国際アグリバイオ事業団 アグリバイオ最新情報【2016年7月】

(2016.08.12 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していないアグリバイオ最新情報の全文はこちらをご覧ください

世界

2016年世界食糧賞はバイオテクノロジーによる栄養成分強化法の先駆者

 世界食糧賞財団が表彰する2016年の世界食糧賞は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの農村部の貧困層の健康を改善した4人の博士が受賞した。6月28日に米国国務省での式典中に発表された。

 米国開発庁(USAID)事務官のGayle Smith氏は基調講演で、「この卓越した4人の世界食糧賞受賞者は、科学的貢献とその献身的貢献が合致して人々の生活を変えることができた」と称えた。

 2016年受賞者のうち3人は、国際ポテトセンター(CIP)のMaria Andrade氏、Robert Mwanga氏、Jan Low氏で、バイオテクノロジーによる栄養成分強化法(biofortification)として最も成功した事例であるオレンジ色の果肉のサツマイモ(OFSP)の開発を顕彰した。モザンビークとウガンダの植物学者であるAndrade氏とMwanga氏は、CIPおよび他のソースからの遺伝物質を使用してビタミンAに富むOFSPを育種した。 Low氏は栄養研究に基づき、別々の10の地域のほぼ2万世帯にこの栄養強化したサツマイモを栽培、購入、消費するプログラムを組み上げた。

 Howarth Bouis氏は、国際食糧政策研究所(IFPRI)でHarvestPlusを創始し、25年間にわたって世界的な植物育種戦略としてbiofortificationに、多くの機関と連携して取り組んできた開拓者である。その指導的努力の結果として、鉄と亜鉛を強化した豆、米、小麦、およびトウジンビエ、ビタミンAを強化したキャッサバ、トウモロコシやOFSPなどの作物の試験栽培や実栽培を40カ国以上で行ってきた。

 2016年は、ノーベル平和賞受賞者のNorman E. Borlaug氏が世界食糧賞を創設して30周年の記念の年である。世界食糧賞は、飢餓を緩和し、世界の食料安全保障を促進することに画期的な成果を上げた個人に授与される世界的な最も顕著な賞である。今年の25万ドルの賞金は4受賞者に均等に分割される。

ノーベル賞受賞者110人がGMO反対を止めるようグリーンピースに呼び掛け

 100人以上のノーベル賞受賞者が遺伝子組換え生物(GMO)とバイオテクノロジーによる農業革新を支持する立場から、GMOに対する反対、特にゴールデンライスに対する反対を止めるようにグリーンピースに呼び掛ける手紙に署名した。これは、世界各国の政府にゴールデンライス、およびバイオテクノロジーで改良した作物や食品全般に反対するグリーンピースのキャンペーンを止めさせるように訴えるものである。

 グリーンピースと国際連合、世界各国の政府の指導者に宛てた手紙では、バイオテクノロジーによる改良作物や食品が、他のいかなる手法で改良されたものよりも安全性に勝ることはないにしても同程度の安全性があるということを、世界中の研究機関や規制当局が繰り返し、かつ一貫して挙げてきたとしている。また、これらを消費することが、ヒトや動物の健康を害した例は1つもないとしている。

 さらにこの手紙は、強い行動を起こすように政府に要請している。グリーンピースの行動に強い反対の力をあらゆる面から起こし、農業者が現代の生物学のツール、特にバイテクノロジーで改良された種子を使えるように促進するとの要請である。ノーベル賞受賞者は、以下の言葉で手紙を結んでいる。「私たちはこの人道に反する犯罪を前にして世界の貧しい人々がどれほど死んでいるかに思いを馳せるべきである」

Purdue大、地球規模での GMO禁止による経済的・環境的影響を評価

 米Purdue 大学の研究者らは、2つの相反するシナリオをモデル化し、それぞれ独立したものとそれらの組み合わせを評価することで、遺伝子組換え作物(GMO)の地球規模での経済的影響と温室効果ガス(GHG)排出量への影響を調べた。第1のシナリオは、地球規模でのGMOの禁止の影響を、第2のシナリオでは、GMOの浸透の効果をGM技術にリンクする価格、福祉温室効果ガスの排出量に特定の焦点を当ててその影響検討した。

