国際アグリバイオ事業団 アグリバイオ最新情報【2016年2月】

(2016.03.10 16:51)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年2月】の日本語訳を掲載したものです。

世界

FAO事務局長、途上国の農業技術の改革に課題山積との認識示す

 「発展途上国の家族経営農業者に農業の最新技術が確実に届くようにすべき。これからの重要課題である気候変動や人口増加などに挑戦するためにやらなければならないことは沢山ある」と、国際連合食糧農業機関(FAO)事務局長Jose Graziano da Silva氏がFAO主催の国際シンポジウム「持続可能な食料システムと栄養における農業バイオテクノロジー」の開会に当たって述べた。

 Graziano da Silva事務局長は、飢餓を根絶し、あらゆるタイプの栄養失調をなくし、持続可能な農業を実現するための様々の試案や道具立ての必要性を強調した。 「我々は、小規模家族経営農業者を含む農業者に、バイオテクノロジー、知識、技術革新は手に入れられるものだ、という視点を失わせてはならない」と参加者に向けて語った。「我々は、このような家族経営農業者にこれらのことが利用できないような障壁を取り除く手段を見つけなければならない」とも付け加えた。

 シンポジウムは、2月15日から17日に、イタリア、ローマのFAO本部で開催されたもので、広い範囲のバイオテクノロジーに焦点を当てた。例えば、収量増加、家族経営農業者に利益をもたらす作物、家畜、魚、木材の生産性の改善などをもたらす課題などだ。約500人の科学者、政府の代表者、市民社会、民間セクター、学界、農業者の団体や協同組合関係者が3日間の行事に参加した。

鉄と亜鉛含量の高い遺伝子組換えイネを開発

 フィリピン、コロンビア、インドネシア、米国、オーストラリア、日本の科学者が参加する学際研究グループがバイオテクノロジーで強化した鉄(Fe)と亜鉛(Zn)を多く含むイネの開発に成功した。

 遺伝子組換えイネは、ヒトの細胞が吸収可能な白米1グラム当たり高レベルの鉄(15.7mg)および亜鉛(45.7mg)を含有している。通常の白米のグラム当たりの含有量は鉄2mgおよび亜鉛16mgであり、イネ遺伝子プールでの通常の育種でも鉄13mg、亜鉛28mgにするのが限度。これらはヒトの推定平均必要量(EAR)の30%を満たすに過ぎない。

 研究では、イネのニコチアナミン合成酵素遺伝子とダイズからのフェリチン遺伝子を使用して高い微量栄養素を含むものを育種した。これらの遺伝子をイネの品種IR64に導入し、これを他の一般に使われている品種に交配した。この品種は、FeとZnの欠陥が広く起こっている南アジア、東南アジアで最も広く栽培されているものである。

米国の植物学者ら、遺伝子組換え技術を用いれば食糧需要を満たせるとの認識示す

 1000人以上の非営利企業、学術機関、および民間機関に所属する米国植物学会(American Society of Plant Biologists、ASPB)の科学者らは、遺伝子組換え(GM)食用作物に関する一般大衆の疑念が、次の緑の革命を妨げていると述べた。最近の請願書で、米国のDonald Danforth Plant Science CenterとCarnegie Institution for ScienceおよびメキシコのLaboratorio Nacional de Genomica para la Biodiversidadの6人の研究者が、遺伝子組換え技術の安全で効果的な利用の科学に基盤をおいた指針を支持する説明がなされている。

 この請願書は、遺伝子組換え(GM)技術を支持する個々の科学者が組織化して行った最初のもので、1400人以上が署名した。署名者は、ASPBの「GM技術は、食糧安全保障と農業による環境への悪影響を減少する有用な手段である」とする遺伝子組換え作物に関する表明文書を支持する専門科学者である。

 請願書の署名者は、知識豊富なコンソーシアムを代表するもので、これまでに植物育種、植物の成長と発展の根底にある分子的および遺伝的メカニズム、および環境ストレスに対する植物の応答などを含む1万7600以上の科学論文を発表してきた科学者たちである。請願書の目標は、農業に遺伝子改変技術を使用することの安全性と有効性に関して科学者のコミュニティに同意が形成されていることを一般大衆に示すことである。

