新春展望2018

ポストノーベル賞エイジのオートファジー研究

(2018.01.03 08:00)
吉森保=大阪大学大学院医学系研究科栄誉教授

 早いもので、大隅良典先生(東京工業大学栄誉教授)がノーベル生理学医学賞を受賞されて、1年余りが経過しました。先生がこの間超多忙な日々を送られたことは言うまでもありませんが、受賞者では無い私まで講演や執筆依頼が急に増えノーベル賞バブルという言葉が浮かんだりしました。長く知名度の低い分野だったのでありがたいことだと思う一方で、研究者である我々がそれに踊らされてるわけにはいかないとも思います。ノーベル賞が出た分野はもう「終わっている」という考え方があると聞き驚きましたが、少なくともオートファジーはまだまだこれからの分野です。

 大隅先生が「判ったことは3割」とおっしゃっていました。しかし、それは解明が先行している酵母の分子機構についてで、哺乳類の組織や疾患の話になると1割程度というのが私の印象です。これまで我々はgeneralで普遍的なオートファジーの分子機構を明らかにすることに注力してきました。その全容は未だ解明されておらずもちろん最重要課題であり続けますが、個々の組織や疾患に特異的なオートファジーの意義やメカニズムが人類がほぼ未到の大地として拡がっています。そこを開拓することによって、すでに始まっている創薬にメカニズムに基づいた、より確かな道筋が見えてくるでしょう。また、機能性食品や化粧品開発の可能性についても私は大変注目しています。
 
 最近サンフランシスコ近郊の研究会に呼ばれた折に、当地の状況を聞く機会がありました。ベイエリアのVCインベスター達の間で、オートファジーは最もホットな話題になっており、彼らから旧知の研究者達に次々とスタートアップカンパニーを設立しないかと声がかかっているようです(ひとりはごく最近大学からある企業の研究担当副社長に転身しました)。私の所属部局の知財戦略室の調査では、オートファジー関連の特許数は米国と中国が日本を圧倒しています。日本のオートファジーの基礎研究は大隅先生を先頭に今も世界をリードし続けており、次のステップにそれを活かすためにも、日本の総合的な知財戦略が必要だと痛感しています。オートファジーの応用から将来またノーベル賞が出る可能性もあります。それを目指す次の世代の育成も、我々の重要な任務です。

日経バイオテク お薦めの専門書籍・セミナー

  • 新刊「世界の創薬パイプライン2018/2019」
    2018年7月31日発行!海外ベンチャーの創薬プロジェクトを大幅拡充。自社の研究テーマと関連するパイプラインの動向、創薬研究の方向性や競争力、開発状況の他社比較に有益なデータとして、自らのポジショニングを確認できます。
  • 「日経バイオ年鑑2018」
    最新データからわかる、バイオ分野の[開発][市場][産業]動向。バイオ事業戦略の頼れる味方。自社のR&D戦略を描くために、マクロな視点で将来を展望する一冊です。
  • セミナー「創薬R&Dにおける新たな試み」
    2018年9月21日開催!創薬R&Dにおける新たな試みをテーマとし、これからの研究開発者にとって「創薬研究に役立つヒント」を提供。第一三共、大日本住友製薬、アクセリード ドラッグディスカバリーパートナーズのキーパ-ソンが提言。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