国際アグリバイオ事業団 アグリバイオ最新情報【2016年6月】

(2016.07.14 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年6月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

PG Economics誌が遺伝子組換え作物の世界的影響を報告

 作物バイオテクノロジーは、経済的及び生産的な面で持続的に重要で有用な効果を提供し、収入の改善とリスクの軽減を成し遂げてきたとして、英PG Economics誌のGraham Brookes 氏とPeter Barfoot氏が「遺伝子組換え作物:世界的な社会・経済及び環境への影響1996- 2014(GM crops: global socio-economic and environmental impacts 1996-2014)」と題する報告書を発表した。

 「GM作物を作付けできるという選択肢を与えられている農家では、実際の経済的便益が明確であり、2014年には平均ヘクタール当たり100米ドル以上/の収益が上がった」とPG Economics社のBrookes氏は述べている。「これらの利点の3分の2が、より高い収率および増加した生産によるものであり、発展途上国の農家が最高の利益を受けている。また環境についてみれば、不耕起栽培の導入、害虫耐性GM作物の利用とともに、除草の管理手法向上とより害の少ない農薬の利用について、よりよい効果を上げている」と彼は付け加えた。

 報告のハイライトは次のようになる。

 ・GM作物は耕作地を増やさないで多くの収量を可能にした。同じ収量をあげるには    2070万ヘクタール以上の耕作地が必要になる。

 ・バイオテクノロジーは、農家がより多くの収量を生み出す助けとなった。その結果、321.8Mトンのトウモロコシ、24.7Mトンのワタと158.4Mトンのダイズが世界での生産に加わったことになる。

 ・GM作物栽培によって、耕起栽培と温室効果ガスを減らすことで2014年に道路から千万台の自動車を除いたのと同じ効果を上げた。

国際研究チームがピーナッツのゲノムを解析

 国際作物半乾燥熱帯研究所(International Crops Research Institute for the Semi-Arid Tropics、ICRISAT)の科学者をはじめとする国際研究チームは、ピーナッツの祖先の2倍体のA-ゲノム(Arachis duranensis)の解析を完了した。このブレークスルーは、アレルゲンフリー、アフラトキシンフリー、栄養が豊富な品種の開発に向けて扉を開くことになる。

 全米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究結果は、50324個の蛋白質をコードする遺伝子の落花生Aゲノムのドラフトゲノムを含むものである。完全なDNA配列の分析によると、ピーナッツ系統は顕花植物の起源に由来するもので少なくとも3つの染色体のセットによって影響を受けたことを示唆している。調査結果はまた、莢数の増加、油収量、旱魃耐性、高い耐病性などを改善する様々のピーナッツ品種の開発のための遺伝子マーカーとして使用することができる数百万の多様な構造変化を提供している。

 「この研究は、単に速い方法で、より生産的かつより多様な落花生品種を開発するために世界中の植物育種家を支援するだけでなく、花を地上に着け、地下に入って結実するという生殖過程に関する理解を提供することになる」とICRISATの、ゲノムシーケンシングプロジェクトディレクターDr. Rajeev Varshneyが述べている。

G20閣僚会議:農業技術の革新が極飢餓を終わらせる鍵と確認

 2016年のG20農業大臣会合が6月3日に中国西安で開催され、主要経済国から参加した農業大臣は、世界的な農業開発と協力について議論した。 G20の大臣に加えて、ゲスト国の閣僚、国連食糧農業機関(FAO)、国連世界食糧計画(WFP)と国際農業開発基金(IFAD)などの国際機関の指導者が参加した。

 G20が設立されてから第3回に当たる2016年の農業大臣会合は、「農業イノベーションと持続可能な開発」のテーマを中心に展開した。 各国閣僚らはG20農業大臣会合公式声明として、「農業と農村開発は、世界的な食料安全保障と貧困軽減に不可欠であり、包括的経済成長、社会の安定と天然資源の持続可能な利用に向けて大きく貢献できることを再確認した」と発表した。閣僚らは、農業市場と貿易の開放は、より手頃な価格の食品へのアクセスを向上させることができるとの同意に達した。公式声明はまた、科学、技術、社会イノベーションが持続可能な農業の成長における重要かつ主導的な役割を果たしていると述べた。

