外来の遺伝子を細胞や微生物に導入し、一時的に蛋白質を発現させること。トランスフェクションや形質転換において、導入した遺伝子が宿主のゲノムに取り込まれるなどして子孫にまで維持されることを安定発現(stable expression)と呼び、一過性発現(transient expression)と区別する。

 バイオ医薬などの原料となる組換え蛋白質の製造においては哺乳動物細胞や微生物などが利用されているが、安全性向上やコスト削減などを目的に遺伝子組換え植物による有用蛋白質の生産も長く研究されており、日本でも組換えイチゴに発現させたイヌインターフェロンが動物薬として承認されるなどの例がある。ただし、目的蛋白質を安定発現する組換え植物の作製には時間がかかることから、感染症の流行から短期間での生産が求められるワクチン抗原などは、植物を用いて一過性発現で生産することが提案されている。例えば、田辺三菱製薬の子会社であるカナダMedicago社がフェーズIII実施中の季節性インフルエンザワクチンの抗原は、一過性発現によりタバコ(Nicotiana benthamiana)に発現させたものだ。植物一過性発現には、主に植物ウイルスベクターを用いる方法と、アグロバクテリウムを用いる方法とが知られている。