今年は日本の再生医療、遺伝子治療にとって潮目となる年になるだろう。昨年は阪大発の心筋シートが製品化され、テルモのハートシートが再生医療等製品として薬機法施行後、初の「期限付きの早期承認」を受けるなど再生医療の領域は着実に盛り上がってきていると言えよう。

 問題はiPS製品である。iPSの開発は状況によっては追い風から向かい風に転じるかもしれない。アカデミアにおいてはiPS細胞由来製品の開発に対して慎重派の意見が強まってきているように思う。そこで、網膜色素上皮iPS領域で先頭を走ってきたヘリオスの動きに今年、まず注目してみよう。

 ヘリオスは昨年、ついに上場を果たしたが、今年はどのような動きをとるだろうか?かつて遺伝子治療が盛り上がったときに日本の遺伝子治療ベンチャー企業も勢いがあったが、その後の展開は読者のご存知の通りである。従って、先頭を走っているヘリオスの動きが今後の再生医療の展開を占う試金石となるだろう。ヘリオス関連の情報を追うと面白い動きがすでに起きている。

 ヘリオスは横浜市立大学の谷口英樹教授、武部貴則准教授ら研究グループが開発した多能性幹細胞(iPS細胞など)から機能的な臓器の「芽」を作製する技術に関し、全世界における独占的な特許実施許諾契約を締結するとともに、同研究グループと共同研究を開始した。さらに武部准教授は米国シンシナティ子供病院にも研究室を立ち上げ、クロスアポイント制度を使い、横浜市立大学にもエフォートを割く。

 シンシナティ子供病院は臨床研究支援スタッフを1000人以上有する世界的な臨床研究拠点病院である。横浜市立大学も臨床研究センターを充実させつつあり、米国NIHで生物統計をしていた山中竹春教授を副センター長にすえ、国家戦略特区においても横浜市立大学附属病院は保険外併用療養の特例対象医療機関に選定されている。今後の日米の臨床研究の協働に期待したい。

 ヘリオスの動きをみると着々と国内アカデミアと海外を巻き込んだオープンイノベーション、グローバル同時開発を推進していることがわかる。日本国内で多少の逆風があろうともヘリオスは動じることはないだろう。東京オリンピックに向けて羽田空港から川崎殿町に橋がかかることに伴い、日本の再生医療は盛り上がる。神奈川だけでなく、東京においてもバイオ3Dプリンターのベンチャー企業のサイフューズがロボットスーツHALのサイバーダインから出資を受け、オープンイノベーションはここでも加速化している。ヘリオスの眼領域の再生医療においてもAppleのiPadを用いた眼のリハビリ医療とも相性がよく、再生医療とのICTやロボティックスの融合も盛り上がってきている。

 関西も神戸がリサーチコンプレックスに指定されるとともに、阪大ファンド、京大ファンドの動きも活発化するだろう。自家細胞を用いた心筋シートも他家iPS細胞由来製品へのシフトが期待される。阪大澤医学部長の次なる一手に注目したい。神戸の高橋政代先生のアイセンター設立の準備もスピードアップしてきており、関西もまた面白くなるだろう。

 最後に遺伝子治療製品についてであるが、再生医療等製品としての承認第一号が待たれる。日本遺伝子治療学会は日本遺伝子細胞治療学会に名称も変わり、アカデミア側の意気込みも感じられるとともに外資系製薬企業も日本のアカデミアとのオープンイノベーション形成の兆しも現れている。これまで保守的だった内資系製薬企業も政府の後発医薬品促進策の影響から武田薬品をはじめとして再生医療等製品シフトもみられ、日本にもようやく産官学連携の春が来るのかもしれない。