国際アグリバイオ事業団 アグリバイオ最新情報【2016年5月】

(2016.06.09 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年5月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

遺伝子組換え食品安全性テスト市場に関する世界的動向および予測

 市場調査ストアのResearch and Marketsで公表された報告書によると、2015年には13.6億米ドルと推定される遺伝子組換え(GM)食品安全性テスト市場は、2020年までに19.9億米ドルに達すると予測されている。 報告書は、「2020年にグローバル・トレンド&予測 - 報告書は、遺伝的形質(スタック、除草剤耐性、耐虫性)、技術(ポリメラーゼチエン反応、イムノアッセイ)、作物と加工食品検査及び地域からみた遺伝子組換え(GM)食品安全性テスト市場―2020年までの世界的動向と予測」と題するものである。

 GMO食品に関する高栄養食品需要、消費者の意識などの要因、GM作物の作成から食品製造に至る新技術革新が市場に影響を与える。報告書は、米国では近代的な技術とGM食品の安全性テストされた広い範囲の使用の利用が増加している。一方、英国は、世界中の国レベルで見るとGM食品の安全性試験に関して最も急成長している市場で、欧州で二番目に高い記録を達成した。

 形質の面では、スッタク形質のものが2014年にはGM食品の安全性試験の市場の先導であり、続いて除草剤耐性と害虫抵抗性のものだった。

 詳細は、以下のサイトをご覧ください。http://www.researchandmarkets.com/research/nv9nxz/genetically

VIB、「植物から作物へ:育種の過去、現在、未来」を発行

 The Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB, English: Flanders Institute for Biotechnology)のファクトシリーズの最新刊「植物から作物へ:育種の過去、現在、未来」では今日我々が作物としているものが様々の植物育種技術を経て開発されたかを述べている。特に、新植物育種技術(New Breeding Technologies 、NBT)に注目している。
 植物バイオテクノロジーの話題というと、遺伝子組換え(GM)作物に関する議論となりがちだ。しかしながら、作物に選択的な遺伝的修飾をほどこすGM技術は、植物を我々のニーズにより良く応えるようにする多くの技術の1つにすぎない。このVIBファクトシリーズは、我々が今日作物としているものが自然界からどのように進化してきたか、特にその中での人間の果たした役割に力点を置いている。
 農業が約1万年前に始まって以来、人間は自分の目的に合うように植物を変えてきた。我々は、植物を選択し、交雑し、ゆっくりと、しかし確実に、より私たちのニーズに会うように変えてきた。また、新しい植物育種技術がでてくると、その技術の必要性、潜在的なリスクや適切な管理規制に関する議論を行ってきた。GMの議論をきっかけに、特定の新しい育種技術、つまりNBTが規制の観点で監視されている。このVIBファクトシリーズは、今まで一般的に受け入れられている方法とNBTがどう違うのかや、従来の伝統的な育種技術よりもどのような利点があるかを説明している。

 詳細は、以下のサイトをご覧ください。
http://www.vib.be/en/about-vib/plant-biotech-news/Documents/vib_facts_series_fromplanttocrop_ENG.pdf

全米アカデミー、遺伝子組換え作物がヒトの健康と環境に有害ではないと確認

 米国科学、技術および医学アカデミーが出した「遺伝子組換え作物:これまでの経験とこれから」と題する報告によると、遺伝子組換え(GE)作物は、従来育種法による作物と人の健康や環境へのリスクの点で差がないとのことである。
 報告書は2年間にわたり、50人以上の科学者によって行われた大規模な研究の結果に基づいている。それには1996年に商業栽培されてから900ものGE作物の研究からのデータを検討したものである。
 報告書の要点は次の通り。
・現在市場にでているGE食品の化学組成についての動物およびその研究では、相当する非GEを食べることに比較して、ヒトの健康および安全に対する高いリスクを引き起こすような差異がないことが明らかになった。
・害虫抵抗性や除草剤耐性作物の使用が農場での植物や昆虫の全体的な多様性を減少させなかった。そしてときには害虫抵抗性作物が昆虫の多様性高めた。
・市販されている遺伝子組換え作物は、これらの作物を採用した農家のための良好な経済成果をもたらした。
・昆虫耐性作物は殺虫剤の薬害を減らすことによって、人間の健康に利益をもたらした。
・開発中の数種のGE作物は、発展途上国におけるビタミンAの欠乏によって引き起こされる失明や死を防ぐためにベータカロチン含有量を高めたコメのように、人の健康に利益をもたらすように設計されたものである。

