ハンチントン病は、遺伝性の神経変性疾患であるポリグルタミン病の1つ。4番染色体のハンチンチン(HTT)遺伝子のエキソン1に存在するシトシン・アデニン・グアニンの繰り返し配列(CAGリピート)が異常に伸長することで起きる常染色体顕性遺伝病だ。進行性の不随意運動や精神症状、行動異常、認知障害といった症状が見られる。

 国内の有病率は10万人に1人程度。一般に、自力で日常生活を送るのが困難になるほど症状が進行するまでには、発症から10年以上かかるといわれる。

 発症の原因は完全には解明されていない。ただ、ハンチントン病患者では、CAGループの異常伸長によって、mRNAへの転写時などにDNAがループ状にたわみ、非相補的な塩基対を含む、ヘアピン構造のslipped DNA構造が形成されやすい。

 その後、slipped DNA構造にミスマッチ修復蛋白質が作用し、不完全な修復が起きることで、CAGリピートが短縮するよりも、伸長する傾向が強くなると考えられている。CAGはグルタミンをコードするため、ハンチントン病では、CAGリピートからアミノ末端のポリグルタミン鎖が長い異常なHTT蛋白質(変異型HTT蛋白質)が産生される。それが凝集体を形成し、神経細胞の変性や脱落を導くと考えられている。

 治療では、不随意運動や精神症状に対して、対症療法として薬物治療が行われるが、今のところ根本的な治療法は存在しない。国内外で、変異型HTT蛋白質のmRNAを標的とした核酸医薬(アンチセンス)や、HTT遺伝子の発現を制御する人工miRNAをアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに搭載した遺伝子治療などの開発が進められている。また、in vitro、in vivoの研究では、低分子化合物によってCAGリピートを短縮させたとの成果も上がっている。