癌抗原をコードしたmRNAを組み込んだ癌ワクチンのこと。mRNAが細胞質内に入ると、癌抗原の蛋白質が作製される。mRNA癌ワクチンは、発現した癌抗原蛋白質を異物として認識した免疫細胞が免疫反応を起こし、癌をたたく。mRNAは、それ自身がアジュバントの作用も持つ。そのため、抗原の発現を誘導するのと同時に、トール様受容体(TRL)を刺激し、免疫系を活性化させる可能性があることも分かってきた。

 癌を対象としたワクチンとして研究が先行していたのは、プラスミドDNAを投与して癌抗原を発現させる研究だ。蛋白質の発現量よりも、プラスミドDNAで蛋白質を発現させた方が多かったためだ。しかし近年研究が進み、mRNAから安定的に蛋白質を発現させる技術が開発されている。

 プラスミドDNAではなく、RNAをワクチンとして用いる利点は複数ある。DNAは核内に移行させなければ発現しないが、RNAは細胞質に到達させるだけでよいことや、DNAは低頻度だがゲノムへの組み込みが起こる可能性があるが、RNAではその可能性が無いことだ。一方で、mRNAを体内に投与する場合の課題もある。mRNAが生体内で非常に不安定であること、強い免疫原性を持つことだ。そのため、mRNAを医薬品として利用する場合、薬物送達システム(DDS)を利用し、適切な場所に到達させることが必要だといわれている。