バイオエネルギーで食料安全保障を支援できると国際研究チームが報告書

 米エネルギー省(DOE)およびその契約先である米UT-Battelle社など、国際機関から成る専門家チームは「食料安全保障とバイオエネルギーの調和:最優先行動規範」(Reconciling food security and bioenergy: priorities for action)と題する報告書を2016年6月に発表した。報告書は、うまく計画されたバイオ燃料とバイオエネルギー開発プログラムを通じて、エネルギー問題と食料安全保障の問題を同時に改善できるとしている。

 報告書は、国連2030持続可能な開発目標(SDGs)で具現化し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下のパリ協定にもあるように食料とエネルギー安全保障は、相互に補完的な目標であることを指摘した。著者らは、食料安全保障を促進し、地域住民のためのクリーンで信頼性の高いエネルギー源の確保が相乗的に進められる様々の方法を開示している。報告書では、バイオ燃料、食料作物や天然資源を持続的にまとめて管理できる、科学的根拠に基づく手順を明示している。また、バイオエネルギーが食料安全保障を促進することができるとの結論が含まれている。

南北アメリカ

University of Florida、GM食品に関する消費者知識のギャップを報告

 University of Floridaの食品および農業科学研究所(UF/IFAS)が新しい研究を報告した。それは、消費者は遺伝的に改変された(GM)作物について知識はあるものの、その知識レベルは限定的であり、多くの場合、事実に反していると報告している。

 UF/IFASの食料および資源経済学のBrandon McFadden助教授とOklahoma State Universityの農業経済学Jayson Lusk教授は、消費者のバイオテクノロジー、育種技術、およびGM食品表示への賛否などを把握するために調査を行った。1004以上のオンライン調査を使用して、GM食品と生物に関する知識レベルを測る質問をした。GM生物の客観的知識を決めるための質問とGM食品および作物についての消費者の信念を測る質問をした。

 サンプリングされたものの84%は、GM成分を含む食品表示義務化を支持したが、80%がDNAを含む食品の表示義務化も支持した。これは全ての食品に表示を義務化すことと同義である。「我々の研究によると、『GM』という言葉は生物の遺伝的構造を変化させることを意味しており、他の育種技術はそうでないと認識されている」とMcFadden氏が述べた。

ゲノム編集の規制に対する米専門家の意見を調査

 ゲノム編集技術の管理や規制について、米国の専門家(subject matter experts 、SME)を対象に調査した論文が、インドのResearch and Information System for Developing Countriesが発行する「Asian Biotechnology and Development Review」に掲載された。ゲノム編集技術は、突然変異、シスジェニック、またはトランスジェニック技術を介して幾つかの遺伝子をより高速で編集を可能にする。このような新しい試みは、遺伝子工学の規制に課題を投げかけるものである。研究結果によると、専門家はゲノム編集技術を市場に出す前に、何らかの監督や関係者による関与の必要性を認めている。一方、技術の新規性、主要懸念課題、技術に関する期待、規制については、様々の意見があることが分かった。

 主要な意見は、「ゲノム編集技術が農業バイオテクノロジーのための既存のシステムを見直し、改善するための新しい機会を提供する(改善論、adapter view)」「ゲノム編集は、第一世代のバイオテクノロジーよりも緩い規制とすべき(技術向上・規制緩和論、technohype-hyporeg view)」「ゲノム編集は、高速プロセスであり、その開発のスピードにリスク評価や規制システムが対応できない可能性があるのでより大きな注意が必要」──の3つだ。

