原子番号16、分子量約32のイオウ(硫黄)元素を含む化合物。イオウ元素は、自然環境、食物、生体に豊富にあり、抗酸化や多様な生理活性に関わることが知られている。

 東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章教授らは、イオウ含有アミノ酸のシステイン(CysSH)に、さらにイオウが付加されたシステインパースルフィド(CysSSH)などのイオウ化合物(活性イオウ分子種)が代謝で生成し、生体内に多量に存在することを見いだした。CysSSHを合成する新規酵素として翻訳関連酵素cysteinyl-tRNA synthetase(CARS)を同定し、特にミトコンドリアに発現しているCARS2が産生するCysSSHやその代謝物が、エネルギー産生の過程で電位受容体としてミトコンドリアの膜電位形成に関与していることを突き止めた。ヒトを含む哺乳類が硫黄代謝物を利用した新規なエネルギー産生系(「イオウ呼吸」と命名)を持つことを発見した成果で、2017年10月にNature Communications誌にて発表した。新しいイオウ呼吸のメカニズムの発見は、老化防止・長寿対策、肺気腫や心不全などの慢性難治性呼吸器・心疾患、癌の診断・予防・治療薬の開発につながると期待される。