ワクシニアウイルスは、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、エクトロメリアウイルスなどとともに、オルソポックスウイルスに分類されるDNAウイルス。

 1970年代、世界保健機関(WHO)は、ワクシニアウイルスの生ワクチンを成分とする種痘ワクチンを用いて、世界から天然痘を排除した。80年、WHOは天然痘根絶を宣言。種痘ワクチンはその後、一般に接種されることはなく、非常時に備えて一部で保管されているのみである。

 近年は、ウイルス療法や、組換えワクチンのベースなどとして利用されることが増えている。その理由として、静脈投与で全身へ投与できる可能性があること、核内へ移行せず染色体に組み込まれず安全性が高いこと、多様な癌細胞に感染すること、ウイルスのゲノムサイズが200kbpと大きく様々な遺伝子を挿入できること――などが挙げられる。国内では、鳥取大学大学院医学系研究科の中村貴史准教授が、ワクシニアウイルスを用いて癌に対するウイルス療法を開発している他、東京都医学総合研究所の小原道法シニア研究員が、H5N1高病原性鳥インフルエンザワクチンに対する組換えワクシニアウイルスワクチンを開発している。

 また米国では、2017年8月、米食品医薬品局(FDA)が再生医療の提供等を行っていた複数のクリニックや製造施設の取り締まりを実施。査察、警告の対象となった、米StemImmune社がワクシニアウイルスの生ワクチンを保管、一部接種されていたことが明らかになっている。