合成生物学(Synthetic Biology)は、組織、細胞、遺伝子といった生物の構成要素を部品と見なし、それらを組み合わせて生命機能を人工的に設計したり、人工の生物システムを構築したりする学問分野のこと。従来の分子生物学では、生物を個体から組織、細胞、分子、遺伝子へと細分化し、その機能を理解しようという解析的なアプローチが取られてきた。それに対し合成生物学では、分子生物学などで蓄積された知見を生かしながら遺伝子を設計し、目的物質を生産するための代謝経路を構築し、それが機能する細胞や生物システムを作り出すという、構成的なアプローチを取る。

 合成生物学は、機能性物質の生産などへの応用が進められている。従来、機能性物質の多くは、植物などから抽出されるか、化学合成されてきた。ただ、植物からの抽出では、抽出できる量が微量であるために生産効率が低くかったり、天候など自然的要因の影響を受けたりする。また、化学合成では、石油を利用するため、環境に対する負荷が高く、合成可能な天然由来成分の種類も限られるという課題がある。合成生物学を応用し、遺伝子などを人工的に設計した微生物や細胞などで機能性物質を生産すれば、これらの課題が解決できると期待されている。