
おはようございます、日経バイオテク編集部の菊池結貴子です。年末年始を迎えるにあたり、おせちの準備や餅つきなど、普段と違う「食品」の準備に勤しまれている読者の方も多いのではないでしょうか。私にとって今年は、新しい食品の世界を度々訪れた新鮮な年となりました。
その1つである「培養肉」では、国内で開発を手掛ける3チームに取材しました。培養細胞をどう筋肉組織に近づけるかというアプローチは、オルガネラや細胞シートを形成する再生医療のアプローチと非常に近しいものがあります。実際、培養肉の研究者は再生医療の研究者でもあることが非常に多いのです。食品と医療という、一見遠い2分野ですが、相互にうまく作用して飛躍すると期待できます。さらに、肉だけでなくカカオを培養しようという動きが国内にも現れました。明治グループが米国の培養カカオスタートアップに出資し、共同研究も始まります。(セレクション1~4)
2:培養肉業界、今秋発足の自民党議連に法整備に向けた提言書を提出へ
3:培地単価が課題の培養肉、藻類による培地リサイクルでコストダウン狙う
4:明治HD、米「培養カカオ」スタートアップに出資で細胞農業業界へ参入
もう1つの新しい食品は「食用昆虫」です。大人になってから虫を触れなくなった私は、当初昆虫食にはとても手を出せないと思っていたのですが、コオロギパウダーから入門し、今では煮干しコオロギ、乾燥カイコ幼虫までなら食べられるようになりました。編集部内でもコオロギを一緒に食べてくれる人と、それこそ虫を見るような目で見てくる人に分かれますが、思った以上に美味しく頂けるものです。消費者受容を考え、抵抗の少ないパウダーで売り出す会社と、食材としての特徴を重視してそのままの姿で売り出す会社があり、ニッチな世界の中でも既に流派の違いが見えてきています。(セレクション5、6)
6:TAKEO、山形県内3社と地元名物コオロギスナックを開発
最後に、「ゲノム編集食品」にも触れたいと思います。2020年に届出受理された高GABA含有トマトに加え、2021年には可食部増量マダイ、高成長トラフグの2種が届出を完了して販売開始されました。ゲノム編集自体は今や汎用的な手段となりましたが、1遺伝子の、しかも欠失型の変異で消費者や生産者に有利な表現型を生み出すことは簡単ではありません。ちょうど本日、九州大学で研究開発中の「低攻撃性マサバ」の近況を公開致しました。併せてご覧ください。(セレクション7~10)