アジア・太平洋

オーストラリアの農業バイオ評議会、新育種技術の規制監督の原則公表

 オーストラリアの農業バイオテクノロジー評議会(ABCA)は、植物や動物の育種における新育種技術(NBTS)の重要性を認識し、その規制監督上の原則を公表した。 ABCAは、新育種技術を伝統的な植物や動物の育種方法の革新的改善と考えている。声明によると新育種技術利用は、育種家が求める遺伝的変化を、これまでの方法よりも高い精度と効率でできると指摘している。

 声明によると、NBTSを通じて開発した製品の規制監督は、必要があれば、健全な科学的原則に基づいて、リスクに比例する必要がある。NBTSを用いた開発製品の規制監督は、技術革新を促進し、民間部門と公共部門両方の育種家よって、高度な、革新的な育種への取り込みを可能にするように一貫性のあるものである必要がある。

 声明はまた、NBTSを使用して開発された製品の規制監督の明確性の欠如は、オーストラリア農業の革新と経済的利益を妨げることになると強調した。

GM作物が20年間にオーストラリアにもたらした利益に関する報告書

 PG Economics誌のGraham Brookes氏によって書かれた「オーストラリアの遺伝子組換え(GM)作物の導入とその影響:20年の経験」と題する報告書が、CropLifeオーストラリアから発刊された。報告書は、この技術が最初に商業的に利用できるようになって以来オーストラリアの多くの農家が作物バイオテクノロジーを導入し、その生産システムでそれを使用し続けている理由についての洞察を提供している。これは、遺伝子組換え作物の世界的な影響に関連する重要な知見で描かれており、農家レベルの経済的影響や農薬の使用と温室効果ガス(GHG)排出量に関連した環境への影響に焦点を当てている。

ヨーロッパ

感受性遺伝子の不活化により疫病抵抗性を獲得させたジャガイモを作製

 オランダWageningen Universityの研究者は、世界的なジャガイモの商業生産の大きな脅威であるPhytophtora infestans細菌による疫病に対する新たな抵抗性導入法を開発した。

 ジャガイモ疫病に対しては、既に抵抗性遺伝子が同定され、ジャガイモの品種改良に適用されてきた。ただし、P. infestansの個体群の中には、これら抵抗遺伝子を無効にするものが出現している。そこで、Wageningen Universityのチームは、感受性遺伝子(S-遺伝子)の機能を失わせて抵抗性を獲得させる新しいタイプの技術を開発した。このS-遺伝子の転写産物は、植物への感染を助ける植物病原毒とされている。

 研究チームは11株のシロイヌナズナの既知のS-遺伝子を選択し、感受性ジャガイモ品種「Desiree」が有する同じ遺伝子を不活化した。5つの遺伝子を不活性化するとP. infestansのPic99189株に完全な体制をもたらし、第6番目のS-遺伝子を不活性化すると感受性が低下した。

遺伝子組換え作物以外の話題

新ポリオ対策のための植物ベースのワクチン生産の最先端

 英John Innes CentreのGeorge Lomonossoff教授は、英University of Leedsが主導する、生ウイルスを使用しないより安全なワクチン生産のプロジェクトに共同で取り組んでいる。

 University of Leedsの生物学部のDavid Rowlands教授は、Nicola Stonehouse教授とともにプロジェクトを率いている。彼らのやり方は実験室で効果のある安定したワクチンを創製する試みであるが、適切なコストで作ることが課題になっている。「基本的な課題は、ウイルスと同じ蛋白質の殻を構築すること。ワクチンにはウイルスの遺伝子を全く含まないようにする必要がある」と付け加える。このアプローチの問題点は、空のウイルス様粒子(VLP)は、完全なウイルスよりも不安定で、ワクチンを製造するには適していないことである。

 Lomonossoff教授は、植物中でVLPを大量に増殖させるのは、驚くほど簡単かつ非常に効率的であると語る。「VLPの遺伝子を含む細菌を植物に入れるだけで、植物細胞は大量のVLPを生産するようになる。細菌を導入してから、砕いた葉からVLPを採取できるまでの時間は、ほんの数週間だ」と述べる。さらにこの技術はほかのヒトウイルスに汚染されるリスクは低いと付け加えている。

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