国際アグリバイオ事業団 アグリバイオ最新情報【2016年1月】

(2016.02.10 17:11)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年1月】の日本語訳を掲載したものです。

世界

バイオテクノロジーの業界団体であるBIOが名称を変更

 世界30カ国のバイオテクノロジー企業、学術機関、国や自治体のバイオテクノロジー関係機関を代表する業界団体のBIO(Biotechnology Industry Organization、バイオテクノロジー産業機構)がその名称をバイオテクノロジーイノベーション機構(Biotechnology Innovation Organization)と変更した。BIOによると名称の変更は、機構のメンバーが治療、燃料、食糧の分野で達成した著しい進歩と画期的な技術革新を反映させるためである。

 「私たちのメンバーは、地球上で最も革新的な人々の集まりである。バイオテクノロジー企業および研究機関に所属し、未来を様々の違った視点で見る科学者や起業家であふれている。そして、我々こそが歴史の流れを変える革新の担い手である」とBIO会長兼最高経営責任者(CEO)であるJim Greenwood氏は述べている。さらに彼は、「我々が実施するは全て、私たちが住んでいる世界を向上させることに焦点を当てている」と付け加えた。

パン用コムギのゲノム配列決定完了

 国際コムギゲノムシーケンシングコンソーシアム(IWGSC)は、世界で最も広く栽培されているパン用コムギ全ゲノム配列決定の完了を報告した。プロジェクトでは米Illumina社のシーケンサーで読んだ短い配列を、NRGene's DeNovoMAGICソフトで組み上げた結果に基づき、パン用コムギ品種Chinese Springの全ゲノムアセンブリを行った。広く利用可能なこの新しいデータで、作物改良の世界的な研究が加速されることが期待される。

 全ゲノムアセンブリの情報は、塩基配列データに基づく物理的なマップを組み合わせることで正確に位置が決められ、それぞれのコムギ染色体上に順序付けられた遺伝子、制御因子、染色体のマーカーを高品質に定めてあるのでコムギの育種家に重要なツールを提供することになる。

 「IWGSCとそのパートナーによって作られたこの新しいコムギゲノム配列は、世界で最も重要な作物の1つの遺伝子の青写真を理解する上で重要な貢献である」とこのプロジェクトの研究者の1人であるCurtis Pozniak氏が述べた。「これでコムギの適応、ストレス応答、害虫抵抗性、および収量向上に最も影響力のある遺伝子を同定する上で極めて大きな新しい情報源を研究者に提供することになる」。

2020年に向けて、世界のGM作物の品揃えを予測

 欧州委員会の共同研究センター(JRC)の研究者は、2015年に市場出ると予測される遺伝子組換え(GM)作物の世界的な品揃えを分析した2008JRCの研究を更新した。Nature Biotechnologに発表された論文によると、2008年から2014年までの品揃えを記載しており、食品、飼料および工業分野での中期革新技術を記載の目的を明らかにしてGM作物開発の世界的な状況を示している

 Claudia Parisi、Pascal Tillieと Emilio Rodriguez-Cerezoの各氏が執筆した研究も、GM作物の品揃えにおける途上国の役割を分析している。恐らく多くの要因が複合すると予想されるが、よりよい品質や特性ある作物が品揃えに加わり、耕作地向けの数種の作物(飼料や工業的利用)と農業用の品種が予見可能な将来の商業品種として優位を占めると予測している。彼らはまた、発展途上国、特に、インド、中国、ブラジル、そしてアフリカの開発品が商業フィールドに参入する意欲を示してくると注記している。

食品やバイオ燃料の需要が世界の農業バイオ市場を牽引

 Transparency Market Research (TMR)に発表された「農業バイオテクノロジー市場:2013年から2019年にかけての世界産業分析、市場の大きさ、占有率、成長、動向と予測」と題する研究によると、世界の農業バイオテクノロジー市場は、2012年に15.3億米ドルであったが、2013年から2019年にかけて年率9.5%で成長し、2019年には倍増すると予想している。

 報告書によると、成長している世界の人口は、遺伝子組換え(GM)作物の需要増につながる。従来の燃料の埋蔵量の枯渇によるバイオ燃料の需要が増加し、これがさらなる農業バイオテクノロジー市場の後押しとなる。また、より高い収量、病害虫への抵抗、長い貯蔵寿命、および高い栄養価などのGM作物の利点が広く先進国と途上国の両方を受け入れられるようになると述べている。

 報告書によると、北米はGM作物の速い導入が行われた結果、世界の農業バイオテクノロジー市場で優位になっている。また、欧州は、米国とブラジルから動物の飼料向けに相当量のGM作物を輸入し、消費していると注記している。

