原子間力顕微鏡(AFM)は、走査(スキャン)によってカンチレバー探針(プローブ)と試料(サンプル)とを力学的に接触させ、溶液中の生体分子をナノメートル(nm=10Å)の分解能で直接観察できる顕微鏡。真空中での観察である電子顕微鏡や、観察対象が蛍光輝点のみである蛍光顕微鏡とは異なり、生体分子そのものを「生きた」状態で観察できる。

 高速AFMは、従来型のAFMに比べ、画像取得に必要な時間を数百分の1に短縮・高速化した装置。1枚の画像取得に要する時間は従来型のAFMでは数分以上を要していたが、高速AFMではミリ秒程度の短時間で行える。そのため、生体分子の反応や構造変化をリアルタイムで観察できる。

 この高速AFMを実現するためには、スキャンの高速化とプローブの微小化、高速制御回路、ソフトウエアの開発が必要だった。金沢大学の安藤敏夫特任教授らが1993年にAFMの高速化に着手し、2008年に高速AFMを完成させた。生命現象の解明に寄与している。スキャンを高速化するとプローブが試料に接触して壊してしまったり、分子の動きを阻害してしまうなどの悪影響が出やすくなる。高速化とともに、この相互作用を低侵襲にすることが重要な開発課題だった。現在では、生体分子計測研究所(茨城県つくば市)がサンプルスキャン型とプローブスキャン型の高速AFM装置を製品化している。