(画像:123RF)
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 キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、がん細胞表面の抗原を認識するよう設計した人工的な受容体をT細胞に導入し、抗原特異的に強力な細胞障害活性を発揮するようにしたがん免疫細胞療法だ。具体的には、標的抗原を認識する抗体の抗原認識部位とT細胞受容体(TCR)の細胞内ドメインなどを組み合わせたキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を、ウイルスベクターなどを用いて体外でT細胞に導入し、拡大培養後、患者に投与する。投与後、CAR遺伝子を発現したT細胞(CAR-T)が標的抗原を認識すると、細胞内ドメインに刺激が入り、標的抗原特異的かつ強力な細胞傷害活性を発揮するとともに増殖する。

 米University of PennsylvaniaのCarl H. June教授らがスイスNovartis社と開発し、2017年米国で、CD19を標的とした自家CAR-T療法の「Kymriah/キムリア」(チサゲンレクルユーセル)が初めて承認を取得した。CAR-T療法はまだ発展途上で、患者由来の自家細胞または健常者由来の他家細胞のどちらを使うか、どの抗原を標的にするか、どのようなCAR遺伝子を設計するか、どのような方法でCAR遺伝子を導入するかなど、改変できるポイントが数多くあり、世界では多様なCAR-T療法が開発されている。

 最近では、T細胞の代わりに、NK細胞をベースにしたキメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK)療法をがんに対して開発する動きや、制御性T細胞をベースにしたキメラ抗原受容体制御性T細胞(CAR-Treg)療法を自己免疫疾患に対して開発する動きも出ている。国内では、独自の基盤技術をベースに新規のCAR-T療法を開発したり、CAR-T療法向けに要素技術を提供したりするスタートアップが複数活動している。

 A-SEEDS(東京・台東、眞鍋幸子代表取締役)は、信州大学医学部の中沢洋三教授らの研究成果をベースに、CAR-T療法の実用化を目指して立ち上げられた信州大学発ベンチャー企業だ。レトロウイルスベクターに代わり、PiggyBacトランスポゾン法により、CAR遺伝子を導入する点が特徴で、それにより(1)ウイルスベクターを使わないので製造コストが抑えられる可能性がある(2)既存の特許に抵触しない(3)遺伝子導入過程でT細胞を活性化させる必要がなく、T細胞を幼弱なまま維持できる──といった利点がある。現在は、急性骨髄性白血病(AML)や若年性骨髄単球性白血病(JMML)を対象に、GM-CSF受容体(GMR)を標的とした自家CAR-T療法(GMR CAR-T療法)を開発しており、医師主導治験が進んでいる。

 オプティアム・バイオテクノロジーズ(愛媛県東温市、西岡駿社長)は、愛媛大学大学院医学系研究科の越智俊元特任講師らが開発した新規抗体作製技術である「Eumbody System」を利用し、細胞外ドメインを改良したCAR-T療法の開発を目指している。同社は、複数のドナーの末梢血中のB細胞に由来する抗体の軽鎖のドメインから成るライブラリーと、重鎖のドメインから成るライブラリーとを特殊な形で作製し保有している。それを活用し、CAR遺伝子の抗体単鎖可変領域(scFv)をファインチューニングしようと研究開発を進めている。

バイオスタートアップ総覧 2021-2022
CAR-T関連の研究開発を手掛ける企業の掲載ページは以下の通りです。
オプティアム・バイオテクノロジーズ(p.128)、サイアス(p.178)、ノイルイミューン・バイオテック(p.312)、ユナイテッド・イミュニティ(p.423)、リバーセル(p.442)、A-SEEDS(p.471)など
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