アフリカ

ケニア規制当局、今月中にGM作物の解放利用を承認

 ケニアの行政機関であるバイオセーフティ当局(NBA)は、遺伝子組換えトウモロコシ種子の解放利用承認を行う見通し。申請者は、ケニア農業・畜産研究機関(KALRO)とアフリカ農業技術財団で、NBAのWilly Tonui長官によると遺伝子組換えトウモロコシの決定は1月に行われる予定だが、遺伝子組換えワタは2月の決定になるだろうとのことである。

 ケニアは、遺伝子組換えトウモロコシの栽培と輸入を禁止して、南アフリカを含む主なる輸出業者を地元市場から締め出すことで頻繁に穀物不足に陥っていた。そこで、科学者は、遺伝子組換え種子を農家に出荷し、作物の生産性を向上させるように後押しをしている。

南北アメリカ

3つの特性を持つ除草剤耐性GMテンサイを開発

 2つの種子会社の科学者たちは、より良い雑草防除作用のある遺伝子組換え(GM)テンサイを開発している。この新品種は、glyphosate、glufosinateとdicambaの農薬3剤に耐性がある。このニュースは、ドイツに基盤を置くKWS Saat社の研究者であるAaron Hummer氏が2015年12月に開催されたテンサイ関連の学術会議で報告した。Hummel氏によると、3形質を組合わせたスタック品種は、いずれかの薬剤に耐性のものが出ても他の薬剤で除去されるので除草剤抵抗性雑草の拡散を防ぐことができる。

 新品種は、KWS Saat社と米Monsanto社によって開発されている。試験と開発は、今後3年間実施され、8年から10年後に市販される予定である。

米USDA-APHISGEがハイコヌカグサの規制緩和請願を公開レビユー

 米国農務省動植物検疫局(USDA-APHIS)は、米Scotts Miracle-Gro社と米Monsanto社が請願していた農薬glyphosateに耐性のハイコヌカグサ(creeping bentgrass)の規制緩和請願を公表した。請願書は2016年1月8日から3月6日まで公開レビューにかけられる。

 遺伝子組換え(GE)ハイコヌカグサに入っているCP4 EPSPS蛋白質は、Roundup Readyトウモロコシやワタ、ダイズ、トウモロコシ、テンサイ、キャノーラ、アルファルファなどのglyphosate耐性作物で発現する蛋白質と類似のものである。これらの作物は既にレビューが終了し、USDA- APHISによって非規制承認が付与されている。

1980年代以降に干ばつなどで穀物の収穫が減少

 カナダのMcGill University とthe University of British Columbiaの新たな研究によると、干ばつと猛暑により穀物の収穫が最近の数十年の間に平均9%から10%減少した。この影響は、北米、ヨーロッパおよびオーストラリアの先進国で最も大きかった。

 研究者は、甚大な気象災害の国際データベースに含まれている177カ国の16の穀物について、各国の生産データを分析した。研究では、北米、ヨーロッパおよびオーストラリアの、より技術的に高度な農業システムでの生産レベルが平均は19.9%下落しており、これは世界平均の約2倍であった。

レンズ豆ゲノムのドラフトアセンブリが公表

 カナダ、サスカトゥーンのUniversity of Saskatchewan (U of S)の研究者らは、CDC Redberryに基づいてレンズ豆ゲノムのドラフトアセンブリを公表した。これは、U of Sの植物学教授でレンズ豆の育種家であるBert Vandenberg氏が開発したよく知られている小さな赤いレンズ豆の品種である。

 「レンズ豆のゲノムアセンブリは、この作物を理解するための重要な情報を提供することになる。さらに重要なことは、育種法を改善し、品種の開発を加速するゲノムツールの開発につながる」と国際レンズ豆の配列決定の先導者であり、U of Sの教授であるKirstin BETTしが述べている。Saskatchewan Pulse Growers (SPG)と称する農民グループの支援の元にレンズ豆のゲノムの配列は、品種改良のツールとして育種家に提供される。

FDA、Simplot社のInnate potatoesの第2世代の評価完了

 米国食品医薬品局(FDA)は、米J.R. Simplot社の「Innate」という商標を付けたジャガイモの第2世代について、食品および飼料としての安全性の評価を完了した。ラセットバーバンクという品種の第2世代に相当するこのジャガイモは、他のジャガイモや現在市場にあるジャガイモ由来の食品や飼料と組成、安全性、およびその他の関連する要素で大きく異なるではないとFDAは結論付けた。

