網膜色素変性(網膜色素変性症)は、光受容体として働く蛋白質であるロドプシンなど多様な遺伝子変異によって、網膜の視細胞が変性、消失することで視力が低下し、失明に至る進行性の疾患。視細胞は、暗い場所での光の認識や視野の広さなどに関わる桿体細胞と、網膜の中心部である黄斑に多く分布し、主に色覚などに関わる錐体細胞の2種類に大別されるが、網膜色素変性では、桿体細胞が障害されることが多い。指定難病の1つで、国内の患者は2万人を超えるとみられる。

 今のところ、網膜の機能を回復させたり、進行を確実に止めたりする確立した治療法は存在しないため、対症療法として、ビタミンAを内服したり、低視力者用の補助器具を使用したりする。海外では死亡胎児由来の網膜を移植する臨床研究が実施され、安全性や一定の有効性が認められているものの、十分なエビデンスは確立していない。

 現在、国内外で、光感受性蛋白質遺伝子などを搭載したウイルスベクターによる遺伝子治療が開発されている他、網膜を電気刺激し、視覚情報の電気信号が脳に伝達するのを補助する埋め込み型の人工網膜(医療機器)などの開発が進められている。また、厚生労働省は2020年6月に、他家iPS細胞由来の網膜シートを同疾患の患者に移植する臨床研究を了承。理化学研究所や大日本住友製薬、神戸市立神戸アイセンター病院が協力し、臨床研究が進められる予定だ。