新春展望2018

春を待ちわびて

(2018.01.03 08:00)
山崎清一=いちよし経済研究所首席研究員

 『春よ来い♪早く来い♪』― バイオベンチャー株に対する今の思いを表現すると、こんな感じでしょうか。

 バイオベンチャー株は全体でみると、2016年の春に急騰して以来、調整が続き、2017年も株式市場が世界的な好景気などを背景に活況な中、一部の銘柄を除き蚊帳の外に置かれています。最大の理由は、株価に大きく影響するポジティブイベントが少なかったことです。この間は、むしろ投資家の失望売りを誘うネガティブニュースが目立ちました。2016年は5月以降に臨床最終段階での開発失敗が相次ぎ、2017年は年明け早々、承認取り下げのニュースに驚かされました。もともとバイオ株は景気に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」と見られており、2017年のような好景気を背景とした相場の中では買われにくい性格がある中で、買う材料も乏しければ盛り上がりに欠けるのは当然です。

 しかし2018年は違います。承認申請、フェーズ3やフェーズ2の結果判明など、株価に影響を与える重要イベントが相次ぐと見込まれるからです。具体的には、タカラバイオの腫瘍溶解性ウイルスHF10のメラノーマでの国内の承認申請、スリー・ディー・マトリックスの止血材TDM-621の国内での承認申請、ブライトパス・バイオのがんペプチドワクチンITK-1の国内でのフェーズ3の結果判明、ナノキャリアの抗がん剤シスプラチンミセルの欧米でのフェーズ2の結果判明などがあげられます。いずれも開発の後期段階ですので、これらがポジティブな結果となれば、大いに盛り上がることでしょう。

 製薬会社との提携にも期待できます。ここ数年の間に創薬のトレンドが大きく変わりました。ポスト抗体医薬を期待する流れの中で、特殊ペプチド医薬や核酸医薬への関心が高まり、昨今は、細胞、遺伝子、ウイルスなどを利用した薬剤への注目度も増しています。いずれもベンチャー企業が主導権を握る領域で、幸い、日本にはこうした技術の開発を粘り強く続けてきたベンチャー企業が何社も存在します。おかげで、最近、日本のバイオベンチャーの提携が目立つようになりましたが、この傾向は2018年も変わらないと見ています。

 バイオベンチャー設立の活発化にも期待しています。日本では、かつて2000年代前半に、バイオベンチャーの設立が相次ぎましたが、その多くは事業が成り立たず、一過性のブームで終わってしまいました。バイオベンチャーが成功するためには製薬会社との提携が重要ですが、これがなかなか実現しなかったことが最大の原因です。製薬会社の自前主義とベンチャーの浅い経験が障害となりました。しかし、いまは違います。製薬会社はオープンイノベーションに積極的で、バイオベンチャーとの補完関係が明確になりました。しかも、ここ数年の創薬トレンドの変化で製薬会社の関心領域が広がり、バイオベンチャーのビジネスチャンスは増しています。ビジネストレンドを見据えたうえで大学などのシーズをうまく活用すれば、成功確率は高まるはずです。

 以前も、新春展望や「検証 企業価値」で、従来の製薬産業では異端ともいえる技術が突如としてビッグビジネスになるのが昨今の状況と書きましたが、この傾向は一段と強まっています。先入観にとらわれることなく、世界の創薬トレンド、ビジネストレンドをこまめにフォーローする、2018年もこれを自分への戒めにしたいと思っています。

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