人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)は、一度分化した細胞を人為的に初期化して得られる多能性幹細胞のこと。

 受精卵は、あらゆる細胞へ分化できる多能性を持っている。同様に、受精卵が卵割を始めた直後の胚盤胞から細胞を取り出して作られる胚性多能性幹細胞(ES)も多能性を持つ。しかし、受精卵が幾度も分裂を繰り返し、皮膚や血液、神経などに分化してしまうと、細胞は多能性を失い、ごく限られた種類の細胞に分化するか、同じ種類の細胞として増殖するだけになる。

 この常識を覆し、一度分化した細胞でも人為的に初期化できることを証明したのが、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授(当時)だ。2006年8月、山中氏らはマウスの皮膚の線維芽細胞に4つの遺伝子を導入して初期化し、ES細胞と同様の多能性を持ったiPS細胞ができると発表。2007年11月には、ヒトの線維芽細胞からiPS細胞を作製できたことを公表した。こうした実績が評価され、山中氏は2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 iPS細胞はあらゆる分化細胞から樹立できることから、再生医療の細胞ソースとして期待されている。そのため、「iPS細胞ストック・プロジェクト」など、国内外で臨床向けに他家iPS細胞を樹立・提供する取り組みが進められている。