タイトルはNatureのReview記事(Nature 526, 351-360 (2015))から拝借しましたが、遺伝子治療の現状をうまく表現していると思います。

 遺伝子治療は、1990年以来、数多くの臨床試験が行われてきましたが、高い有効性を示す例はみられたものの副作用への懸念から長らく低迷していました。ところが近年、安全性や遺伝子導入効率を高めた高機能ウイルスベクターの開発など次々と技術革新が進み、最近は、優れた有効性や安全性を示す臨床データが蓄積されています。特に、Engineered T-cell Therapyでは劇的な有効性が示され、ビッグファーマや創薬ベンチャーが堰を切って開発に乗り出しており、まさに、「遺伝子治療が有力な治療法として帰ってきた」と感じています。

 日本は、再生医療新法および医薬品医療機器等法(薬機法)の施行により、世界で最も再生医療が実現化しやすい国になったわけですが、言わずもがな遺伝子治療用製品も薬機法の規定によれば再生医療等製品に属します。現在、国内で臨床試験中の遺伝子治療用製品は9プロジェクトが進められているはずですが、そのうち3プロジェクトが当社の開発プロジェクトです。1つは腫瘍溶解性ウイルスHF10で、米国で第2相臨床試験、日本で第1相臨床試験を実施しています。あと2つはsiTCR遺伝子治療で、三重大学の医師主導治験により日本で第1相臨床試験を進めています。また、当社主導ではありませんが、当社のベクター製造・細胞加工施設(GCTP対応の遺伝子・細胞プロセッシングセンター)や遺伝子検査施設(バイオメディカルセンター)が関わらせていただいているプロジェクトも少なくはありません。本年はさらに安全性や有効性などの臨床データを蓄積し、各プロジェクトを大きく前進させる年になると思います。また、CD19を標的としたCAR遺伝子治療の臨床試験を開始する予定です。

 当社は、遺伝子治療の開発のトップランナーとして、条件及び期限付承認制度なども積極的に活用しながら早期の商業化を目指して開発を進めていくとともに、蓄積した技術やノウハウを遺伝子治療用製品などの製造開発支援サービス(CDMO事業)へ展開し、遺伝子治療の開発に貢献していきたいと考えています。