世界最速で、ウイルスベクターワクチンを第3相臨床試験入りさせた英Oxford大学と英AstraZeneca社(画像:123RF)
画像のクリックで拡大表示

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発が急ピッチで進められている。新型コロナワクチンに適したモダリティは何か、開発期間短縮化の影響はあるか、懸念材料だった接種後増悪は今どうなっているか、ワクチンの有効性はどの程度期待できるのか――。開発現場の取材を通じ、見えてきた4つの課題の現状を検証した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発が、前代未聞のスピードで進められている。世界保健機関(WHO)の調べでは、前臨床段階以降にあるワクチンの開発品は約160品目(2020年7月14日時点)。7月末までに、ヒトへの投与を行う臨床試験が始まる開発品は、そのうち26品目。さらに、有効性を検証するための最終段階の大規模臨床試験(第3相臨床試験)に至る開発品は、そのうち5品目にまで増えている(いずれも2020年7月15日時点の本誌調べ、表1)。

表1 世界で臨床試験入りしている主な新型コロナワクチン(2020年7月15日時点、取材を基に編集部で作成)
画像のクリックで拡大表示

国内企業も2021年春までには複数が臨床入りへ

 海外勢では、英Oxford大学と英AstraZeneca社のチンパンジーアデノウイルスベクターにスパイク蛋白質遺伝子を搭載したワクチン(開発番号:ChAdOx1 nCoV-19/AZD1222)を筆頭に、中国Sinovac社の不活化ワクチン(PiCoVac)、中国Sinopharm社の不活化ワクチンが第3相臨床試験入りしており、2020年7月末には、米Moderna社のmRNAワクチン(mRNA-1273)、米BioNTech社と米Pfizer社のmRNAワクチン(BNT162b1/BNT162b2)も第3相入りする。

 海外勢に後れを取ってはいるものの、国内勢もワクチン開発を本格化させている(表2)。

表2 国内で企業が開発中の新型コロナワクチン(2020年7月15日時点、取材を基に編集部で作成)
画像のクリックで拡大表示

 アンジェスは、2020年6月末、開発中のDNAプラスミドワクチン(AG0301-COVID19)の第1/2相を国内で開始した。同ワクチンは、スパイク蛋白質を抗原とし、非開示のアジュバントを添加したものだ。

 塩野義製薬は、グループ会社のUMNファーマが独自に確立した、バキュロウイルス・昆虫細胞系を用いた蛋白質発現技術(BEVS)を用いて、スパイク蛋白質を抗原とする組換え蛋白質ワクチンを開発中。現在は、幾つかのワクチンについて、共同研究先の国立感染症研究所で動物モデルでの免疫原性の評価を実施中で、2020年内の臨床試験入りを目指す。

 第一三共は、独自に確立したmRNA医薬の基盤技術を活用し、mRNAワクチンを開発している。同社はかつて、中東呼吸器症候群(MERS)に対してmRNAワクチンを開発していたことがあり(臨床試験は未実施)、その知見を生かして今回もmRNAワクチンの開発を決めた。抗原蛋白質や薬物送達システム(DDS)、アジュバントを添加するかなどは開示されていないが、既に開発候補品を決定し、今後非臨床試験を実施する段階で、2021年3月までに臨床試験をスタートさせる方針だ。

 KMバイオロジクスは、日本脳炎やジカ熱などで経験や技術を蓄積してきた不活化ワクチンを開発中。既に、国内で単離された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がアフリカミドリザル腎細胞由来細胞(Vero細胞)でよく増えることを確認済みで、製造には自社で保有するVero細胞のマスターセルバンクを活用する。現在は培養法、不活化法、精製法などの詳細な検討を進めており、2021年3月までに臨床試験入りしたい考えだ。

 アイロムグループのIDファーマは、センダイウイルスベクターに抗原蛋白質の遺伝子を搭載した、ウイルスベクターワクチンを開発している。同社は過去に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を対象に、Gag蛋白質遺伝子を搭載したセンダイウイルスベクターを治療用ワクチンとして開発しており、海外で第1相を実施した経験もある。現在は、抗原蛋白質や投与経路などを検討しながら試作ワクチンの免疫原性を評価しているところで、最短で2021年3月から臨床試験を開始する意向だ。