アフリカ

ウガンダ初のGMジャガイモ野外圃場試験で疫病に極めて強い抵抗性示す

 2015年10月から2016年1月に行われた初の遺伝子組換え(GM)ジャガイモ野外圃場試験が、ウガンダ国立農業研究機関(NARO)のKachwekano Zonal Agricultural ResearchとDevelopment Institute(KaZARDI)で完了した。

 国際ジャガイモセンター(CIP)から提供された高耐性遺伝子組換えポテト「Desiree」12品種と、「Victoria」の1品種は、同じ品種の非GM品種に比べて極めて高い抵抗性を示した。遺伝的形質転換を用いて、野生種(Solanum bulbocastanumとS. venturii)から3種の抵抗(R)遺伝子を農業生産者が好む品種に移したところ、結果は非常によかった。抵抗性品種は様々なものが存在するが、農業生産者や消費者に好まれていない。殺菌剤なしのジャガイモのこの最初の結果は、アフリカの農業生産者に大幅収穫損失と生産コストを削減するための重要な一里塚となる。

 ウガンダでは、ジャガイモ疫病起因する損失は60%にまで達し、作物を保護するために15回もの殺菌剤を散布する必要があった。約30万軒の小規模農業生産者が自給および所得創出のためにジャガイモを栽培している。疫病による損失は、ジャガイモからの収入の10%から25%になっている。

アフリカ開発のための新パートナーシップの専門家がインドを視察

 アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)のアフリカ・バイオセーフティー専門家ネットワーク(ABNE)は、Michigan State University (MSU), the Energy と Resources Institute (TERI), Bejo Sheetal Biosciences Foundation (BSBF), と インドのSouth Asia Biotechnology Centre (SABC)とともに2016年1月17日から27日にかけてインドのニューデリーやハイデラバードなどを視察した。視察旅行は、アフリカのブルキナファソ、ガーナ、ケニア、ナミビア、ナイジェリア、スワジランド、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビアからの14人が参加した。

 視察旅行の主な目的は、インドのバイオテクノロジーとバイオセーフティの開発、特にBtワタやその他の食用作物など研究開発計画にあるもの規制経験情報を共有することだった。また、アフリカの生物安全規制当局、政策立案者がインドの規制当局や政策立案者や業界代表と対話する機会を提供することを目的としたものだった。インド・アフリカ協力の円卓会議では、MSUのKarim Maredia教授、NEPAD庁ABNEのSilas Okobusia 博士と Moussa Savadogo博士がアフリカ諸国の農業バイオセーフティ規制制度の概要を紹介し、インドとのパートナーシップをとれる領域について概説した。インドからは、各種会議での主要課題が、環境省、森林と気候変動、TIFAC、TERI、SABC、食糧農業のためのインド評議会(ICFA)、バイオテクノロジー(IOB)の研究所の理事、また、ニューデリーのRasi HyVeg Seeds社、ジャルナのBeejSheetal社およびMahyco社、ハイデラバードのMaharashtra社、Advanta Seeds社、JK AgriGenetics社を含む民間会社によって述べられた。

南北アメリカ

「犠牲死生残」戦略は遺伝子組換え植物の旱魃耐性を劇的に向上

 米Purdue Universityの研究者らは、蛋白質PYL9を高レベルに生成するように遺伝子改変したイネと、モデル植物であるシロイヌナズナで、旱魃耐性が高まることを発見した。新しい研究は、植物の旱魃下での植物の生残機構と旱魃からの植物の保護機構に新しい視点を提供するものである。

 深刻な旱魃条件下では、遺伝子組換え植物は、古い葉の死(老化:セネッセンス)を引き起こし、種子や芽のための資源を節約して、「犠牲死生残:die and let live」という生き残り戦略をとる。旱魃の間、植物の応答は、植物の成長、分化およびストレスに対する反応を調節するホルモンであるアブシジン酸(ABA)により制御される。PYL9を過剰発現するように植物体を変えることでABAに非常に敏感して、ストレス応答性プロモーターの蛋白質が、植物中PYL9発現のレベルを制御することが分かった。この変化は、より良く深刻な旱魃ストレスに耐えるようにシロイヌナズナとイネを変える。 PYL9遺伝子組換えイネは、野生型イネにおける10パーセントの生存率と比較して2週間の旱魃の後に50%の生存率を持っていた。

