Acute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)は、肺に体液が貯留することで酸素を正常に取り込めなくなる呼吸不全の一種。重症肺炎や敗血症、外傷などによって、肺で過剰な炎症が誘導され、肺胞や毛細血管が傷害されることで起こる。

 診断・鑑別では、2012年に発表されたベルリン定義が参考にされる。同定義では、ARDSについて、(1)明らかな誘因や呼吸器症状の出現から1週間以内に発症する、(2)低酸素血症が認められる、(3)胸部X線やコンピューター断層撮影(CT)で両側の肺に異常な影がある、(4)心不全が原因とは考えられない──を満たすものとしている。

 治療では、酸素吸入や人工呼吸器による呼吸補助が行われる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるARDSでは、患者の血液を体外の人工肺で酸素化して患者の体内に戻す体外式膜型人工肺(ECMO)も利用され、一定の有効性が確認されている。呼吸補助と並行して、ARDSの誘因となる基礎疾患の治療も行う。

 今のところARDSに対して確立した薬物療法などは存在しない。ただ、COVID-19によるARDSに対する抗炎症作用や免疫制御作用を期待して、間葉系幹細胞(MSC)などの臨床試験が複数進められている。