糸状の菌糸で生活する微生物。一般的にカビと呼ばれる。核を持つ真核生物で、核を持たない細菌とは異なる。真核生物は、生物の3分類の1つで、ヒトや動物、植物も含まれる。

 糸状菌は、土壌や空気、水中など様々な環境中に存在する。ヒトなど動物、植物の病原体になる糸状菌もある一方、味噌や醤油、日本酒などの発酵食品や、抗生物質などの医薬品の生産に用いられる有用微生物でもある。19世紀に微生物の純粋培養法が確立され、有益な物質の生産に広く糸状菌が利用されるようになった。抗生物質のペニシリンやセファロスポリンなど、酵素のセルラーゼやプロテアーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼなど、それに有機酸やアルコールなどの生産に糸状菌が用いられている。目的物質の生産性向上や特性の改良に、糸状菌の遺伝子組換え技術が貢献している。

 海に囲まれ環境中の生物の多様性が大きいとされる日本では、2000年以上前から発酵食品に糸状菌を利用してきた。糸状菌の仲間である麹菌Aspergillus oryzaeは、2006年10月に日本醸造学会大会にて日本の国菌に認定された。伝統的な発酵食品が豊富であることは、日本のバイオテクノロジーの強みの1つとされる。