 この研究は、しかし、収量試験をしていないので生存率の上昇が旱魃条件下での遺伝子組換え植物の収量が良好な成長条件の下での従来のイネ品種のそれに等しくなることを意味するものではないと、筆頭著者Yang Zhao氏は述べている。「我々はまだ本当に旱魃の問題を解決することはできていない。しかし改善することができる。深刻な旱魃で、悪い収量でもヒトの命をつなぐ点では、何もないよりは良いだろう。」と述べた。

GMスイートコーンはトウモロコシ葉枯細菌病に対して弱いわけではない

 除草剤グリホサート(GR)に対する抵抗性を発現する遺伝子組換え作物が米国で商業化され、広く栽培されるようになって20年になる。米国全体に遺伝子組換えコーンが導入されたことでグリホサートおよび遺伝子組換え形質が近年のコーンの病害、例えばトウモロコシ葉枯細菌病(GOSS'S Wiltdisease)のように葉枯病あるいは全身萎凋病を引き起こすものがコーン全体に感受性が高くなるとの申し立てが出てきた。

 しかし、USDA-農業研究サービス(ARS)からの新しい研究によるとグリホサート処理したスイートコーンには病害に対する感受性の高まりは実証できなかった。

 研究チームはGR +Bt導入遺伝子の有無のさまざまの生鮮市場にあるハイブリッドスイートコーンを試験した。いずれの系統もトウモロコシ葉枯細菌病(GOSS'S Wiltdisease)の細菌を接種してグリホサート適用の前または後の病害を調査した。

 接種した植物の約半分は、遺伝子組換え形質の有無に関わらずトウモロコシ葉枯細菌病の症状を示した。また、グリホサート散布時期と病害発生にもトウモロコシ葉枯細菌病の程度や発生頻度に関係はアプリケーションに対する疾患接種のタイミングもトウモロコシ葉枯細菌病の発生率や重症度に影響がなかった。
遺伝子組換え系統へのグリホサートの適用は、実際には除草剤で処理されていないものと比較して収量を増加させた。収量指標は、市場性ある実の数や量、また実際の実の数を含めて測定したものである。
上記の説明は、ホルミシス(低濃度の毒物や放射線量が効果的に働く現象)であるといえるかもしれない。すなわち低濃度或いは亜致死量の毒物が植物の成長を促進する現象といえよう。これは他の研究では、グリホサート処理した植物で認められている。

アジア・太平洋

CHARU MAYEE氏が「MAJHA SHETI SANMAN PURASKAR」を受賞

 インドのボリウッドの有名な俳優Nana Patekar氏とMarthiニュースチャンネルABP Majhaが設立したNaam財団は、インドの農業革新に大きく貢献したことを称え、Majha Sheti Sanman Puraskar氏とCharu Mayee博士に賞を与えた。Nana Patekar氏と共演俳優のMakrand Anaspure氏、ABP Majha、Marathiニュースチャンネルが主催する行事でMayee博士に賞が授与された。

 Mayee博士は疫学の分野で多大な貢献をし、2002年にはBtワタのインドでの評価と商業承認に尽力した。Mayee博士はインドのMarathwada農業大学の副理事長、ICAR中央コットン研究所所長、インド政府の農業委員会、農業科学者募集取締役会長(ASRB)の理事長を務めた。現在、New Delhiにある南アジアバイオテクノロジーセンター(SABC)の会長である。

フィリピンのGM規制指針改訂に当たり第4回公開協議を開催

 フィリピン科学技術省(DOST)のバイオセーフティに関する国家委員会(NCBP)は、「現代バイオテクノロジー利用による植物およびそれに由来する産物の研究とその開発、取り扱いおよび使用、国境を越える移動、環境へ解放とその管理に関する規則および規制」と題した省庁共同卓会議による原案作成のための第四回公開協議をQuezon市にある農務省(DA)本部で2016年2月9日に開催した。政府の農務省(DA)、環境及び天然資源省、保健省、および地域と内務省が共同で最高裁判所の以前のDA行政命令第8号の指針の無効判決に沿った新しい原案の策定を行った。

