(画像:123RF)
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 厚生労働省は2021年9月27日、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症を適応症として、グラクソ・スミスクラインの中和抗体である「ゼビュディ点滴静注液」(ソトロビマブ)の特例承認を了承した。それを受けて、厚労省は同日夜、「ゼビュディ」を特例承認した。

 特例承認されたのは、グラクソ・スミスクラインの抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ゼビュディ点滴静注液」(ソトロビマブ(遺伝子組換え))。効能・効果は、SARS-CoV-2による感染症。単回、点滴静注で投与する。

 投与対象は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体である「ロナプリーブ」(カシリビマブ/イムデビマブ)と同様、酸素投与を必要としない軽症・中等症(軽症~中等症I)の患者のうち、重症化リスクが高い患者。厚労省は、「当面は入院患者を対象として投与を行い、使用実績を踏まえて速やかに投与対象を広げる方針だ」(厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)。

 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課によれば、第二部会では、「ロナプリーブ」との臨床的位置付けの違い、懸念される変異株や注目すべき変異株への効果、(第二部会の議論の対象ではないが)使用できる対象患者の設定などについて、専門家の議論や質疑が行われたという。

 特例承認された、グラクソ・スミスクラインの「ゼビュディ」の概要は以下の通り。

表1 「ゼビュディ」の概要
製品名「ゼビュディ点滴静注液」
一般名ソトロビマブ(遺伝子組換え)
申請者グラクソ・スミスクライン
効能・効果SARS-CoV-2による感染症
効能・効果に関する注意(1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。

(2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。

(3)本剤の中和活性が低いSARS-CoV-2変異株に対しては本剤の有効性が期待できない可能性があるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討すること。
禁忌本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
用法・用量成人や12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ソトロビマブ500mgを単回、点滴静注する。
用法・用量に関連する注意SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。症状発現から1週間程度までを目安に投与することが望ましい。
注意を要する集団(1)妊婦:妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。生殖発生毒性試験は実施していない。一般にヒトIgGは胎盤を通過することが知られている。

(2)授乳婦:治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。本剤のヒト乳汁への移行性については不明であるが、一般にヒトIgGは乳汁中へ移行することが知られている。

(3)小児等:小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

(4)高齢者:患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に、生理機能が低下している。

 ソトロビマブは、米Vir Biotechnology社が創製した完全ヒト型抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体。同社は感染症から回復した患者のB細胞から抗体遺伝子を単離し、完全ヒト型抗体を創製する基盤技術を有しており、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群ウイルス(SARS-CoV)に感染・回復した患者のB細胞から複数の抗体遺伝子を同定していた。COVID-19のパンデミックを受け、同社は、そのうち1つの抗体(S309)をベースとし、米Xencor社の基盤技術「Xtend」を用いて胎児性Fc受容体(FcRn)への親和性を高め、半減期を延長するとともに、肺組織に高効率に移行するよう設計したソトロビマブ(開発番号:VIR-7831)を創製した。

 ソトロビマブは、コロナウイルスがヒトへ感染する際に足がかりとなるスパイク蛋白質のうち、受容体結合部位(RBD)とは異なる部位をエピトープとして結合し、SARS-CoV-2に対する中和作用を示す中和抗体。投与後は体内で、SARS-CoV-2が宿主細胞に結合するのを阻害する。SARS-CoV-2とSARS-CoV-1が共有している、保存性の高いエピトープを標的としているため、「設計上は変異株にも効果を発揮すると期待されている」(医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)。in vitroのデータからは、デルタ株、ラムダ株を含む懸念される変異株・注目すべき変異株に対しても活性を維持することが示されている。

 Vir Biotechnology社は、2020年4月、英GlaxoSmithKline(GSK)社と契約を締結し、COVID-19を含む広範なコロナウイルス感染症に対して、ソトロビマブなど複数の抗体医薬やワクチンの研究開発を進めると発表していた。

 Vir Biotechnology社とGSK社は、欧州、米国、英国、南米など海外で、多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ比較試験であるソトロビマブの第2/3相臨床試験(COMET-ICE試験)を実施した。同臨床試験の対象は、酸素飽和度94%以上の入院していない軽症から中等症のCOVID-19の成人患者で、重症化リスクが高い患者1057例。発症から5日間以内の患者を対象とした。

 主要評価項目は、投与後29日までに24時間を超える入院または死亡した患者の割合に設定された。最終解析の結果、投与後29日までに、24時間を超える入院または死亡に至った患者の割合が、プラセボ群(30/529例=6%)に比べ、ソトロビマブ群(6/528例=1%)となり、調整相対リスク低下率は79%(95%信頼区間:50%、91%)だった(p<0.001)。

 なお、ソトロビマブは、2021年5月、米国で緊急使用許可(EUA)されている。欧州では、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)から、肯定的な科学的見解が示されている。

 第二部会後に開かれた記者説明会における、厚生労働省担当者との一問一答は以下の通り。

「ロナプリーブ」と「ゼビュディ」(ソトロビマブ)の違いは。

 現状、臨床上の位置付け、変異株への効果などの面で、両者に違いはないと理解している。ただ、「ロナプリーブ」が、2種類の中和抗体を混合して投与するのに対し、ソトロビマブはウイルスの中で保存性の高いエピトープを標的とした1種類の中和抗体を投与するものだ。投与前に混合などの作業が必要なく、1バイアルから1人分投与できるので、投与に際しての利便性が高いと思われる。

2品目目の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が使えるようになる意義は。

 全体としての供給量が増えること、有効性や安全性は同様ではあるが医師や患者にとっての選択肢が広がること、今後出現する変異株も含め、変異株へ対応できる選択肢が増えること、などの意義がある。

患者ごとに、あるいは、療養場所ごとに使い分けることは考えられるのか。

 両者とも同様の位置付けなので、患者によって使い分けることはないだろう。地域や療養場所での使い分けも考えにくい。

まずは入院患者を対象とするが、今後は対象を広げるのか。

 「ロナプリーブ」と同様、まずは入院患者から投与を始め、使用実績を踏まえて、速やかに投与対象を広げる。

ソトロビマブの確保状況、薬剤価格は。

 企業との秘密保持義務があるため、コメントは差し控える。薬剤価格についてもコメントは差し控える。ただ、必要な予算を確保し、適切に対応する。

医療機関への供給・配送はどうなるのか。

 「ロナプリーブ」と同様、厚労省が確保し、グラクソ・スミスクラインに委託して供給する。供給を希望する医療機関は、グラクソ・スミスクラインの登録センターに登録後、必要量などを伝えてもらえれば、配送される。厚労省としては、ごく速やかに配送を開始できるようにする予定だ。

ソトロビマブを製造する企業、国・地域を教えてほしい。

 通常の医薬品と同様、製造国、製造企業については開示していない。