単純ヘルペスウイルス(HSV)1型に遺伝子組換えを施して作製された、癌治療用ウイルスの一種。癌細胞で増殖し正常細胞では増殖しないよう設計されている。東京大学医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野の藤堂具紀教授が開発したもので、膠芽腫、前立腺癌、嗅神経芽細胞腫、悪性胸膜中皮腫を対象に臨床試験が実施されている。

 3つの遺伝子を改変しており、ウイルスに感染した正常細胞が自滅するのを防ぐγ34.5遺伝子と、正常細胞でウイルスのDNA合成に必要なICP6遺伝子を欠損させ、増殖が盛んな癌細胞でのみ増えるようにしている。また、組織適合性抗原(MHC)クラス1の量を減らす作用のあるα47遺伝子を欠損させることで、抗腫瘍免疫を引き起こす能力を増強すると同時に癌細胞でのウイルス増殖能が活発化するように改変している。

 藤堂教授らは2009年に膠芽腫を対象とした臨床研究を開始し、2014年からフェーズIIの医師主導治験を実施した。2019年2月にフェーズIIの13例を対象に行った中間解析で、主要評価項目の1年生存割合が92.3%となったと発表した。この結果を基に第一三共は、国内で製造販売承認申請を行う。先駆け審査指定制度の対象品目で、製品製造はデンカ生研が行っている。