昨年を振り返えると、テロによる国際情勢の不安定化や中国経済成長の減速など、今後世界経済および企業活動へ影を落としかねない事態が顕在化している。国内では、企業収益の改善など明るい兆しが見られたが、2016年は国際情勢に加え、消費税増税などの不安要素もあり、予断を許さない年となろう。医療行政においても、長期収載品の薬価引き下げ、市場拡大再算定、さらなる後発医薬品使用促進策など、製薬企業活動に影響する要因が続いている.いずれにせよ、国内製薬企業各社がさらに新薬開発の国際競争力をつけることが必須である。

 製薬企業活動全般では、研究開発の軸足が、薬剤治療満足度の高い慢性疾患から重篤で治療薬のない疾患に転換し始めた。難病であったがん治療においては、抗PD-1抗体などの新たな治療薬が医療現場に登場し、進行を遅らせる治療から長期寛解を目指した治療への流れが鮮明になってきた。従来の治療概念にはなかった、遺伝子治療、再生医療、日本が強みを持つiPS細胞など、次世代の医療技術の実用化に向けた検討も盛んになってきた。次世代の医療については、国の後押しを受けて、革新的治療実用化促進の仕組みも見え始めている。こういった流れを加速するためには、産・学連携によりオープンイノベーションを推進することが益々重要となる。

 一昨年9月、当社は世界に先駆けて抗PD-1抗体で、腫瘍免疫を活性化する「オプジーボ」を上市した。当社におけるこれまでの医薬品創出と同様、本剤の創製も、研究機関との密接な連携から生み出された。本剤は一部の患者で長期寛解を達成するなど、臨床現場から高く評価されているが、開発当初国際学会ではその臨床効果は大きな驚きをもって受け止められた。腫瘍免疫活性化の効果を限定的と捉えていた業界の常識が覆されたからであろう。革新的であればあるほど臨床効果の予測は難しく、ともすれば常識が研究開発を阻むことがある。信念を持って挑戦し続けること、また自らの小さな殻に閉じこもらず、常識を超えた発想を持つ世界の多様な研究者(組織)と連携することの重要性を改めて認識した。このような背景もあり、医薬品産業強化総合戦略の下、日本医療研究開発機構(AMED)が主導する臨床研究等の活性化や産官学の連携強化による医薬品産業強化総合戦略の推進は極めて重要な取り組みと考えている。産官学が一体となって,次世代医薬品開発に向けた各社のイノベーション創出が益々進展するものと期待している。