(画像:123RF)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界中で医療崩壊のリスクが顕在化している。世界経済も大恐慌以来で最大級の落ち込みとなる見通しで、各国政府が対応に追われている。未曾有の事態に、新型コロナウイルス感染症の治療薬とワクチンの一日も早い開発が求められている。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)征圧への道
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 米国や欧州、中国の臨床試験データベースによれば、2020年4月20日時点で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬(中国の中医も含む)やワクチン、検査技術などの臨床試験は計1300本。先行しているのは、治療薬、中でも抗ウイルス薬の開発で、既存薬の転用と新薬の探索の両輪で開発が急ピッチで進められている。そのうち、既存薬の転用については、複数の臨床試験の結果が数カ月以内に得られる見通しだ。

4/27号特集「選別が本格化してきた新型コロナ治療薬」
(1)レムデシビルの評価は5月にずれ込み、数カ月以内に試験結果が続々判明へ
(2)国内でもスクリーニングが本格化、多数の候補を評価できる体制整備を

抗ウイルス薬で有望視されるレムデシビル

 これまでのところ、ヒトへの投与経験がある既存薬からの転用で、COVID-19を対象に臨床試験が進んでいるのは、主にレムデシビル、クロロキンやヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビルなど。また国内では、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬のファビピラビルや、帝人ファーマの気管支喘息治療薬のシクレソニド、日医工の急性膵炎治療薬のナファモスタットなども治療薬候補に挙げられている。

 そのうち一定以上の規模の臨床試験の結果が近く得られそうなのがレムデシビルだ。米Gilead Sciences社は、中等度の入院患者(1600例)を対象としたものと、重度の入院患者(2400例)を対象としたもの、2本の非盲検ランダム化比較試験を実施しており、重度患者を対象とした臨床試験は既に患者の組み入れを終えている。同社は2020年5月にも、2本の臨床試験に組み入れられた計1000例(内訳は不明)の患者について、データを公表する予定で、こうしたデータなどを踏まえて、承認申請の可否を判断するものとみられる。

 一部では、Gilead社の2本の臨床試験に参加し、100例以上にレムデシビルを投与した米国の病院で、ほとんどの患者が重度だったにもかかわらず、大部分で症状が改善。1週間後に退院できたとの報道があった。また、米国立衛生研究所(NIH)やGilead社の研究グループは、2020年4月15日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染させたアカゲザルにレムデシビルまたは溶媒を投与したところ、レムデシビル投与群で、肺ウイルス量が減少したなどとする研究結果を、bioRχiv誌に報告している。こうしたことから、臨床試験の結果が有望視されているところだ。もっとも、Gilead社の臨床試験はいずれもプラセボ対照ではないことには留意が必要だ。

 レムデシビルに関しては、中国China-Japan Friendship Hospital(中日友好医院)の主導で、軽度から中等度のCOVID-19の患者(308例)と、重度のCOVID-19の患者(452例)を対象とした、2本の二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が行われており、2020年4月には結果が判明するはずだった。しかし、中国での感染が抑え込まれたことから、登録基準を満たす患者がほとんどいなくなり、軽度から中等度に対する臨床試験は一時停止されている。また、重度に対する臨床試験も、237例しか患者登録できないまま終了しており、当初の予定と異なり、これらの臨床試験から得られる結果は限定的なものになりそうだ。と同時に、時々刻々と感染地域や感染者数が変化する状況下で、地域を限って臨床試験を実施する難しさが浮き彫りになった。

表1 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に臨床試験が進む主な抗ウイルス薬候補
一般名「商品名」企業現在の適応症(開発対象疾患)既存の適応症への作用機序臨床試験の見通し
レムデシビル米Gilead
Sciences社
(エボラ出血熱)RNAポリメラーゼ阻害薬(注射薬)中国での臨床試験は計画通り進んでおらず、Gilead社による2本の臨床試験の結果の一部が2020年5月にも得られる見通し
ロピナビル・リトナビル「カレトラ」米AbbVie社HIV感染症プロテアーゼ阻害薬(経口薬)欧州や米国で臨床試験が進んでおり、2020年中にも複数の結果が得られる見通し
クロロキン「Resochin」(日本未承認)ドイツBayer社マラリア感染症など抗炎症薬(経口薬)数本の臨床試験が進んでおり、2020年から2021年にかけて結果が得られる見通し
ヒドロキシ
クロロキン
「プラケニル」フランスSanofi社全身性エリテマトーデスなど抗炎症薬(経口薬)欧州や米国で臨床試験が進んでおり、2020年中にも複数の結果が得られる見通し
ファビピラビル「アビガン」など富士フイルム富山化学など新型または再興型インフルエンザウイルス感染症RNAポリメラーゼ阻害薬(経口薬)富士フイルムが実施する日本の臨床試験は早ければ2020年6月にも結果が得られる見通し。米国も同様だが第3相臨床試験が必要になる
ナファモスタット「フサン」など日医工など急性膵炎などプロテアーゼ阻害薬日本で臨床研究が実施される見通し
シクレソニド「オルベスコ」帝人ファーマ気管支喘息ステロイド(吸入薬)日本で臨床研究が実施される見通し
世界保健機関(WHO)や関連学会、臨床試験登録サイトなどの情報を基に日経バイオテク編集部で作成(2020年4月21日時点)。このうち、現状で米国や欧州で複数の臨床試験が積極的に実施されているのは、レムデシビルとロピナビル・リトナビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキンだ

クロロキンには心臓の副作用報告相次ぐ

 一方で、レムデシビルと同様、多数の臨床試験が実施されているクロロキンやヒドロキシクロロキンについては、副作用も報告されている。フランス国家医薬品安全庁(ANSM)は2020年4月10日、COVID-19の患者に投与された治療薬候補について、既に知られているものなど約100例の副作用を報告した。中でも、ヒドロキシクロロキン単剤または抗菌薬のアジスロマイシンとの併用で、43例に心臓の副作用が認められたと明らかにした。クロロキンに関しては、ブラジルの研究グループも、2020年4月16日、臨床試験で高用量のクロロキンに抗菌薬のセフトリアキソン、アジスロマイシンを併用した患者において、高頻度でQT延長症候群が認められたとmedRχiv誌で報告している。

 クロロキンやヒドロキシクロロキンは、米Trump大統領も期待感を示し、2020年3月末には米食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)を出しているが、副作用の懸念が高まり、若干つまずいた格好だ。現在も、欧州、米国をはじめ複数の国・地域で、多数の臨床試験が続けられており、数カ月以内には結果が出ると考えられるが、フランスやブラジルからの報告は、既存薬であっても副作用のリスクも念頭に評価を行う重要性について、改めて警鐘を鳴らしたといえそうだ。

 主に日本で治療薬候補に挙がっている、ファビピラビルについては、日本に続いて米国でも臨床試験がスタートした。先行する日本の臨床試験は、重篤ではない肺炎を合併したCOVID-19の患者に対する単盲検ランダム化プラセボ比較試験。当面の目標症例数は96例で、症例数に変更が無ければ、2020年6月末にも終了する予定だ。富士フイルム富山化学は、結果次第で日本で承認申請する見通し。ただ、米国での承認申請には先ごろ開始した臨床試験に加え、第3相臨床試験が必要になるもようだ。

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