 結果は、食品価格は地域によって、0.27%から2.2%に増加する可能性があることが示された。 GM技術の禁止に関連する総福祉損失は9.75億ドルとなる。重要なバイオテクノロジー形質の損失による経済的影響に加えて、環境への影響もある。十分な環境分析研究は、今回行われなかったが、GMO形質がないことによる土地利用の変化と温室効果ガス排出量による損失の可能性が示された。GMO技術が禁止された場合、温室効果ガス排出量の大幅な増加が発生することが予想される。

南北アメリカ

GM食品表示法案が米国上院を通過

 米国の農家、生産者、および他の農業ビジネス関係者は、米国生物工学食品表示基準が上院を通過したことを歓迎している。この法律により、透明で均一な国家食品表示基準が提供されると期待される。法案は現在、Barack Obama大統領に渡され署名されると法律になる。

 「遺伝子工学は、植物育種家が地球規模の課題に対処するために使用する安全かつ重要な様々のツールの1つである。この法案のおかげで、この手法で製造された製品が不当な表示義務を負わされることがなくなる」と、米国種子貿易協会の最高経営責任者(CEO)兼代表のAndy LaVigne氏は述べた。

 「上院での先週の働きに加え、今日、下院の我々の代表が、市場に一貫性をもたらすようにもう1つの重要な一歩を踏み出した」と、Maryland州の農家であり、国立トウモロコシ生産者協会(NCGA)の代表を務めるChip Bowling氏は語る。「この成果は、食品と農業の価値連鎖のメンバーが一緒になって過去になかった農家、食品会社そして最も重要な消費もが、解決策を進めるために集まったことにある。上下院がともにこの重要な課題に対処しており、我々は、大統領にこの法案に署名して法とする最後の一歩を踏み出してほしいと要望している」と付け加えた。

アジア・太平洋地域

神戸大、イネを改良するための新たな4つ遺伝子を発見

 日本の神戸大学の研究チームは、農業への極めて重要であるイネの新しい4つの遺伝子を発見した。チームは、作物の遺伝子分析のために使用されてきた量的形質遺伝子座(QTL)解析の代わりに、ヒト遺伝子を解析するのに頻繁に使用されるゲノムワイド関連解析(GWAS)を使用した。

 研究チームは、神戸大学が長年に渡って維持している日本酒の醸造に使用される86品種を含む176品種日本のイネ品種ターゲットとして研究を行った。次世代シーケンサーを使用して、各品種の全体の配列を決定し、49万3881個のDNAの遺伝子多型を発見した。

 これらの結果に基づいて、チームはイネの染色体12組の中から4つの遺伝子を同定した。 1番染色体には、イネの開花日を決定する遺伝子が含まれる。4番染色体は、生成穂数、葉の幅、および米粒の数に影響を与える遺伝子を含む。8番染色体の遺伝子は、芒の長さ(収穫に影響を与える要因)に影響を与えまる。そして、11番染色体中の遺伝子は、開花日、草丈、穂の長さを決定する。この実験は、他の植物や動物種における遺伝子の機能の発見を支援し、人口増加によって引き起こされる可能性のある食糧不足の解決に貢献する。

フィリピン最高裁、BTナスの判決を逆転

 2016年7月26日にフィリピン最高裁判所は、遺伝的組換え生物(GMO)の圃場試験、栽培、商品化、および輸入を一時的に停止するとの2015年12月の判決を逆転する判決を出した。全会一致の決定だった。

 最高裁判所は、フィリピンのグリーンピース東南アジアと、農家や農業の科学の発展(MASIPAG)という団体による申し立てを却下して、BTナスの提案者が提出した再検討のための9つの動議をとりあげ、新しい判決を出した。

 最高裁判所は、BTナスの圃上試験が完了し、バイオセーフティ許可の有効期限が2012年に切れているとの観点から、この件を却下するべきとの請願に合意した。また、この件は、課題の重要性に基づきその実質的なメリットの見地から解決すべきであり、副次的に取り上げられたことだけを理由に、農務省の行政命令08-2002が違憲であったかを判断すべきではないと述べている。

 2015年12月に最高裁判所は、Btナスの圃場試験を停止するだけでなく、圃場試験、隔離条件での使用、増殖、および遺伝子組換え作物の輸入を一時的に停止していた。また、国のバイオセーフティの枠組として確立していた政令514を欠いているとしてDA AO 08―2002を無効化していた。