 Innate potatoesは、ジャガイモの栽培者、加工業者、および消費者に4つの利点がある。すなわち打ち傷や黒い斑点の減少、アスパラギンの減少、疫病の病原体に対する抵抗性;そして、冷蔵能力を向上である。これらの利点は、野生と栽培種のジャガイモ由来の遺伝子を導入させることで達成された。

 安全性諮問は、自主的にSimplot社から出され、直後に米国農務省も同じジャガイモを規制緩和した。これらについての連邦政府の承認は、徹底的な技術審査と米国とヨーロッパでの有数のジャガイモの研究大学の支持を集めたパブリックコメントを経て行った。

アジア・太平洋

パキスタンのパンジャブ種子協議会、新たな作物品種を承認

 トウモロコシ3種、コムギ、グリンピース、落花生、ソルガム、種なしミカン、緑豆、およびナタネの各1種の新しい作物品種は、2016年1月7日にパキスタンの農業院で行われた第54回パンジャブ種子協議会で承認された。会議は農務長官Muhammad Sheharyar Sultan氏が議長を務めた。

 会議は、新たな作物品種の栽培承認のために招集された。パンジャブ農務長官は、また、Btワタ19種、非Btワタ2種とマンゴー11品種のレビユーための小委員会を開いた。種子協議会の事務局長が、この委員会を主催し、徹底的に分析した後、地域農業長官に勧告を提出した。

 Cotton Ginners協会(PCGA)のNawab Shahad Ali Khan会長は、国が自給自足で農産物を作るように承認された品種を農家が急ぎ栽培をするように促した。彼はパンジャブ州でのワタの生産が害虫に対して有効な耐性を持っているBt品種の栽培によって大幅に増強されることを熱望した。

ヨーロッパ

タンポポのラテックスが、害虫の食害から根を守ることを確認

 タンポポは、多くの庭師によって嫌われる雑草だが、これらの植物は、その苦味のラテックスを出すことで多くの害虫から防御している。ドイツJenaにあるMax Planck Institute、化学生態学部とスイスUniversity of Bernの科学者たちは、ラテックス中の単一の化合物が、食欲旺盛なヨーロッパコフキコガネの幼虫からタンポポの根を保護することを実証した。

 科学者たちは、タンポポの根に苦いラテックスが最高濃度で存在することを発見した。タンポポラテックスの成分の分析は、セスキテルペンラクトンtaraxinic acid β-D-glucopyranosyl ester (TA-G)と同定した。これがヨーロッパコフキコガネ幼虫の成長阻害になることを明らかにした。精製された物質の生態学的相当する量を人工幼虫の食餌に添加すると、幼虫はかなり食害が減少した。

 研究者は、TA-Gの生合成の前駆体の形成に関与する酵素とその遺伝子を同定することに成功し、TA-Gの濃度を下げた植物を作成できた。TA-G濃度の低い植物体は、ヨーロッパコフキコガネの幼虫による食害を受けた。様々のタンポポ系を同じ庭に植えた実験で、TA-Gをより多く生産する植物体がヨーロッパコフキコガネ幼虫によって攻撃されても高い生殖適応度を維持していることを明らかにした

VIBの研究者が根の成長に関する新規メカニズムを発見

 ベルギーVIB/UGentのKun Yue氏、Tom Beeckman氏、Ive De Smet氏らを含む国際研究チームが植物の根系を形成する新たな細胞分裂制御系、PROTEIN PHOSPHATASE 2A-3 (PP2A-3)を発見した。この結果は、高い作物終了に繋がる根系構築を改善する新しい技術につながるものである。

 植物の根は成長、分岐し、水や養分をとるために土壌中に入り込む。しかし、根の成長および発達を制御するメカニズムの知識は限られている。シロイヌナズナでの研究でDe Smet氏のチームは、既知の根系の制御系であるARABIDOPSIS CRINKLY 4 (ACR4)と結合し、相互作用を行う蛋白質を発見した。彼らの研究は、ACR4を基質とするPP2A-3を同定したことだ。ACR4と共に、PP2A-3は、細胞分裂および根系構築を制御するハブの一部であることが示された。

 根の発達を支配するメカニズムをより良く理解することは、より良い根系発達をもたらす新作物品種を作成するための基礎として役立つものである。

研究

ヒマワリの酵素がタバコの農業形質を改善

 Geranylgeranyl pyrophosphate synthase (GGPS)は、多様な構造を持つイソプレノイド生合成代謝物重要な酵素である。韓国University of Science and TechnologyのSandeep Kumar Tata氏のチームは、ヒマワリ(Helianthus annuus)からの葉緑体標的GGPSをタバコ(Nicotiana tabacum)で発現させた。

