TREASURE試験の結果について説明するヘリオスの鍵本社長
TREASURE試験の結果について説明するヘリオスの鍵本社長
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 ヘリオスは2022年5月23日、記者会見を開催した。5月20日に、脳梗塞急性期を対象に開発していた骨髄由来細胞医薬のHLCM051について、国内で実施していた第2/3相のTREASURE試験で主要評価項目が未達だったと発表したことを受けたもの。主要評価項目の数字的なハードルを下げた副次評価項目では、有意差(P<0.05)が出ており、その解釈について注目が集まった。鍵本(かぎもと)忠尚社長は「主要評価項目が未達だったことは残念だが、再生医療等製品として過去最大の200例の二重盲検試験で、副次評価項目とはいえ臨床的な効果を証明した意味は大きい」として、承認に向けて規制当局と交渉していく考えを改めて強調した。

 TREASURE試験は、中程度から重度の脳梗塞急性期(発症後18~36時間)の患者を対象に実施したプラセボ対照二重盲検試験で、206例が登録された。日本国内の再生医療等製品の治験として、過去最大規模の二重盲検試験となった。

 主要評価項目は、脳卒中患者の機能評価に用いるmRS、NIHSS、BIの3つにおいて、90日後の「Excellent Outcome(優れた転機)」(mRS≦1、NIHSS≦1、BI≧95)を達成した患者の達成率に置かれた。鍵本社長はこの項目の意味について「全く後遺症がない程度に良くなった人という指標だ」と述べた。

 また副次評価項目の1つとして、「Global Recovery(全般的機能回復)」(mRS≦2、NIHSSの75%以上改善、BI≧95)の達成率が設定された。鍵本社長はこれを「介護不要で自立して生活を送れる人という指標だ」と表現した。

 試験の結果、投与90日後および365日後のHLCM051とプラセボの比較で、Excellent Outcome達成率ではいずれも有意差が認められなかった。365日後のExcellent Outcome達成率は、HLCM051群が15.4%、プラセボ群が10.8%だった。

 一方、Global Recovery達成率は、投与365日後において有意差が示された。投与365日後の達成率は、HLCM051群が27.9%、プラセボ群が15.7%だった(P<0.05)。

「Global Recoveryのデータで承認を得ることは大いにあり得る」

 こうした試験結果について鍵本社長はまず、「主要評価項目が未達だったことは残念だった」と述べた。未達だった要因については、年齢の違いを挙げた。米国で実施された第2相のMASTERS-1試験では、被験者の年齢中央値が63歳だったのに対し、今回のTREASURE試験では78歳で、15歳の違いがあった。

 その上で、「高齢だと回復が遅いことで改善効果が低くなり、有意差が出なかった可能性がある。またExcellent Outcomeの項目のうち、例えば『今は何月か』『あなたの年齢は』などの質問で間違ったり、『腕を10秒以上上げておく』などをクリアできなかったりすれば、NIHSS≦1という基準から脱落してしまう設定になっている。被験者の中には、はじめの時点でそういったところがクリアできない人が多かったのではないか」と推察した。

 また、そのようなハードルの高いExcellent Outcomeを主要評価項目に設定した理由については、「日本は医療水準が高く、リハビリテーションや医療へのアクセスなど様々な要因で回復する度合いが高い。そういった部分のノイズを排除するために、規制当局と相談してGlobal Recoveryよりもハードルを上げたExcellent Outcomeを主要評価項目に設定した」と説明し、「ハードルを上げ過ぎて、結果的に到達できる人を減らしてしまったことが、主要評価項目未達の要因になったのかもしれない」と分析した。

 さらに、パートナーでHLCM051の導入元である米Athersys社が実施している第3相のMASTERS-2試験(n=300)について触れた。Athersys社は5月20日の同社リリースで、TREASURE試験の結果について自社のMASTERS-2試験の基準(年齢80歳未満)に当てはめて分析した結果、「サンプルサイズがTREASURE試験よりも大きいMASTERS-2では、主要評価項目で成功する可能性が高いことが示唆されている。さらに、ここでは、被験者の年齢がMASTERS-2試験ではもっと若いことを考慮に入れていない」と評価している。鍵本社長は「我々もそれに同意する。米国のように症例数を多くすれば主要評価項目はクリアできるだろう」と述べた。なお、Athersys社のMASTERS-2試験の主要評価項目はmRSに置かれており、TREASURE試験とは若干異なる。

 一方で、数字的なハードルを下げたGlobal Recoveryで有意差を示したことについて、鍵本社長は「介護が不要になり自立した生活ができるようになるだけでも、臨床的、社会的、医療経済的な意義が大きい。tPA適用時間以降の治療選択肢が現在は無いわけで、発症後36時間後まで臨床的な有効性が得られるという選択肢は大きな意味がある」と主張した。

 その上で、「Global Recoveryのデータで承認を得ることは大いにあり得ると考えている。条件付き承認ではなく、通常承認を目指していく。それだけの結果が二重盲検試験で出ている。2つ目、3つ目の選択肢として、年齢制限などの条件を付けていくことも、当局との話し合いの上で出てくるかもしれないが、メリットがある治療法だと思うので、どこかで合意ができると思っている。判断は規制当局次第だが、先駆け審査指定制度の枠組みの中で、しっかり協議していきたい」と述べた。

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