 調査委員会は、一般市民が報告書の詳細を見て、その結果についてのコメントを提出できるようにするwebsiteを開設した。

 この研究は、Burroughs Wellcome Fund、Gordon and Betty Moore Foundation、 the New Venture Fund及び米国農務省、全米科学アカデミーからの資金支援を得て行われた。

 ニュースリリースは、以下のサイトでご覧ください。
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=23395

WHO / FAO合同委員会、グリホサートのヒトに対する発癌性はほとんどないと結論

 国連食糧農業機関(FAO)の食料と環境への残留農薬に関する専門家パネルと世界保健機関(WHO)の残留農薬に関する核心評価グループの合同会議が2016年5月9-13日にスイスのジュネーブでWHO本部開催された後、2016年5月16日に会議の要約報告が出された。

 残留農薬に関するFAO / WHO合同会議(JMPR)は、食事を介して曝されるヒトに対して、グリホサートが発癌性リスクをもたらす可能性はほとんどないと結論づけた。報告書は、グリホサートについて多くの生物で遺伝毒性に関する様々な試験を大規模に実施されていると述べている。それらの全体の証拠によると、ヒトの食事を通しての暴露に相当する2000 mg / kg体重のグリホサートおよびそれに相当する調合剤を経口投与しても、ヒトに対する遺伝毒性を評価するのに適切なモデル哺乳動物で行われた研究では、全く遺伝毒性がなかった。

 先の完全な評価以来新しい研究結果が出た時点でJMPRが再評価を行うべきとした委員会の勧告に従って、ダイアジノン、グリホサート、およびマラチオンについてJMPR事務局議題に置かれていたものである。

 報告者全文は、以下のサイトからダウンロードできる。

http://www.who.int/foodsafety/areas_work/chemical-risks/jmpr/en/

南北アメリカ

University of Wisconsin–Madison校の研究者ら、ニンジンの全ゲノムを解読

 University of Wisconsin–Madison校のPhil Simon氏が率いる科学者チームは、Nature Geneticsにニンジンの全遺伝子コードを発表した。ニンジンのゲノムは、9染色体に32,000を超える遺伝子が配置され、害虫や病害抵抗性コード、カラフルなカロテノイドおよび他の形質をコードしている。

 「ニンジンは作物として良い評価を得ており、栄養価、特にビタミンAとして重要である。我々はそれが栄養の重要な供給源であることを知っている。また、遺伝子を深く掘り下げることができるようになり、作物を改良する道具立てを加えることができたことなる」と、Simon氏は述べた。

 現代のオレンジ色のニンジンは、過去に白で、野生種で見つかったものである。最初のニンジン栽培は1100年前に中央アジアで記録され、その色は、紫と黄色であった。オレンジ色のニンジンは、ヨーロッパで1500年代に登場した。最初の栽培ニンジンが紫と黄色であったことをこの研究結果から説明はできないが。色と味に関与する遺伝子には関係がないので味で選ばれたものでないことが示された。遺伝子(Y)が、白ニンジンおよび黄色またはオレンジのものとの間の差の原因であると同定され、その変化がカロテノイドの蓄積をもたらすことが明らかとなった。

新たに発見された幹細胞経路がトウモロコシおよび主要作物の収量を増加

 Cold Spring Harbor Laboratory (CSHL)の生物学者は、植物がその幹細胞の増殖の調節機構を説明する重要な発見をした。新たに発見された経路は、植物の成長の先端に位置する幹細胞のニッチ(成長点、meristem)に対して末端(原基、primordia)から信号を送り出す。

 CSHLのDavid Jackson教授が率いるグループは、成長点の下部にある細胞に「葉からの制動信号」を同定した。これを受容体FEA3と命名した。また、受容体と相互作用するリガンド、FCP1と呼ばれるタンパク質の断片を発見した。Jackson教授のチームはFEA3が機能不全のトウモロコシを研究した。

 成長点におけるFEA3受容体が全く機能できない場合には、「FCP1に対して全く反応しない」とJackson教授は述べている。葉から成長点に制動信号FCP1が送られても受容できないので幹細胞がどんどん増殖する。植物は、あまりにも多くの幹細胞を作り、あまりにも多くの新しい種子を生じるのでそれを植物体は必要な資源を供給できなくなる。

 チームは、FEA3遺伝子の「弱めた対立遺伝子」をもつ植物にFEA3受容体の機能を軽度に障害した。成長点からの制動信号を適度にすることにより幹細胞の適度な増加することでトウモロコシの実を野生のものよりもかなり大きなものにした。トウモロコシの実はより多くの子実の列があり、野生のものよりも50%以上の収量増加があった。

