心房で生合成されるアミノ酸28個からなるペプチドの1種。human atrial natriuretic peptideで略されてhANPとも呼ばれる。A型ナトリウム利尿ペプチド受容体(NPR-A)に結合することで、利尿作用や血管平滑筋弛緩作用、高血圧の原因となるアルドステロンの分泌を抑制する作用を発揮する。

 hANPを有効成分とした医薬品もある。1995年にサントリー(現在は第一三共)が急性心不全を対象に発売した「ハンプ」(カルペリチド)がそれだ。ハンプは、バイオ研究の世界でサントリーを有名にした医薬品として知られている。1979年に後発で医薬事業に参入したサントリーは、一時30社以上の世界の製薬企業が繰り広げた競争を制して、1984年に宮崎医科大学の松尾寿之教授(当時)らと共同でhANPの遺伝子のクローニングに成功。その後、ハンプの開発に成功し、販売を開始した。また最近では、アカデミアを中心にhANPの適応拡大に向けた研究が進む。hANPが癌の転移予防に効果があるのではないかと考えられており、今後臨床研究が予定されている。

 hANPは、心房筋が伸びることで分泌が増えるため、血中に分泌されているhANPの量が高値の場合は、心房に負荷がかかった状態である可能性が高い。そのため、血中のhANPの量が心不全や腎不全などの重症度や治療効果の判定に利用されることもある。具体的には、本態性高血圧、うっ血性心不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症などだ。また、hANPの量が低値の場合は、脱水状態、利尿薬の影響などが想定される。