【機能性食品 Vol.305】

ダイズCRISPR/Cas9プラットフォームや福井県のコシヒカリ超え「いちほまれ」

日本育種学会と日本遺伝学会、「優性、劣性」から「顕性、潜性」へ
(2017.09.29 11:00)
河田孝雄
東京大学弥生キャンパス門
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 まずは、恒例の機能性表示食品のアップデイトです。この1週間では2017年9月22日(金)と9月27日(水)、9月28日(木)の3回、更新がありました。2017年度のCシリーズは7件増えまして、C1707での届け出受理が公表されました。今回増えた7件には、新しい機能性関与成分は無いかと思います。

 これで有効な届け出件数の総数は、1064件になったもようです。初年度(2015年度)のAシリーズ(A310まで)が277件、2年目(2016年度)のBシリーズ(B620まで)が611件、そして3年目(2017年度)のCシリーズ(現在のところC177まで)が176件です。差し引いた件数は、Aシリーズで撤回が30件と法人番号未登録による欠番が3件、Bシリーズで撤回が9件、Cシリーズで撤回が1件、として計算しました。

 今回のメールでは、日本育種学会と日本遺伝学会の話題をお送りします。日本育種学会は9月28日(木)、日本遺伝学会は9月26日(火)にそれぞれ記者会見を開きました。いずれも記者会見の会場は、東京大学弥生キャンパス内(東京・文京)でした。

 9月28日午後の日本育種学会の記者会見は、10月6日から8日に岩手大学(岩手県盛岡市)で開催する第132回講演会(日本育種学会2017年秋季大会)における発表課題を解説する内容でした。

 9月26日午後の日本遺伝学会の記者会見は、9月29日発行の書籍「遺伝単 遺伝学用語集 対訳付き」に関するものでした。

 日本遺伝学会は1915年に日本育種学会として発足し、1920年に現在の日本遺伝学会に名称を変更しました。生物学分野で最も歴史のある学会のようです。1949年設立の国立遺伝学研究所(現在は大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構の傘下)の母体にもなりました。

 一方、現在の日本育種学会の発足は1951年。1915年発足の日本遺伝学会(発足時は日本育種学会)との関係は深いです(親と子の関係に近いのでは、とも思います)が、別組織です。

 さて、日本育種学会の2017年秋季大会での発表課題については、250題ほどのうちから5題について、説明が行われました。250題のうち、プレスリリースを希望しないものを除いた7割ほどの演題の中から、30人ほどの学会関係者の投票により、次の5題が選ばれました。

(1)CRISPR/Cas9を用いたダイズにおけるゲノム編集プラットフォームの構築(発表者:北海道大学ほか)

(2)MutMapPlus法による米デンプン糊化性変異原因遺伝子の同定と多様な米飯物性を示すイネ育種素材の開発(農研機構ほか)

(3)コムギ縞萎縮病に強い小麦新品種「タマイズミ」の育成(農研機構 次世代作物開発研究センター)

(4)水稲新品種「いちほまれ」の育成(福井県農業試験場ポストコシヒカリ開発部)

(5)Brassica rapaの種内一側性不和合性を支配する花粉・柱頭認識因子の決定(東北大学ほか)

 (1)のダイズCRISPRは、北海道大をはじめオールジャパン的なチームが取り組んている成果です。2015年に米DuPont社が論文発表した内容との差異・新規性・進歩性を含め、追って記事にとりまとめてまいります。

 (4)の福井県「ポストコシヒカリ開発部」という組織名、目立ちますね。コシヒカリが福井県で生まれたことは皆さんもご存じと思います。福井県では、コシヒカリの後継となるブランド品種の開発に取り組み、20万種のイネの中から選抜を繰り返しました。2017年は雑種第12代に当たるとのことです。

 「いちほまれ」の食味は、コシヒカリに比べ、つぶ感が優れ、高温下で登熟しても品質の劣化が少ないなどの特徴を有します。地球温暖化対策の品種という意味合いも大きいようです。通常のお米が5kg2000円弱で販売されているのに比べ、高付加価値を目指しています。通常栽培で5kg3000円、特別栽培で5kg4000円ぐらいを見込んでいるようです。

 (2)も、米・イネの発表です。やはり日本の主食として、特別な存在といえますね。

 筑波で栽培されているCRISPRイネ(シンク機能改変イネ)は、10月31日(火)に収穫が行われる予定です。

(2017.05.15)
農研機構、筑波の隔離圃場で5月23日にCRISPRゲノム編集イネを田植え
5月13日の説明会に20人近く参加、エピゲノム編集ジャガイモは4月に開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/05/15/02692/

 一方、日本遺伝学会の記者会見は、新しい遺伝学用語の提案に関するものでした。

(2017.9.28)
遺伝学会が新提案、優性→顕性、突然変異→変異、変異→多様性
遺伝学用語集「遺伝単」をNTSが9月29日に発行
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/09/28/03278/

 「劣性」という語に対するマイナスイメージに起因する疑問について、書籍にて解説されていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

 「血液型のO型は、A型やB型に対して劣性だから、将来O型の人はだんだん少なくなるのでしょうか」「メンデルの使ったエンドウマメの系統で、花弁が白い形質は紫色に対して劣性だから、白い花の系統は背丈が低かったり、マメの生産量が少なかったりするのか」「劣性遺伝病は何となく分かる、しかし優性遺伝病とはなぜだろう」などの疑問が記されています。

 日本育種学会の記者会見でも複数の記者から、日本遺伝学会の新しい用語提案について、質問が出されました。当方はただいま、カキ(柿)の取材もしているのですが、植物の育種分野の方々から見ると、優性→顕性、劣性→潜性、という変更提案についてはかなり違和感を感じているようです。

 最後に、直近の日経バイオテク2017年9月25日に掲載した2018年度予算概算要求の記事も紹介します。

(2017.9.25)
日経バイオテク2017年9月25日号○リポート
2018年度バイオ関連予算の概算要求
バイオ関連予算に2474億円を要求、より出口重視の予算編成へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400017/092100017/

 農林水産省の予算の記事作成では、まず農水省の建物内をめぐって印刷物の資料集めから始めます。資料の紙の重さを量りましたところ全体で3kg。全体が150g、大臣官房が190g、農林水産技術会議が140g、食料産業局が170g、生産局が440g、消費安全局が200g、経営局が120g、農村振興局が300g、林野庁が520g、水産庁が760gでした。水産庁は、重さだけでなく、養殖などでバイオと関係が深い注目政策が目立ちます。

 なお、農水省で予算要求額の増大が目立つGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)につきましては、9月26日午後に東京大学弥生講堂で開かれた「GAP Japan 2017」を取材しました。会場は満員の盛況ぶりでした。

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