研究

日持ちが向上するトランスジェニックバナナをイスラエルで開発

 イスラエルの農業研究機関の科学者たちは、2つの転写因子の発現を減少させることによって、より長い貯蔵寿命を有するトランスジェニックバナナを開発した。結果は、Plant Physiology誌に掲載されている。

 Haya Friedman博士らは、トマトの熟成遺伝子に関する以前の研究に基づいて、MADSボックス遺伝子、MaMADS1とMaMADS2として知られているバナナで同様に働く遺伝子を解析した。これらの遺伝子の発現が抑制されると、バナナは成熟および貯蔵寿命特性遅延を示した。遅延熟成特性は、熟成ホルモン、エチレンの生産に関連している。最も高い遺伝子抑制を持つ品種は、エチレンを生産せず、熟成が最も遅れた。トランスジェニックバナナの品質と味は従来のものと同じだった。

 研究者たちは現在、農家や生産者を支援するために、結果の事業化に取り組んでいる。

作物バイオテクノロジー以外の話題

食糧供給を改善するために微生物叢を活用

 Duke大学の科学者たちは、食糧供給を増加させるために植物中の微生物叢を操作する方法について検討している。人体と同様に植物には、植物の健康、成長および発育に影響を与えるきわめて多くの細菌や真菌が共生している。これまでの研究から、研究室においては植物の遺伝子が微生物叢を操作できることが分かっているが、自然環境における植物の遺伝の働きを調べた研究はわずかしかなかった。

 「一枚の葉に数千もの異なる種類の細菌が生息している場合もある」。第一著者であるDuke大学の大学院生のMaggie Wagner氏は研究中にこう述べた。「問題は、どのような要因で微生物が植物中に住むようなるかだ。植物の内部に生息する微生物に影響を与える要因は何か? 」とも語っている。

 Wagner氏らは、植物遺伝子、環境その他の要因が微生物に与える影響を解析するためにDNA配列決定技術を使用した。彼らは、野生の低灌木Boechera strictaを研究に使用した。遺伝的に同一系統の野生の植物を3つの実験庭園内に移植して発芽させ、2年から4年後に、440個体の植物の根と葉における細菌のDNA配列を決定した。この結果、約4000種類の細菌は主に根に住んでいることが発見された。最も一般的な細菌群は、プロテオバクテリアや放線菌に属していた。また、平均して、微生物多様性の変動の約5%以下が植物遺伝子の影響を受けていたことが解った。微生物叢への植物の遺伝的制御は、根よりも葉の方が強かった。土壌のpH、水分、および温度は、植物の細菌の構成を決定する主要な環境要因であることが見いだされた。

 「微生物叢は、人口増加や気候変動の面で農業生産性を向上させるのに非常に有用なツールとなる可能性がある」とWagner氏。「しかし、その効果的な育種は、一部の人々が思っているよりも困難である可能性がある」とも述べている。

ブラジルで遺伝子組換え蚊がデング熱を91%減少

 遺伝的に改変されたヒトスジシマカ「Friendly Aedes」がブラジルPiracicaba市で放出されて1年を経過した後の新しい疫学的監視調査によるとCECAP/El Dorado地区におけるデング熱の症例が91%減少を示した。デング熱の症例数は2014/2015年のシーズンの133件に対して、2015/2016年のシーズンでは12件に減少した。疫学的監視調査によると、残りの自治体でも2014/2015年シーズンの3487例から、2015/2016年シーズンには1676例へとデング熱発生率は52%減少した。

 報告書はまた人口当たりのデング熱発症率について、2015/2016年シーズンには、CECAP/El Dorad地区では残りの市町村の部分よりも45%低かったとしている。その前年は、CECAP/El Dorad地区の発症率は他の地域よりも195%多かった。最新の一斉調査では、CECAP/El Doradoでのジカウイルス感染症とチクングニア熱の発症件数はゼロだった。

 「Friendly Aedesプロジェクトを行って1年で、CECAP/Eldorado地区での発症は90%以上と例をみない減少があった」と市の健康長官のPedro Mello氏は述べた。
英Oxitec社のブラジル法人Oxitec do Brasil社で生産したFriendly Aedes は2015年4月30日に、Piracicaba市CECAP/Eldorado地区に放たれた。

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