LancetとNew England Journal of Medicine(NEJM)という一流医学誌が6月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する論文を相次いで撤回した。いずれも共著者の1人であるSapan Desai医師が設立した米Surgisphere社が世界中の医療機関から収集したCOVID-19患者のデータを分析したものだったが、第三者から疑問の声が上がり、検証を求められた著者がデータを検証できないとして撤回した。

 データベースに登録された患者数と、実際に国などが公表している患者数のつじつまが合わないことなどが判明しており、Surgisphere社によるデータのねつ造とみられている。Surgisphere社のデータを基に、COVID-19のオンライン診断支援ツールを共同開発していたアフリカ救急医療連盟(AFEM)という団体は、公開していたツールの使用を中止するよう声明を出し、「今回の事態を恥ずかしく思う」と述べている。現在、Surgisphere社のウェブサイトは閉鎖され、Desai氏のメールアドレスに連絡しても返事は無い。

 問題は、リアルワールドデータ(RWD)を利用した研究が広がりつつある中、こうした意図的なデータのねつ造を見抜けるかということだ。新型コロナなので査読が甘くなったとの指摘もあるが、Surgisphere社は「クライアントとの契約」などを理由に査読者に対して生データなどの開示を拒んだ。医療機関などがデータ事業者に医療データを提供する場合は同様の契約を結ぶことが多いという。「今回はすぐに発覚して取り下げになったからよかったけれど、巧妙にやられると見抜くのは難しいかもしれない」という声も出ている。