新春展望、岩田洋佳=東京大学大学院農学生命科学研究科准教授

2016年、ゲノム情報利用育種の新しい扉を開く年に

(2016.01.01 00:10)

 謹んで新年のお祝いを申し上げます。昨年国連は、世界人口が2050年までに97億、2100年までに112億に達すると予測しました。食料問題は今後ますます深刻化すると予想され、作物の遺伝的能力を改良することで問題解決に取り組むことが重要な課題となっています。

 次世代シークエンサーに代表されるゲノム解析技術の発達は、ゲノム情報を活用する新しい育種法ゲノミックセレクションの実用に道を開きつつあります。ゲノミックセレクションは、ゲノム上の多数のDNA多型をもとに個体の遺伝的能力を予測して選抜する方法です。栽培試験を行わずに優秀な個体を選抜できるために、育種の効率化・高速化への貢献が期待されています。昨年は、トウモロコシやソバなどで、具体的な改良効果に関する研究報告がなされました。

 「ゲノム情報をもとに遺伝的能力を予測し選抜する」という新パラダイムを育種の世界にもたらしたゲノミックセレクションですが、その機能強化のためには今後更なる研究開発が必要です。例えば、現在のゲノミックセレクションでは、DNA多型に基づき作物の収量や品質などを予測しますが、こうした作物の特性は遺伝子だけでなく環境の影響も受けて変化します。したがって、作物が環境の変化に対してどのように応答するのかを予測することも重要です。そのためには、植物をとりまく環境の計測にくわえ、植物の内的な状態(遺伝子発現、栄養状態、代謝産物など)についても計測を行う必要があると考えています。また、環境に応答して成長する植物を、ドローンを用いたリモートセンシングなどで、経時的に計測するための手法を構築することも重要です。さらに、こうして計測・収集される多種多様なデータ間にみられる複雑な関係を、最新のデータ科学の手法を用いてモデル化する必要があります。このように、ゲノム情報の活用を出発点にした新しい育種法を、今後、様々な分野の科学や技術と融合・発展させていく必要があります。

 本年は、ゲノム情報を活用する新しい育種法をより一層有益なものとするために、様々な分野の研究者とともに、こうした新しい研究課題への取り組みを開始したいと考えています。こうした研究が、将来的には、乾燥地や塩害地など、作物栽培が容易でない環境に適応できる品種の効率的開発に結びつき、ひいては食料生産の底上げに繋がるものと考えています。

キーワード:深層学習、IoT (Internet of Things)、ドローン

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