国内上場バイオ企業の時価総額は2021年の年始から年末まで22%下落した
国内上場バイオ企業の時価総額は2021年の年始から年末まで22%下落した
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 おはようございます。日経バイオテク副編集長の野村和博です。久保田、菊池に続き、2021年のバイオ業界を振り返ってみたいと思います。今年もいろいろありましたが、私のテーマはバイオスタートアップです。2021年春から「バイオベンチャー株価週報」をスタートし、無料公開して一般の方々にも多くご覧いただいています。上場企業限定の連載ではありますが、バイオスタートアップのことをたくさんの方々に知っていただき、投資活動に活かしてもらうことで、バイオスタートアップ市場の活性化につながればと期待しています。連載を中心に、2021年を振り返ってみたいと思います。

 市場を底上げしたい気持ちとは裏腹に、バイオスタートアップ市場はパフォーマンス面で、我慢の1年でした。バイオベンチャー株価週報の対象企業のうち、2021年途中に上場した4社を除く44社の時価総額推移を調べると、年始より22%も下落していました(冒頭のグラフ、1月4日~12月16日)。代表的な株価指数と比べると、東証株価指数(TOPIX)が12%上昇、ダウ平均株価は19%上昇だったので、完全にアンダーパフォームとなっています。

 新型コロナウイルス感染症によって過熱したバイオテクノロジーに対する期待が冷めてきたことに加え、国内バイオスタートアップからネガティブなニュースも続いたため、マイナス方向にモメンタムが大きく傾いた1年だったといえるでしょう。

 振り返りとして、まずはネガティブなニュースを伝えた代表的な記事を幾つかピックアップします。モダリスのロックアップ違反、アンジェスのワクチンに対する期待感の低下、オンコリスバイオファーマの中外製薬とのライセンス解消、テラの幹細胞医薬をめぐるリリースの取り下げなど、投資家の期待を裏切るような事例が目立ちました。

1:ロックアップ違反発覚後のモダリスは下落基調、ステラファーマも官民ファンドの大量売却が急落招く

2:ステムセル研究所は公開価格の2倍超に、アンジェスはワクチンへの失望感で下落

3:オンコリスが中外と契約解消で連続S安、モダリスはまたもルール破りの株式売却

4:テラ、株価爆上がりの根拠は全部虚偽か

 ただし、悪いニュースばかりでもありませんでした。成長に向けた期待の持てるニュースも幾つか出ています。そーせいやリボミック、ステムリムなどがパイプラインの導出や進展に関するニュースを相次いで発表し、国内バイオスタートアップの底力を見せ、盛り返すきっかけを与えてくれています。

5:そーせい、契約一時金114億円でムスカリン薬を米企業に導出

6:リボミックが導出期待で50%超の上昇、そーせいは「塩漬けを許さない」契約内容に高評価

7:塩野義、ステムリムから導入のレダセムチド、脳梗塞に対する第2相で良好な結果

 また、未上場のスタートアップも大手製薬企業とライセンス契約を結ぶなど、世界に誇れる創薬技術がまだまだ国内にはたくさんあることを、再認識させてくれました。

8:Heartseed、デンマークNovo社へ他家iPS細胞由来心筋球を導出、最大約655億円

9:ティムス、「我々が上場すれば、次のスタートアップのプラスになる」

10:科研製薬、武田発のARThamを買収、最大で127億2200万円相当

 本年もたくさんの方々に取材にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。2022年は、Goodニュースの連発でバイオスタートアップ市場がハイパフォーマンスを果たせるよう、期待したいと思います。