 省庁共同卓会議の技術作業部会の議長Jaime Montoya博士は、「指針の内容はあらゆる分野からのコメントを受け入れるように解放されている」と述べた。一方、フィリピンのMaize Federation社のRod Bioco氏は、遺伝子組換えトウモロコシの栽培の開始を中断しないように早急に省庁共同卓会議を通過させるように政府に要求した。「次の収穫は、もうすぐである。我々農業生産者は、遺伝子組換え(GM)技術の恩恵に非常に満足している。」と述べた。

 他の3回の公共協議も2016年1月にフィリピンの様々の島群における関係者により開催された。公文書は、当面2月23日に部門幹事によって署名されることを目標としている。

生物工学研究者MOHAPATRA博士がインド農業研究評議会を指揮する

 インドにおいて分子遺伝学とゲノミクスの著名な科学者であるTrilochan Mohapatra博士が、農業研究および教育省(DARE)長官、インド農業研究評議会(ICAR)局長に就任した。ICARは、State Agricultural Universities(SAUs)を含むユニークな農業研究システムを形成し、インド全域に広がっている作物研究に特化した世界最大のネットワークである。

 Mohapatra博士は、以前植物バイオテクノロジーに関するICAR国立研究センター(NRCPB)で研究者として働いており、国立稲研究所(旧CRRI)所長、およびNew Delhiのインド農業研究所(IARI)所長兼副理事長だった。
Mohapatra博士は、分子マーカーアシスト選抜を通じてイネゲノムの配列決定および最初の高収量白葉枯病に抵抗性Basmati品種の開発に多大な貢献をした。彼はまた、トマトのゲノムの物理的マッピングに関与していた。彼は、多くの書籍を書き、査読月国内および国際的な科学誌に145以上の研究論文を発表している。

ヨーロッパ

政府委託研究によると母乳中にグリホサートを見いだせず

 リスク評価のためのドイツの連邦工科大学(BFR)が委託した研究では、除草剤グリホサートの痕跡はヒトの母乳中に検出されないことを確認した。 BFRはヨーロッパの研究期間の委託でLower SaxonyとBavariaから集めた114母乳サンプルを2つの独立した高感度分析方法で試験した。

 「結果は、消費者が不必要に残留農薬に感情的な議論を行っているかを専門的な科学研究を行うことで混乱を起こさせたいことが重要かが示されたことになる」と、BFRのAndreas Hensel学長は述べた。

 BFRの委託研究は母乳16試料でグリホサートを発見したとの2015年6月のレポートへの対応として行ったものである。BFRは、母乳へのグリホサートの移入がないことを確認したものである。これらの知見は、現在、欧州レベルでのグリホサート承認の更新のための科学的根拠を形成するEFSAの結論に組み込まれている。

GMカメリナが魚油に代わる脂肪酸の第一供給源となる可能性
 英国のUniversity of East Anglia(UEA)で行われた研究では、遺伝子組換え(GM)油種子作物からの油が有益なオメガ3脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の主な供給源として魚油を置き換えられる可能性が示された。アマナズナ属のカメリナ・サティバという植物の種子から取れるカメリナオイルは食用油として利用されているが、遺伝子組換えによりオメガ3の油脂を産生できるようにした。

 UEAの研究チームは、哺乳動物(モデルとしてマウスを使用して)がオメガ3を吸収し、蓄積できることを確認するために、英Rothamsted Research社が開発したGM Camelina sativaからの油で強化した飼料を摂取したマウスを研究した。体内の様々な器官におけるEPAのレベルを調べ、肝臓、脳、および筋肉組織中の脂肪酸の組織濃度を試験した。彼らはまた、体が脂肪を調節する鍵となる遺伝子の発現に対する効果を試験した。

 「マウスを10週間、遺伝子操作したCamelina sativaや魚油からのEPAのサプリメントと一緒に、西洋食事に似た対照飼料を与えた – これが有益な結果が見られるようにするために十分な時間である。」と研究リーダーであるUEA's Norwich Medical School のAnne-Marie Minihane研究教授が言った。「我々は、遺伝子操作された油は、油を含む魚を食べると同じように、肝臓に効果のあるEPAの生物学的に利用可能な供給源であることがわった」とも述べた。