 GGPSを発現する遺伝子組換えタバコは、野生型と比較して速い成長、早期開花、種子莢の数増加、より高い種子収量を示した。HaGGPS-組換え体のジベレリンレベルも高く、表現型からは、ジベレリン含量が高いことが示された。しかし、以前にジベレリン生合成遺伝子を発現する遺伝子組換え体で報告された表現型欠陥はなかった。

 この研究の結果は、作物でのGGPS発現が望ましい農業形質を生じ得ることを示唆している。本研究では、商業的に価値のあるバイオマテリアルやバイオエネルギーを提供する植物バイオマスの迅速な生産に役に立つ可能性が期待される。

パーティクルガンによる遺伝子組換えコムギの共形質転換の分布を確認
 中国Jiangsu Normal UniversityのYonghua Han氏とその共同研究者は、共形質転換された高分子量gluteninサブユニット遺伝子と選択可能なマーカーを持つ45系統の形質転換コムギにおける導入遺伝子座の分布を蛍光in situハイブリダイゼーションを使用して特定する研究を行った。

 研究者は、微粒子銃媒介(パーティクルガン)による導入遺伝子の遺伝子座は、ゲノム全体にランダムに分布し、個々の染色体の様々な位置に取り込まれていることを観察した。遠位染色体領域に局在する導入遺伝子は、最小限となる傾向があった。別々のプラスミドでの導入遺伝子は高い割合で同じサイトに取り込まれ、7系統のみが2または3個の遺伝子座に取り込まれた。これらの遺伝子座は、後世代において分離しない傾向があり、後代で遺伝子組換え系統からの選択マーカーを排除することは困難だった。また、3種の遺伝子組換え系統は、再編成された染色体とリンクしており、これは微粒子銃媒介導入遺伝子組込みおよび染色体再配列との間に密接な関係がることを意味するものと判明した

作物バイオテクノロジー以外の分野から

カリフォルニアサトウマツのゲノム配列を決定

 米University of California Davisの科学者が率いる研究チームは、博物学者John Muir氏によって「針葉樹の王」と命名されたカリフォルニアの伝説的植物のサトウマツのゲノム配列を決定した。

 サトウマツゲノムは、ヒトゲノムの10倍の大きさで、これまでに配列決定された最大のものである。象徴的な、絶滅の危機にさらされている樹木の保存する助けになる貴重な情報を提供するものであると期待される。

 サトウマツ(世界で最も高い樹種の1つ)は、カリフォルニア州独自のものだが、五葉マツ類発疹さび病とキクイムシの被害および干ばつによって存在が脅かされている。新たに配列決定されたサトウマツの塩基配列は、それまで大きいと考えられていたテーダマツの1.5倍のゲノムを持っている。これら2つの新しい配列は、マツの今後の研究およびその応用の基盤となるものである。

 サトウマツのゲノムは、一般に公開され、マツ参照配列のWebサイトから自由に入手できる。

文献備忘録

ISAAAブログ:2015年における作物バイオテクノロジーの動向

 ISAAAは、2015年の組換え作物動向ニュースのTOP10を発表した。これは、主にFacebookなどのウエブサイトから集めたもので、2015年に人々が何に興味を惹かれたかを示すものである。

例えば、農業生産者が認めるGM作物、研究の進歩、GMOの安全性、承認されたGM品種などのニュース一覧化されている。どうかゆっくり座って、見逃しているかもしれない興味あるニュースをご覧ください。

http://isaaablog.blogspot.jp/2015/12/crop-biotech-updates-trending-stories.html

ISAAAインフォグラフィック:過去19年にわたる世界の遺伝子組換え作物

 ISAAAは、遺伝子組換え作物の栽培や輸入をしている国を示すインフォグラフィックマップを出版した。過去19年間で、60カ国以上の先進国と途上国が遺伝子組換え作物の栽培か輸入を行った。2014年に28カ国で栽培され、39カ国以上が輸入した。
マップは、以下のISAAA ウエブサイトからダウンロードできる。

http://www.isaaa.org/resources/infographics/19yearsofbiotechcrops/19%20Years%20of%20Biotech%20Crops%20in%20the%20World.pdf

ISAAAの2015年の活動報告書を出版

 ISAAAは、2015年度年次報告書を出版した。世界の人々のためにISAAAが2015年に行った努力と貢献を報告書にまとめた。ISAAAは、作物バイオテクノロジーは、農業生産者、消費者、そして社会全体にたいして最も差し迫ったニーズに作物バイオテクノロジーが答えを提供できるという希望の声、知識、技術の強化を世界に向けて発信し続けている。
報告書は、以下のサイトからダウンロードできる。

http://www.isaaa.org/resources/publications/annualreport/2015/default.asp.

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