分子科学研究所の安藤潤助教(当時、現理研)、中村彰彦助教(当時、現静岡大)、山本真由子技術支援員(当時、現基生研)、飯野亮太教授、東京大学大学院理学系研究科の島知弘助教、大阪大学大学院理学研究科の昆隆英教授らの共同研究グループは、リニア分子モーターダイニンの高速高精度1分子観察を達成しました。より具体的には、細胞内の条件に近い高濃度ATP、かつダイニンが自由に運動できる無負荷条件において、100マイクロ秒の時間分解能と1ナノメートル以下の位置決定精度で速い歩行運動の一歩一歩を可視化することに初めて成功しました。その結果、微小管上を正確に一歩ずつ前進するリニア分子モーターキネシンとは異なり、その歩行運動は前進だけでなく後退や横方向への動きを多く含む、酔っ払いのような歩き方であることが確認されました。また、ダイニンの歩幅は、従来のミリ秒レベルの低速1分子観察で報告された値よりも小さく、レールである微小管上のダイニン結合部位間の最小間隔と同等であることを初めて明らかにしました。高速高精度1分子観察の適用により初めて、小さな歩幅が明確に可視化されました。さらに、2本の足が高度に協調して正確に歩行するキネシンとは異なり、それぞれの足が協調せずに独立に動くことが示唆されました。本研究の成果は、リニア分子モーターの歩行運動の仕組みの多様性を明らかにし、人工分子でリニアモーターを実現する上で重要な指針を与えました。

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