癌や先天性疾患において染色体の数の異常、欠失、転座などが広範囲に見られる染色体の構造異常のこと。正常な細胞は細胞分裂の際に染色体を倍加させ、細胞質の分裂に伴い染色体を均等に分配することができ、結果的に1つの細胞に46本の染色体が備わるようになる。こうした正確な染色体の分配には、染色体と微小管と呼ばれる細胞内小器官が正しく結合すること、同時に染色体が正しいタイミングで同期的に分離することが不可欠である。

 その仕組みとして、前者では染色体と微小管が誤って接続した場合にそれを修正する仕組みが正しく作動することが重要である。一方の後者の正しいタイミングの分離には、全ての結合が正しく修正するまでの時間を確保する紡錘体チェックポイントという仕組みが欠かせないことが明らかになってきた。

 近年のゲノム研究の進歩により、癌にとって重要なことは特定遺伝子の発現亢進や抑制よりも、染色体全体で生理的な遺伝子発現のパターンの崩壊に負うところが多いと考えられるようになってきた。さらに、こうした染色体不安定性に起因する遺伝的不安定性は、周囲の細胞よりも生存に有利な細胞を作り出す働きをしている例もある。癌細胞の発生の初期は特定のドライバー癌遺伝子の変異によって癌細胞が増殖しているが、経時的に染色体不安定性が増大した結果、薬剤耐性や高い転移能を獲得した癌細胞が出現している可能性もある。