HIVに対する薬剤生産の場としてのイネ

 中和抗体および抗ウイルスレクチンを含む蛋白質殺微生物剤は、その成分が手頃なコストで大量に製造される場合、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を減らすのに役立つ。

 スペインのUniversity of LleidaのAgrotecnicoセンターのEvangelia Vamvaka氏が率いる科学者グループは、HIVに対する中和活性を示す抗ウイルスレクチンgriffithsin(GRFT)を発現した。GRFTを遺伝子組換えイネ(Oryza sativa)の胚乳で生産できるかどうかを検討した。研究チームは、また、GRFTの一段階精製プロトコルを確立した。これは、安価な下流処理の大規模なプロセスを容易にすることにつながる。

 OSGRFTは、大腸菌で生産されたGRFTと同等の有効性を有することが判明した。さらなる試験で粗製と純粋OSGRFT両方がHIVに対して強力な活性を示し、粗抽出物は、ヒト細胞株に毒性がなく、これを最小限の精製処理で殺微生物剤として投与することができることを確認した。結果は、イネがGRFTのための安価な生産手段として開発できることを示した。

遺伝子組換え生物の安全性研究に新たな洞察

 欧州連合(EU)の資金提供によるGMOのリスク評価と証拠の伝達(GRACE)と呼ばれるプロジェクトは、遺伝子組換え(GM)食品/飼料の給餌研究を詳細に実施した。プロジェクトチームは、90日と1年間の給餌研究をGMトウモロコシ品種MON810を使用して行った。チームは、他のGM品種の組成と比較して、90日間の給餌試験のルーチンの食品/飼料全体での結果には、MON810の安全に関する追加情報となるようなものは、見いだせなかった。

 結果はまた、ラットにMON810を与えても何らの悪影響もなかったことが示された。これらの追加調査結果は、食品/飼料として全体を与える試験が、GM作物のリスク評価の追加された科学的な価値を提供することができるとの科学的論拠を支持するものとなった。ただし対象情報が最初の分子、組成、表現型または/及び農学的特性について分かっている場合のことである。

研究

遺伝子組換えダイズの長期栽培が土壌微生物叢に与える影響

 遺伝子組換えダイズ(Glycine max L.)は、このマメ科植物の世界での栽培面積の約80%を占め、グリホサート耐性形質を持つものが大部分を占めている。一方、微生物叢に対する遺伝子組換え作物の影響が、しばしば提起されている。

 ブラジルUniversidade Estadual de Maringaと、Leticia Carlos Babujia氏が率いる研究者たちは、従来種とそれとほぼ同等のRR遺伝子組換型の品種を長期圃場栽培し、土壌の化学的、物理的および微生物学(微生物叢)の特性、および穀物収量を調査した。試験は、異なる条件で、ブラジルの二箇所で行った。物理的、化学的、および古典的な微生物学的パラメーターだけでなく穀物生産に大きな違いは、サイト間で観察されなかった。

 メタゲノミクスは、微生物の分類学的および機能的存在量の違いを示した。Proteobacteria、FirmicutesおよびChlorophytaは、遺伝子組換え品種区で高かった。Proteobacteriaが多いことはProteobacteriaとAcidobacteriaの比が高いことに寄与するので、これは優れた土壌の肥沃度の生物指標である。

 土壌微生物叢に遺伝子組換品種が影響することは確認されたが、穀物収量には差がなかった。これは恐らく全ての試験区で分類学的および機能的微生物多様性に関連した緩衝能力が高いことに起因すると考えられる。

作物バイオテクノロジー以外の話題

致死性ウイルスに対抗するように豚の遺伝子コードを変更

 英University of Edinburgh、英Roslin Instituteの研究者は、高度な遺伝学的手法を用いて、非常に高い伝染性アフリカ豚コレラ抵抗性のある豚を生産した。新しく育種された豚は、通常イボイノシシとブッシュ豚に見られる遺伝子を持っている。養殖豚が感染するとすぐに悪化して死に至るが、イボイノシシとブッシュ豚は、観戦しても症状を示さない。

