生物の基本単位の細胞を生きたまま使うことなく、遺伝子のDNA塩基配列情報を基にして、蛋白質を合成する方法。合成には、DNAの塩基配列情報をRNAの塩基配列情報に変換(転写と呼ばれる)し、転写されたRNA(mRNAと呼ばれる)のRNA塩基配列情報を基にリボソーム(RNAと蛋白質の複合体)にてアミノ酸を順次連結(翻訳と呼ばれる)する、という一連の反応が必要。この反応は「セントラルドグマ」と呼ばれる。

 この反応に必要な一連の物質は細胞内にそろっているので、この細胞から抽出した液体成分(画分)を用いると、生きた細胞丸ごとが無くても、蛋白質を合成できる。翻訳機構を解析するための実験系として開発され、その後、蛋白質を合成する反応系としても利用されている。この画分には、リボソームやtRNA、アミノアシル化tRNA合成酵素、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、翻訳終結因子など数十種類以上の物質が含まれる。 抽出の原料となる細胞は、大腸菌、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽、昆虫細胞など。大腸菌については、必要な可溶性蛋白質を遺伝子組換えで調製して用いる「再構成型」の無細胞蛋白質合成系が20年ほど前に実用化された。