脂質の一種であるスフィンゴシン1リン酸(S1P)の受容体。7回膜貫通型の三量体のG蛋白質共役型受容体で、1990年代後半に初めて同定された。現在、5種類のサブタイプが見つかっている。細胞膜上のS1P受容体にリガンドであるS1Pが結合すると、シグナル伝達が起き、細胞増殖や細胞運動、細胞の接着などに関する細胞応答が生じる。

 血管系や免疫系の細胞に作用することが知られており、血管内皮細胞を用いた解析では、S1PがS1P受容体に結合すると、アポトーシスの抑制や、血管拡張作用を持つ一酸化窒素の合成促進などの作用を示すことが分かっている。また、T細胞がリンパ節から血中に移行する際、S1Pが関与していることも明らかになっている。具体的には、リンパ節にいるT細胞は、T細胞に発現するS1P受容体にS1Pを作用させようと、S1P濃度がリンパ節より高い血中に移行することが知られている。ただし、多発性硬化症患者においては、血中に病原性のT細胞が増えると中枢神経系への浸潤が増加し、悪化することが分かっている。「イムセラ/ジレニア」(フィンゴリモド)は、S1P受容体作動薬であり、リンパ節のT細胞が血中に移行するのを防ぎ、多発性硬化症の進行を抑制する。