 研究は、RELAと呼ばれるアフリカ豚コレラウイルス感染に関連するブタの遺伝子の一つに焦点を当てた。遺伝子は、壊滅的な影響を示す過剰反応する免疫システムを起動する。イボイノシシとブッシュ豚は違った形のRELA遺伝子をもっているので、研究者たちは豚の遺伝子コードの塩基を一つずつ変更した。そのRELA遺伝子の5文字を変更することにより、イボイノシシにある対立遺伝子に変換した。研究者たちは現在、遺伝的変化が病気に対する豚の抵抗性を改善しているかどうかを試験を実施している。

遺伝子組換え蚊がブラジルでジカウイルスに対抗

 米Intrexon社は、その子会社Oxitec社を通じてブラジルのピラシカバ市の市役所と、「友好的熱帯シマカ(Aedes aegypti)プロジェクト」の延長について合意した。遺伝子組換え(GM)蚊が、デング熱、チクングニア、ジカウイルスの第一の媒介体である熱帯シマカ(Aedes aegypti)の個体数を効率よく制御するという、これまでの結果を受けてのものだ。2015年にブラジルで発生し、世界中に広がったジカウイルスは、先天性欠損(小頭症)の急激な増加に関連するとされている。ブラジルの小頭症で生まれた子どもの数は現在3500人以上に上昇している。

 このプログラムでは、OxitecはPiracicaba で30万人以上の人々を保護する能力を持つ新しい蚊の生産設備を始動した。ブラジルの国立バイオセーフティー委員会(CTNBio)が全国に向けての放出を承認した後ピラシカバ市のある地区は、Oxitec社と直接提携する世界初の自治体となった。 2015年4月には、GM蚊が放出された後、年末までに82%の野生蚊幼虫の減少が記録された。世界で毎年100以上の国と約400万人に影響を与えるデング熱、チクングニア、ジカウイルスなどの疾患が広がりとともに、多くの侵襲的な昆虫種同様、熱帯シマカの生息域は拡大している。今日、ブラジルは、西半球におけるデング熱の最も高い発生率となっており、チクングニアおよびジカウイルスが、それぞれ2014年と2015年にブラジルに登場し、健康上のリスクとなっている。

バイオテクノロジー情報センター(BICS)から

フィリピンとタイのBICSがリーダーシップ研修に参加

 フィリピンの東南アジア地域の農業・バイオテクノロジー情報センターの大学院研究と研究センター(SEARCA BIC)とタイのバイオテクノロジーとバイオセーフティ情報センター(BIC)は、2016年1月18日から26日にタイHua HinのDusit Thaniホテルで開催された戦略的計画と効果的な草の根組織形成に関するにCORNELL ALLIANCE 主催のScience Asia SCIENCEリーダーシップコースに参加した。

 リーダーシップのコースはそれぞれの国での技術革新へのアクセスを促進するための前向き広報計画を策定するために参加者を訓練した。とりわけフィリピンとタイBICSのスタッフは、この中の48人で、草の根キャンペーンと強化策のための戦略的枠組み、計画を策定し、草の根のイベントを組織する事の訓練を受けた。参加者は、自分の国での共通の課題、解決策、および経験を他者と共有した。上記の他の参加者は、バングラデシュ、中国、インドネシア、マレーシア、米国、ベトナムから来た。

 CORNELL SCIENCE ALLIANCEは米国ニューヨーク州イサカのコーネル大学に拠点をおく活動である。これは、食糧安全保障を強化、環境の持続可能性を改善し、世界的に生活の質を高める手段として、科学技術革新へのアクセスを促進することを目指している。詳細については、以下のサイトをご覧下さい。Cornell Alliance for Sci

文献備忘録

遺伝子組換え作物の問題と課題に関するISAAAのビデオを発行

 ISAAAは、遺伝子組換え作物の問題と課題に関するビデオを発行した。これは、11カ国の署名な科学者、管理者、広報担当者がバイオテクノロジーと遺伝子組換え作物の導入、受容に関する様々な問題や課題に対処した際の考え方や個人的経験を集めたものである。これらは、政策立案者の理解の欠如、社会的受容に関する問題、および技術の利点を損なう批評などが含まれている。課題を克服するための提言も示唆されている。

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