声も出ていました。逆に、証券取引所の上場基準が現状に即していない点や、上場後のベンチャーの株価が安定せず、機関投資家が株式を購入しにくいことが株価の低迷を招いているといった、環境面の問題を指摘する声もありました。人材面では、ベンチャーに所属することがキャリアパスにつながる仕組みが必要だという声も出ていました。

 実はこの日のディスカッションは、結論を出そうという意図はそもそもなく、ある程度言いたい放題でいいので様々な声を挙げてもらうことを狙っていました。それでも多くの人に共通していたのは、やはり「成功例が無い」ことの問題だったと思います。成功例が無いからVCも資金を投入しにくいし、成功例が無いから業界全体が魅力に欠けて見え、成功者がエンジェルとなって資金循環を生み出すこともできていない。もちろんだからと言って、無理やり政治的に成功例を作り出すようなことをやっていいわけではないですが、誰もが納得するような美しいストーリーの成功例が求められているのだと痛感しました。その視点で振り返ると、この会社はうまくすると成功例になるのではないか、と思えるような会社を取材する機会は着実に増えています。その芽がしっかりと成功例につながるよう応援していきたいと思います。また、折を見てこのような機会を作っていきたいと思いますので、今回参加できなかった方も、興味をお持ちいただければと思います。

 ちなみに、このセミナーの開催場所は、東京・神谷町にある当社5階のセミナーホールでした。実は当社がこのビルに引っ越してきたのは今年のお盆過ぎで、事実上今回がセミナーホールのこけら落としだったようです。そのため、設備や運営などに何かと不備があったかもしれません。次回以降の改善につなげていければと思っていますので、参加者された方で何かお気付きのことがあればご指摘いただければ幸いです。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