ヨーロッパ

EUでBTトウモロコシへの抵抗性害虫が発生しなかった理由

 スペインは、欧州連合(EU)で唯一、Btトウモロコシを大規模に連続的に栽培し続けている国で、1998年以来Btトウモロコシの栽培を続けているが、 Btトウモロコシの主な標的害虫であるアワノメイガに抵抗性を有するものはでていない。スペインのCentro de Investigaciones Biológica (CIB)のPedro Castañera氏と共同研究者は、その理由を調査する研究を行った。

 開発または抵抗を遅らせることが期待される要因を評価するために、進化モデルを使用して研究した結果、低い初期導入率と、MON 810 Btトウモロコシで176種を置き換えたEUの政策決定が、抵抗性発現進化を遅らせた鍵であることが示された。モデルの結果はまた、避難措置を現在の90%で続ければ、20年以上北東スペインで抵抗性の発現なく、持続的に使用できることが示唆された。論文は、PLos Oneに掲載された。

英国作物生産協議会、グリホサートとGM作物に反対するグリーンアライアンスに反論

 植物、動物、食品および飼料に関するEU常任委員会において、2016年6月30日に期限切れとなるグリホサートの利用ライセンスの更新に関する議論が行き詰まろうとしている。欧州議会議員(MEP)の46人で構成されるグリーンアライアンスがその更新に反対しているからだ。

 アライアンスが問題にしているのは、による、グリホサートにはヒトに対する発癌性がありえないとする欧州食品安全機関(EFSA)の意見が、未発表の規制の研究(企業が提出したもの)に基づいていたことで、欠陥があると指摘している。

 これに対して英国作物生産協議会(BCPC)の会長であるColin Ruscoe博士は、欧州議会議員のKeith Taylor 氏と接触した上で、EFSAの結論は既に総合EUの規制当局によって検討されたものであり、リスクも本質的な危害も考慮してあるとして、彼らのスタンスに反論している。

 BCPCはまた、アライアンスが遺伝子組換え(GM)技術およびその関連技術に反対していることにも反論している。Ruscoe博士は、最近の米国科学・工学・医学アカデミーが、30年かけて900報の研究を調査し、GM食品がヒトの健康と環境に悪影響を与えた証拠は認められないとした報告を引用し、「この報告書を考えると、私はアライアンスが、作物の遺伝的改変への思想的反論をどう正当化し続けるのかを知りたい」と述べている。

研究

BT毒素は、ミツバチの生存、花粉消費、または学習に影響がない

 中国農業科学院(CAAS)からの科学者たちはCry1Ie 毒素がBt作物の非標的昆虫であるミツバチの生存、花粉の消費量、およびミツバチの嗅覚学習に影響を与えないことをJournal of Economic Entomologyに報告した。

 CAASの科学者Ping-Li Daiと共同研究者は、制御された実験室条件で働きバチをCry1Ie毒素(20、200、または20,000 ng/ ml)の様々の濃度にさらした。ポジティブ対照として、ハチを昆虫の神経毒イミダクロプリドの亜致死濃度に曝露した。

 結果によるとCry1Ie毒素が若年ミツバチの生存、花粉の消費量、または学習機能へのリスクがないことが示された。一方、イミダクロプリドに曝露したミツバチは、Cry1Ie群と比較し、学習行動や花粉の消費量に変化を示した。

アジアのアワノメイガの寄生虫は、BT毒素に感受性がない

 中国農業科学院(CAAS)と中国農業大学の研究者らは、Cry1Ac蛋白質を持つBtトウモロコシがアジアアワノメイガに寄生するMacrocentrus cingulumに対して与える影響を調べた。

 間接的なバイオアッセイの結果は、寄生率、繭の重量、宿主当たりの寄生子孫の数は、M. cingulumが寄生している Cry1Ac感受性 アワノメイガにCry1Acを給餌すると有意に減少するが、M. cingulumの生命に関する指標には影響がなかった。これらの結果は、Cry1Ac感受性アワノメイガに現れた有害な影響は、Cry1Acが宿主に直接およぼしたものである。これに対して、で直接バイオアッセイでは、M. cingulumにCry1Acを給餌してもしなくても生命に関する指標に差は認められなかった。これらの知見は、M. cingulumは、Btトウモロコシ圃場で遭遇するレベルのCry1Acには、感受性でないことを示している。

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