明けましておめでとうございます。2015年11月で、再生医療等安全性確保法(再生医療新法)と医薬品医療機器等法が施行されて1年が経過しました。そのため2015年は、折に触れて、「それらが施行されて何が変わったか」ということを念頭におきながら取材を行ってきました。2016年も、それを常に意識しながら、取材をしていくことになりそうです。

 今回の新法では、再生医療の安全性を確保するため、自由診療に対してもルールが定められ、国が治療の実態を把握できるようになりました。具体的には、治療で利用する細胞などを作製する医療機関の細胞培養加工施設(CPC)は、国が定めた基準を満たす必要があり、治療を開始するためには、再生医療等提供計画を地方厚生局(厚労省)に提出します。加えて、提供計画は、あらかじめ再生医療の専門家などで構成される(特定)認定再生医療等委員会で審議されることが必須となりました。

 国が、これらのルールを課すことにしたのは、再生医療の安全性を重視したためです。再生医療と聞くと、iPS細胞や体性幹細胞を利用した治療を思い浮かべがちですが、そればかりではありません。患者由来の体細胞を利用した、多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: PRP)療法や、癌免疫療法など、従来民間クリニックで手掛けられてきた治療も、再生医療新法の中で、最もリスクの低い第3種の再生医療として分類されることとなりました。

 しわ取りなどの美容目的で、民間クリニックが、患者由来の血液から血小板を濃縮し、患部に投与するPRP療法などを自由診療で手掛けていることも少なくありません。再生医療新法が施行されて、これらのような第3種の再生医療を取り巻く状況はどのような変化を受けたのか?それを探るべく、2015年の年末に、聖マリアンナ医科大学発のベンチャー企業である細胞応用技術研究所(L-CAT:川崎市宮前区、木苗貴秀社長)に伺いました。L-CATは、PRP療法の研究開発などを手掛けています。同社は、聖マリアンナ医科大学で、既に先進医療として認められている難治性皮膚潰瘍を対象としたPRP療法の技術を普及させるために2012年に発足しました。

 再生医療新法が施行され、猶予期間が終了した今、基準を満たした医療機関以外では、治療の継続が困難になりました。業界関係者からは、「基準が満たせないため、多くの医療機関がPRP療法を手掛けなくなるのではないか」との声を聞きます。一方でL-CATは、この状況をビジネスチャンスととらえています。同社は、自身で血小板を濃縮しない医療機関を対象に、基準をクリアしたCPCを利用して、PRPの受託製造を行っているためです。

 また、同社の木苗社長は「PRP療法は今まで、濃縮する血小板の濃縮率などが明確に定義されていなかった。L-CATは、PRPを再生医療等製品として承認を取得することを目指しており、PRPの規格などの決定に関わりたい」と話しています。

 同社が薬事承認の取得を目指すのも、医薬品医療機器等法で条件・期限付き承認の制度が実施され、再生医療等製品の開発を後押しする制度が動き始めたからでしょう。今回の取材で、再生医療新法などの施行により、すでに民間クリニックにまで広がっている、第3種の再生医療の現場で起きている変化を知りました。

 十数年後に振り返った時、まさに今は、再生医療にとって大きな転機となる期間にあたるのでしょう。2016年も、再生医療の動向について目が離せないと思った次第です。

 今年も、日経バイオテクをどうぞよろしくお願い致します。