(画像:123RF)
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 血小板は、骨髄中の多核細胞である巨核球(メガカリオサイト)の細胞質から産生される、核を持たない血球成分だ。活性化すると接着因子などを表面に発現して血小板同士が凝集し、傷口を塞ぐなどの機能を果たす。血小板は止血に必要不可欠で、不足すると脳や臓器の出血を起こしやすくなる。造血器疾患や化学療法、造血幹細胞移植、外科手術などによって血小板減少をきたした場合、血小板製剤が投与される。

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CiRAの江藤浩之教授
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CiRAの江藤浩之教授

 血小板は血液製剤の主成分で、出血を止めるために手術でも不可欠だ。しかし冷凍保存はできず、常温の保存期間はわずか4日間程度と短い。国内では献血者数が減少傾向にある中で、人工的に血小板を製造することが医療現場から強く望まれていた。そこでiPS細胞から製造する血小板製剤を実用化するため、メガカリオン(Megakaryon Corporation)が設立された。京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)の江藤浩之教授らの研究成果が基になっている。iPS細胞を材料にすることで感染リスクが抑えられるほか、献血に頼らず安定供給が可能になる技術として期待されている。

 技術の具体的な内容は、iPS細胞から造血前駆細胞を誘導し、レンチウイルスベクターでc-MYC遺伝子とBMI1遺伝子、BCL-XL遺伝子を導入して不死化巨核球細胞へと分化させ、分裂と成熟をコントロールできる巨核球細胞株を作製する。それを確保しておき、必要に応じて巨核球の細胞質を分裂させることで血小板を得ることができる。

 iPS細胞を活用した再生医療等製品は腫瘍化のリスクが製品化の大きな壁となっている。しかし血小板は細胞核を持たず増殖する能力が無いこと、さらに通常の血小板製剤と同様に、製品に放射線を照射することから、腫瘍化のリスクは排除されている。

 メガカリオンは2022年6月2日、他家iPS細胞由来HLAホモ型血小板(MEG-002)について、1例目の患者への投与を完了したと発表した。患者は既に退院し、安全性に問題は見られなかったとしている。血小板減少症に対する安全性や有効性を評価し、早ければ2023年中にも企業治験を終え、承認申請に臨みたい考えだ。同社の赤松健一社長は、「第1/2相臨床試験が順調に進めば、2023年末までに治験を終了させることができる。承認申請が可能となれば、早くて2025年にも実用化できるのではないか」と見通しを示している。